君が違う恋に出会ってしまった。
「どうしたの?」
大きな池のある広大な公園。
平日の夜だからか、人気はまばらでたまに池で泳いでる鯉が跳ねる音がする。
異国のパークをモデルに作られたこの公園では、橋があったりベンチがあったり雰囲気がある。
その雰囲気が後押しをして、ぐっと胸を締め付けられる。
「仕事帰りに呼んじゃってごめんね…」
向かい合って小さく零す彼女に「あぁ、」と感じとる。
もうなんとなく分かってしまった…。
「君が俯いてる理由、」
と小さく言えば、びくりと華奢な肩が揺れる。
あぁ、なんとなく分かってしまう。
俺から別れを告げて欲しいんだって。
その狡い考え。俺は今の今でも嫌いになれない。
「切り出せないんでしょ?」
コクリと揺れる頭。
その次にごめん…と漏れる。
「なんで?」
泣くのを我慢して震える体に、触れてはいけない気がして少し浮いた手に戸惑いを感じる。
「……」
何も言えなくなった彼女を静かに待つ。
それしかできないまでに空いてしまった距離…胸が苦しい。
「好きな人ができたの…」
蚊の泣く声で話す彼女に、やっぱりか、と腑に落ちる。
「そんな気はしてたよ」
そう。気づいてた。
「……」
「……」
同じように俯けは、外灯のライトが2人の影を伸ばしては重ねる。
なのに2人の関係は離れようとしてる…。
引き止めたい。引き止めたいのに、引き止める言葉が出てこない。
手放したくない。俺の彼女でいて欲しい。
俺を好きなままでいてほしい。
「…っ、ごめんなさい、っう、っ」
「俺じゃダメなの?」
「ごめん、っなさい…」
「……」
ごめんね、と泣く彼女を繋ぎ止めたいのに。
ごめんなさい、と泣く愛しい彼女を繋ぎ止める言葉が思いつかない。
「泣かないで…」
彼女が強く力を入れてる手に手を重ねると、そっと外される。
「……」
スルリと外された行き場のない手が、血が抜け切ったように冷たく冷えた。
「ごめ…ん…っ」
そばにいて欲しい相手は『違う恋に出会ってしまった。』