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異世界のイージス~少女の中でコックピット生活〜  作者: 北佳凡人
四章

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17 馬車の修理

久しぶりの、2話連続投稿。

こちらも短いですが、モコトの修理チートです


「いまから私が馬車を直す。ドワーフさんに、うまく言い訳してよ」


『え?』



 私は、手早く自分の部屋を模様替えを済ます。今のコックピットではなく、いつのもワンルームスタイルでもない、空間サイズは変えられないけどまったく異なる部屋がいい。


 目的は工作だから、必要なのは卓球台のように幅広く、鉄球が落下してもへこまない丈夫な作業テーブル。ちょこんと座れる腰掛けがあればなお良い。


 作業谷の端に万力が付いてると便利だな。頭だけでは設計できないから、ちょっとした図面がひけるような机も欲しい。背もたれ付きの椅子でゆったりペンを走らせよう。あ、そんな時間はないか。最後に、手伝ってくれる助手がいれば助かる。


 そうやって、モノづくり工房のような部屋をイメージすると、景色を移すモニターを残して四周が暗転した。無重力に身体が浮き上がると、足元を中心に部屋がリフォームされていく。いつのまに出現したのか、操作用の小型タブレットが、手の中にあった。


『さっきから誰と話してるんだ、ガスラーよ』


 心話の対象にヴェストリさんを加える。


「ヴェストリさん、私はモコトって言います。ウィルです。このあたりにある鉄の山は、いらない部品ですか?」


『モコト? 誰だ? どこから話してる?』


「詳しいことは、ガスラーさんが説明してくれます。部品はいらないんですか?」


フェアを注視するが、声が違うと判断したヴェストリさんは、首を回して私を探そうとする。もちろん見つかるはずはない。探すのをあきらめて、ガスラーさんを凝視。きちんと説明しろよと言い放つも、こちらに答えてくれた。


『部品は……そうだな。壊れた馬車などから外した雑品ばかりだが?』


「なら借ります。フェア、もっと馬車に近寄って」


 私達がいる場所は、何台もの馬車に囲まれている。修理の途中なのか、組み立てている最中なのかしらないけど、都合よく近傍から隠されていた。



〔クラウドポーチ〕を発動。まずは馬車だ。でかいブツだけに収納できるか不安だけどシャーシだけならなんとかなるだろ。モニターにマークしてゲット。よし、入った! 不可能だったりしたら思惑が外れて、別の手段を模索しなきゃダメなところだった。よかった。


『ば、馬車が、消えたそっ!なにをやった? 』


 ヴェストリさんが驚いてるが無視。説明は、ガスラーさんに丸投げだ。

 次は、格納した馬車をこちらがわに取り出す。タブレットを操作して、〔クラウドポーチ〕の収納アイテムの中から馬車を選択。出現先を〔ウィル モコト〕にする。うーん。地図やリッコの実は、手元にぱっと現れるイメージだったんだけど、でかい馬車はさすがに迫力がちがう。作業テーブルの真横に、ででーんとお出ましになった。


『それで、ウィルってのはですね……』


 正気に戻ったガスラーさんが、一生懸命に説明している。フェアをちらっとみたのは託したっ!という意思表示か。しかし、説明が上手だな。私が話すよりも分かりやすいかも。さすがわ添乗員だと言っておこう。


 馬車さえ取り込んでしまえば、後りは小物ばかり。ドワーフが使わないといった雑品を、クラウドポーチで片端から取り込んでは、目の前に一気に出現させていく。これは多い。馬車よりも山になってないか? クラウドポーチに入れられる最大サイズってどれくらいなんだろう。


 馬車と部品が揃ったところで作業開始。


 私がやりたいことは、単なる修理だけではない。ここまでの道中、乗っていたみんなはお尻が痛いといっていた。エアクッションを渡して誤魔化したけど、せっかくだからさらに快適な乗り心地を味わっていただこう。考えたのは、次のとおりだ。


