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異世界のイージス~少女の中でコックピット生活〜  作者: 北佳凡人
四章

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25 山の上から


 グレンとグレンは、ゴブリンを討伐しようと山の上にあるという集落に向かっていた。昨日うけたギルドの依頼をこなすためだ。一月も塩漬けにされていた依頼だ。備考になるべく早くとあった程度で明確な期限はないが、二人は数日中に街をでる。できれば今日中に片をつけたかった。


「うんしょ……うんしょ。山というよりも崖だね」


「ギルド職員のお姉さんが言ってた登り口をみつけるだけでも、時間がかかっちゃった、カナ」


 そっくり双子の後から遅れて歩いていた、もう一人がぼやく。


「まだ着かないのか? オレを過労で殺すつもりじゃないだろうな?」


 双子は同時にキッと目を吊り上げて、後ろから付いてくる少年をにらむ。


「あんたが、勝手について来たんでしょうに。レガレル」


「文句言うなら、今からでも街に帰るカナ?」


 ふぅ、と流れる汗を手で拭ったレガレルは、カレンとグレンをにらみ返した。


「しょーがねぇだろ。馬車の修理を見てたってつまんないし、一人でぶらぶらしてたら、お前らみたく新人狩りに合うかもしれないし。しかたないから、くっついてきてやったんだ。感謝しろよ」


「感謝だって。レガレルのくせに、えらそーに」


「邪魔にだけならないでほしい、カナ。」




 昨日、モコトが改善(魔改造ともいう)した馬車は、その場にいた街の鍛冶屋を震撼させた。直前まで涙でグズグズだったガスラーが、瞬間的にそれを見て立ち直ると、製作者であるモコトの代理人を名乗り、すぐさま技術販売を開始した。


 鍛冶屋の相手をガスラーに任せて立ち去ったフェアバールたちは、冒険者ギルドで一連のゴタゴタに遭遇した。ギルド長に捕まって開放されたのは夜になってから。やっと宿に戻れたと思ったら、ガスラーが、両手を合わせて拝むような姿勢で待ち受けていた。


「さ、サスペンションは解ります。鉄の板を重ねただけですから。あの、タイヤとベアリングってどう作ればいいんですか? 」


 鍛冶屋に技術を売ろうしたけれど、構造の一部が説明できなかったというガスラー。鍛冶屋のおっさんヴェストリから、職人魂のこもった微細で熱烈な質問攻めを受けたらしい。


「いくら高くてもいいから、売ってくれって言われたんです! 成功すれば、わたしの、お店が建つかもしれないんです! モコトさんに、一生ついていきますから、ぜひども、教えてぐだざい……」


 最後は、言葉にすらならなかった。


『教えてって言われても、作り方はその……雰囲気?』


「モコトさんに、細かなことは無理ですよ?」


「モコトに細かなことは無理」


 リーゼライとフェアバールの同意がイタイ。

 そんなこんなでモコトは、朝も早くからからガスラーに連れ去られていった。当然、セットになってるフェアバールも、フェアの保護者たるリーゼライも一緒である。




「だいたい本当は、あんたたちみんな、ノンビリしてる場合じゃないんじゃない?」


「そうよ。村の子が誘拐されたってのに、馬車作りだの山登りだの、してていいのカナ?」


 朝食時にモコトは、夕べツェルト村の村長と〔心話〕をしたと、話した。村長によれば、村の子供が一人連れ去られたという。さらわれた男の子はパス。もちろんレガレルも知っている子供だ。双子が言ってるのは、子供の捜索を手伝わなくてもいいのかということだ。


「そう言われてもなー。村の大人達の追跡を振り切った相手だぞ。しかも場所も離れてる。オレたちが増えたところでなー?」


 誘拐犯は男女三人組だという。一人だけ捕まえたが後は逃したとか。恐らく、港湾都市を目指してるから、道中で見つけたら報せろとのこと。


「王都も動いてるって本当? いっちゃなんだけど、たかが辺境の誘拐事件よ? 話しが大きくなりすぎてない?」


「そう。プルカーンでなら村の周りを探しておしまいになる。ギルドに依頼をだすのも稀、カナ?」


「リーゼめ、よけいなこと言ったもんだよな」


「しゃべったのは、あんたでしょ。もう忘れたの?」


「う……うちの村には、機密と陰謀とがうごめいてるんだよ。そ、それより、登りが終わるぞ。集落ってどこだよ」


 苦し紛れに言い逃れるレガレル。ともかく、歩きながら会話をしているうち、長く急な坂が終わったようだ。まだ登りは続くが緩るやかになりつつある。たった今、登ってきたばかりの道を三人が振り返った。


