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dearert heart  作者: 一条 いちか
amor
1/3

君が違う恋に出会ってしまった。

「どうしたの?」


大きな池のある広大な公園。

平日の夜だからか、人気はまばらでたまに池で泳いでる鯉が跳ねる音がする。

異国のパークをモデルに作られたこの公園では、橋があったりベンチがあったり雰囲気がある。


その雰囲気が後押しをして、ぐっと胸を締め付けられる。



「仕事帰りに呼んじゃってごめんね…」



向かい合って小さく零す彼女に「あぁ、」と感じとる。


もうなんとなく分かってしまった…。




「君が俯いてる理由、」



と小さく言えば、びくりと華奢な肩が揺れる。



あぁ、なんとなく分かってしまう。

俺から別れを告げて欲しいんだって。

その狡い考え。俺は今の今でも嫌いになれない。



「切り出せないんでしょ?」



コクリと揺れる頭。

その次にごめん…と漏れる。



「なんで?」


泣くのを我慢して震える体に、触れてはいけない気がして少し浮いた手に戸惑いを感じる。



「……」



何も言えなくなった彼女を静かに待つ。


それしかできないまでに空いてしまった距離…胸が苦しい。



「好きな人ができたの…」



蚊の泣く声で話す彼女に、やっぱりか、と腑に落ちる。



「そんな気はしてたよ」



そう。気づいてた。



「……」

「……」



同じように俯けは、外灯のライトが2人の影を伸ばしては重ねる。


なのに2人の関係は離れようとしてる…。




引き止めたい。引き止めたいのに、引き止める言葉が出てこない。

手放したくない。俺の彼女でいて欲しい。

俺を好きなままでいてほしい。



「…っ、ごめんなさい、っう、っ」


「俺じゃダメなの?」


「ごめん、っなさい…」


「……」




ごめんね、と泣く彼女を繋ぎ止めたいのに。

ごめんなさい、と泣く愛しい彼女を繋ぎ止める言葉が思いつかない。



「泣かないで…」



彼女が強く力を入れてる手に手を重ねると、そっと外される。



「……」



スルリと外された行き場のない手が、血が抜け切ったように冷たく冷えた。



「ごめ…ん…っ」





そばにいて欲しい相手は『違う恋に出会ってしまった。』



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