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異世界のイージス~少女の中でコックピット生活〜  作者: 北佳凡人
五章

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20 小さな捜索隊


「これでも絞ったんだけどね」


 シャリーハットがそう言って示した候補は三十五ヶ所。どれも帝国の関連施設や息のかかった商家、または要人の屋敷などだった。


 三十五ヶ所が多いか少ないかよくわからない。街道に張り巡らした騎士と冒険者たちの捕縛の手をかいくぐった犯人は、巧妙かつ大胆に違いないとシャリーハット言った。しかも、三十五ヶ所の中にパスがいるとは限らない。限られた条件内で解決するために、フェアバール達は、早朝から捜索を始めていた。


 港街として古くから栄えてきたポートベルは、のような決まった区画というものがない。都市計画的に銀行街とか官公庁エリアというわけ方はされておらず、とにかく、機能的なまとまりがないのだ。普通の農家の隣に貴族の家があったり、大きな商家がヘンピな場所で建っていたり、街を囲む外壁に隣接して積まれたようなバラックの上に会社の事務所があったりと、探し歩くのに骨の折れる街だ。例外は、大きな倉庫や海軍の本拠地が港に近い場所にあることくらいか。


 広く雑多な土地にちらばった三十五箇所をたずねるため、2つに手分けする。モコト、フェアバール、リーゼライ。レガレル、ガスラー、カレン。パスの顔がわかっているツェルト組を分けている形だ。上空にはミニバンクを一匹ずつ付けて監視を強化。


 多くの貴族屋敷や商人の邸宅はもちろん、近郊を含めると十万人を超える人々の暮らすポートベル一帯から、子供一人をみつける。たった六人で7日以内というキツイ制約があるのだが、初めての経験ということからスパイ気分で楽しんでいた。


 ちなみに、珍しく眼を覚ましているクラウディはカレンと一緒、氷虎のクレストは、街に出すわけにもいかずグレンと留守番になっていた。


 冒険者ギルドは港にほど近い街の東側にあった。商人のガスラーのいる班が商人関係、モコト達はそれ以外と振りわけ、反時計回りに、あまり離れないようにして移動していく。


「ここまでの3件は空振りだったな。だが、次なるアジトには、目指すお宝が眠ってるはずだ!」


「宝ってなに?」


「パスもん、ゲットだぜ!」


「モコトは、何を捕まえるつもり?」


 リーゼライが妙なテンションで叫ぶと、オヤバンク〔モコト〕が短い腕を振りあげて同調する。いちいちツッコミをいれるフェアバールが、テンション疲れに見舞われ軽くめまいをおこしす。


『おーいフェア! そっちはどうだ?』


 向こうの班にいるレガレルの声が聞えてくる。顔を横にやると、ずっと遠くにある街角の奥、人ごみに紛れながら手をふっている姿が見えた。


「レガレル? まただめ。ここにパスはいなかったよ」


『こっちはヒドイな。パスがいないならそれでいいだけど、確認する方法がよくわからなくて難しい』


『ガスラーさんって慎重だからカナ。迷子の子供を捜すより難しい』


 いつものように、モコトの〔心話〕パーティモードで、互いに自由に話せるのだ。 レガレルとカレンに続いて、ガスラーの声もする。


『次の商人は帝国の造船修理ドックに木材を卸していると。……12番目に怪しいのね』


 シャリーメモを読んでいるようだ。商人の所属がクレセントだとしても、得意先である帝国から圧力をかけられれば泣く泣く従うこともあるだろう。そのため、常日頃から依存度の高い商人を洗い出して、定期的に動向を探ることをしたいたという。今回は、そうした調査資料が役に立っているわけだ。犯人を匿う理由は、忠誠心ばかりとは限らないから。


『よし、オレが行く!』


 決意に満ちたレガレルの声がする。


『すみませーん。お宅に誘拐犯はいませんかぁ?』


 凍った、冷たい風が吹き抜けていくのが、離れたフェアバールたちにも感じられた。オヤバンク〔モコト〕が、思わず身体を抱くようなしぐさになる。


 ずこっ!

 ずこっ!


〔心話〕に、ノイズが二回。


『し、失礼しましたー、か、帰ります!』


 ずるるる~と、ガスラーカレンの二人に引きづられていくレガレルの姿があり、それは、好奇心の目を向ける人ごみを縫って、フェアバールたちへと近づいてきて、ぐしゃりと、地面に放り投げられた。