 金属製シャフトの高質化。

 ボールベアリング採用による走行の安定化。

 サスペンションで馬車のクッション性を高める。


 馬車のクッション機能を総合的に高めてやろうっ作戦だ。


 この部屋は私のイメージを具現化できる空間だ。十勝川がナイフを作ったように、この前ミニバンクを作成したように、馬車の強化はきっと可能なはず。


 問題なのは部材だった。無から有は生み出せない。等価交換とでもいうのか、かの錬金術師が思い出される。ファンタジーに映る魔法でさえマナの消費が不可欠のだ。ここにはいらない部材が揃っているのだから、使わない手はないだろう。


 金属モノは、素材を強化してべつの金属製部材に作り直す。シャフトは少し太くして、ベアリングが収まりやすいように突起をつけた形状にする。サスペンションだけど、スプリングは難しいだろう。作れないことはないけど、違和感がありすぎる。むき出しで丸見えになるので簡単にばれるし、そのとき、この世界の工業力で再現するのは困難すぎる。そこまで難題を押し付けるのは気が引けた。


 そこで思いついたのが板だ。湾曲した板を3枚重ねて板バネにする。座金という発想なんだけどトラックなんかと同じだね。


「そして、ボールベアリングかぁ」


 回転を受け止める転がり軸受ってやつだ。日本ではニミ四駆にさえ使われているありふれた仕組み。これにも使われているけど木製なんだよね。コロの発展版程度っていったほうがいいか。真円や真球は魔法の世界にあっても難しいようだ。私としては、自動車部品並みのパーツを再現しようと思っている。金属製ってのはいかにもオーパーツなんだけど、あると無いとじゃ、故障率が全然違う。

 

 うーん。

 色を茶色にして、見た目を木製にすればいいかな。そうしよう。

 私の暴走は止まらない。そこまでやるならアレも作ろう。


「空気タイヤも導入してみっか。ゴムってできるのかな?」


 ゴムタイヤの出現を試みるが、目の前にある部材では、ゴムの再現は不可能だった。あ、エアクッションと同じように作ればいいか。革と布を張り合わせて強化、バリアスキルを固定化すれば……よし!


 やったよ、じいちゃん。藻琴村時代の仕込みが花開いた感じだよ。林業や農業に使っていた作業機械や運搬機械の知識が役立った。太極拳のことといい、じいちゃんの教えが、死んでから役立つってのはひどく皮肉なことだ。


 出来上がったパーツを、馬車のシャーシに組み込んでいく。

 ここまでの所要時間、およそ12分。これで食べていけるかも?


 うん、上出来!!

 いい仕事したなー。

 一杯やりたい気分だ。


 外では、ガスラーさんの説明が一段落したようだ。余った部材はそっくりもらおう、また使えるかもしれないし。


 じゃ、お披露目といきますか。再びタブレットを操作。完成したシャーシをクラウドポーチ経由で、リアル実体化していく。


 消えたはずの馬車が再び、ドワーフさんの前に出現した。


『うっそー』


 目の前に現れた馬車を見たヴェストリさんが、顎が外れるくらい口を開いているあんぐりと表現される表情が、これなんだね。アニメ意外で始めてみた。


『まぁ、モコトだから』


『うん、アリだな』


『いまさらだから、驚くことではないだろ』


「な、3人衆、そこへなおれ!」


 いつものふざけた連中を他所に、感無量な人物がいた。


『わ、私の馬車が! モコトさまぁ~!!』


 生まれ変わった馬車シャーシにすがりつき、号泣しているガスラーさん。そりゃそうか。危惧していた修理費と貸し馬車代が浮いたのだ。ぶつけた車の修理費が無料になれば、私だって飛び上がって喜ぶ。


 おなじく取りすがっているが、ヴェストリさんの方は目を見張っている。


「こ、このシャーシに付いているベアリングは鉄製か? この金板は、馬車の弾みを殺すのに使える。それにタイヤだ。指で押せばプヨプヨと押し返す。空気が入っているのか。どれもこれも、見たことない技術ばかり。これがウィルのワザだというのか!!」


 それを聞いたガスラーさんの態度が一変した。きらりと瞳が光ったように見えたのはのは、私の気のせいか。


『ヴェストリさんなら、再現できますよね? 私と専売の契約を結びませんか?』


 さすがわ商売人。心の中でそっと拍手を送った。

 平成日本人に生まれ変わればよかったのに。




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