「うっわ。街がきれい」


「かなり高い、カナ」


「すっげー」


 カウウルの街が一望できる。この崖にちかい急峻な山は、領主や貴族たちの居住すり、街の中央機関にあたるエリアの背後にそびえ立つ。義経が馬で駆け下りるのをためらうほどの、壁にも似た高い山地が背後にあるのだ。山地を背にして街を造っていったのだろう。


 山上からの景色はまさに絶景。河と平地がどこまでも続く街道の果て、はるか遠くの山地は蜃気楼のようにゆらぐ。吹き降ろす風も心地よく、こころが洗われるようだ。


「むむ!……、火と炎を司る精霊の御名のもとに……」


「どうした、グレン?」


「グレン、ダメ、呪文を唱えないでッ」


 カレンは慌てて両手をグレンに延ばすと、がしがしとその口を押さえ込む。小さな手で鼻と口を無理やりふさがれたグレンは、もがもがもがと息ができなくなり言葉が止まった。


「な、何をしようとしたんだ?」


 呼吸の停止させられているグレンの代わりに、カレンが答える。


「爆裂魔法を使おうとした、カナ?」


「なぁにぃ!! 街に向かってか?」


 グレンがぐったりしたのをみて、カレンが手を離す。ようやく開放されて呼吸ができるようになったグレンは、ぐったりしながら答えた。


「高みから鉄槌を下してみた……かった。爆裂魔法使いの性分」


「あぶねー性格してんじゃねー! 消し飛ぶだろうが!」


 高いとこに立つと、低い場所に向かって爆裂魔法を使いたくなるらしい。密集地域に山をも消し飛ばす魔法を放つなど、どれだけの死傷者がでることか。試すだけで国家反逆罪だ。国中の魔法使いが、自分たちを捕まえに押し寄せるのを想像して、レガレルの背中が冷たくなる。


「水でも飲んで、落ち着け!」


 今朝がた手渡された水筒を取り出した。よくある竹や皮製でなく、金属性である。破壊衝動がうずくほどのすばらしき景色を眺めながら息を整える。ぎゅっと捻ってキャップを開けて現れた開口部に、口をつけて水を飲んだ。


「あー。冷たくてうまいな!」


「うん。おいしい。この水筒ってどうなってんの?」


「モコトさんが作ったやつでしょ? いまさら気にしてもしょうがない、カナ?」


「十分に頭が冷えたな? それじゃ行くぞ」


「なんであんたが命令するのよ」


「バカレガレル、カナ?」


 登りきってしまった山の上は、平原が広がっていた。背後に街を見下ろせなければ、平地だと言われても信じられるだろう。依頼票をみたときは、変人が集まった集落か思っていたグレンだが、これなら納得。林が、まばらに点在する意外は草木が低い。開墾も難しくなさそうにみえ、十分に暮らしていけそうだ。風はすこしばかり強いが。


 そこから何分も歩かないうちに家が現れた。目に入った住居は家というより小屋に近い。石造りの多いカウウルに似せたのか壁の素材は土。プルカーンよりも貧しいなと双子が言えば、火事には強そうだとレガレルが答える。どちらにしても質素な感じがぬぐえない。


 家の前には、体格の良い女性とひょろりと痩せた男性が、立ち働いていた。グレンたちをみつけると、大きく手を振って歓迎を示したが、近づいてくる三人がまだ若いと確認できると、はっきりと失望を現した。


「あんたら、ギルドからきたのかい? ずいぶんと若いけども。大丈夫か?」


「何をかくそう、F級の成り立て冒険者だ! どんと任せてくれ」


 どんっと、左手で張った胸をたたいたレガレル。その頼りなさをみて、女性と男性が顔を見合わせて、同時に肩を落とした。はぁ~っと、とても長いため息のあと、覇気を失った声で手招きする。


「最近じゃあギルドってのも、人手不足なんだね。まぁ仕方ない。あんたらでいいよ。来てくれただけましさなね。こっちへきな説明するよ」



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