「なに言ってんのいきなり!」


「バカって読んでもいいカナ?」


〔心話〕のいらない距離になって、怒鳴り声が間近に届く。

 頭を垂れ、上につくった大きなコブを自分で治癒しながら、レガレルが真面目にうなだれる。


「だってよー。犯人かくまってるかなんてどうやって確かめるんだよ。何日にも張り込んでいる時間はないんだぞ。核心をついて反応を見たほうが、絶対に早いって」


「……」


 レガレルの意外すぎる言葉に、全員の思考が停止。


「なるほど」


「一理、あるようですね」


「今年最大のひらめき、カナ?」


「レガレルにはしては考えてるな。こっちにはモコトさん憑いてるから、カンタンにわかるけど普通は難しいか」


「リーゼ君? 付いてる、の響きが違うきがするけど?」


 捜索の肝はモコトのスキルであった。〔マップ〕と敵味方を判別するカラーマーカーによって、怪しい人物が隠れていないか探るのだ。怪しいとわかれば、パスの顔を知っている3人の出番である。シャリーハット王弟姫殿下に発行してもらった礼状を突きつけ、当該の人物のところまで踏み込む。権力にモノを言わせた強引な手段だったが、なりふり構っているわけいかなかった。


 最初の段階にある敵の特定。それをモコト抜きで行えうのは、難易度が高いといえよう。


「そうでしたか? まぁ、二度手間になるくらいなら、こっちと一緒に全員で行動します?」


「でも、クラウディ入れて7人でぞろぞろってのは目立ちそう」


 そういうフェアバールに、モコトも同意する。学校のグループ学習じゃないんだからと。それならばと、リーゼライが提案した。


「三人は先手で、次の場所に回ってもらうかな。屋敷や建物の周囲を見て回ってもらうだけのも一つの情報だから。そしてあとからモコトさんのヤマ勘で探ってもらうと」


「ヤマ勘、言うな。ゲーム的不思議パワーっていう根拠があるんだよ」


 リーゼライの案で進めることにして、とりあえず、次の候補地へは一緒に行くことにした。ガスラーが地図を広げて、メモと見比べる。


「えっと。次は、なんとか男爵の屋敷ですね。ここから2キロほど先にあります。一番怪しい場所ってなってますけど」


「なんで、一番と決め付けてんだろ」


「ドリーヨーコ帝国の大使? 遣使? そんな人の屋敷なんだってことらしいです」


「へぇ首謀者に近いってこと? でもそんなわかり易いところに逃げ込むカナ?」


「それは、犯人になってみないとわかりません」


 そんなことを話しながら、一直線に屋敷の方へと向かっていく。無計画に作られた道は、広くなったり狭くなったする。ときどき、怪しい路地を通過するが、集団でぞろぞろと移動するグループを、襲うような連中には出くわさず、順調に半ばまでやってきた。


「そこの角を曲げれば、大通りに出られるよ。この辺からはわりと大きな屋敷が連なってるようだから、まっすぐ行ける」


 モコトの言うとおり、広い道が出現した。さっきまでの細道と違い、馬車横並びで走れるほど。閑静な場所のようであまり人が歩いてない。狭いところから飛び出たせいで、距離感がおかしくなる。きょろきょろしてると、目指す方向から、馬車を挟んだ集団がやってきた。


「何か、でかい行列が来るな」


「馬車が三台? どエライ金持ちのようですね。港の方へいくのでしょうか」


 金銀でキラキラに飾られた馬車に、ガスラーの目が奪われる。ここに来るまで、騎士に護られた馬車行列の中にいた。しかしあれば、土臭い街道の移動にすぎない。あまり清潔とはいえないが、都会の中を進んでいう煌びやかな貴族の行列はなかなか遭遇できるものではない。おしゃれに敏感なフェアバールやカレンのような女子だけでなく、リーゼライやレガレルも、整然と近づいてくる馬車とそれを護衛する貴族の行列に見入っていた。


 モコトもため息をついた。


 さすが中世風異世界、欧州貴族のようだね。こんなときはどうすればいいんだっけ。江戸時代なら地面に平伏して頭を下げないと、御用斬りで首が飛ぶんだったかな。でも、オヤバンクが土下座する姿ってかえって怪しくないか。そんな風に思いながら、マップモニターに眼をやった。


 すると。


『フェア、リーゼ君、馬車に乗ってる人に注意して!』


 モコトは周りに聞えないように〔心話〕で話しかけた。


「どうしたのモコト?」


 フェアバールが小声で聞き返す。


『護衛と乗ってる人間が全部真っ赤か黄色だ。そしてひとつだけブルーが混じってる』


「モコトさん、ブルーは味方でしたね。どこですか。馬車の中?」


「そう、真ん中の馬車!」


 オヤバングが指差した行列の中央。通りをこちらに向かってだんだん迫ってくるその馬車をじっと観察する。偶然か、窓がちょっとだけ開いて、外に顔をだす小さな子供がちらり。


 リーゼライが飛び出し、フェアバールがすぐ続いた。

 何事かといぶかしむ、ガスラーたちに教えるように、レガレルが叫ぶ


「パ―ァァァ―スゥ――!!!!」


 馬車に乗っていたブルーはパス・ギャオモン。

 誘拐され、冒険者依頼額が高額になっていて、誰もが探していた、トッパの息子だった。



発見!!!!!

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