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異世界のイージス~少女の中でコックピット生活〜  作者: 北佳凡人
四章

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15 グレンとカレン



「あそこが、冒険者ギルド。あたしたちは、先に入ってるから」


「じゃ、また後でカナ?」



 冒険者に登録するのには、一人ずつ審査があってそれなりの時間がかかる。双子が登録した時には合わせて二時間近くかかっている。それならば先にガスラーの馬車をみておきたいと、ウィルの芝桜藻琴が言い出したので、ツェルト組の三人はそちらへいくことになった。


 ギルドの場所だけを案内した双子は、三人と別れた。つぎに合流するまでは、別行動となる。


「ふぁー。カレン、さっきはありがとね」


「もういいよ。それより、レガレルって頭にくるよね」


「でも、やっちゃったのは、あたしだから。文句を言われても仕方ないし。ガスラーさんも落ち込んでいたし」


「でも、グレンは悪くない! わざとやったわけじゃないんだから、ね?」


 この双子の姉妹はグレンが姉である。性格は間逆。おっとりして真面目だが物怖じしない割りに不器用なのがグレン。小器用になんでもこなして手際が良いが、ときどき姉思いが暴走するのがカレンだ。

 

 性格の違いは魔法にも表れている。爆裂魔法の里を自称する、プルカーンの気質を愚直に真似た結果、村でも指折りの上級火炎魔法を見につけたのがグレン。興味本位からさまざまな火魔法の使い方を試したことで、小から中まで微妙な匙加減の魔法を放てるカレン。カレンについては、火と相性の良い風魔法も身に着けていた。


「あたしは【合わせ月の焚(クロスルア)】で、魔物討伐の前線に行きたいな。異常発生した魔物の集団を爆裂魔法で焼き尽くして、村や町を護る仕事をするの」


「いつでも一緒にいるよグレン。あなたが取りこぼした魔物を、ズバンズバンって、打ち抜くの。二人なら、きっと誰にも負けないよっ!」



 村を出てから決まり文句になっている言葉を確認しているうちに、冒険者ギルドに着いた。扇型をしている街の中心部近くのエリアに冒険者ギルドはある。遠くからでもよく目立つ。建物は石造りで飾り気がないが、一度でも訪れたなら迷う場所ではない。


 冒険者登録の済んでいるグレンとカレンは、手頃な依頼がでみつかれば、暇つぶしに受けるつもりだ。重い古木の扉を開けると、少しばかり汗の臭いが鼻をついた。


 窓口が三つあるカウンターと、悠々六人は腰掛けられるテーブルが四脚あるロビー。カウンターもテーブルもそれなりの場所を占めているのだが、空間が広すぎるので、片隅に追いやられたようにみえる。体育館と役所の窓口がくっついたようなバランスだ。


「久しぶりだね」


「前に来たのは、秋だっけ?」


 一月が三十日。十ヶ月で一年が過ぎるこの世界にも、きちんと四季が存在する。今は春。二人にとって今日が二回目となるギルドに足を踏み入れる。


 訪れている冒険者はまばらで、みんなが大人の男ばかり。新たな客を確かめようと、一斉にこちらを振り向きいた。それが子供二人の魔法使いだと分かると、今度は好奇心露わな視線に切り替わる。


「ほ、ほら依頼の掲示板を見に行こ」


「あ、うん、そうだね」


右手右足を同時に出して、カウンター反対の壁にある、冒険者掲示板へ行く。


以前来たときは、二人だけではなかった。村長や村の見知った大人たちに伴われて、成人に達した若者たちをまとめて登録したのだ。登録の方法や依頼の受け方をレクチャーされ、冒険者の登録が済むと、簡単な依頼を体験的にこなした。言うなれば研修旅行。


そのときの楽しさを思い浮かべて気軽に依頼をこなせるつもりでいたのだが、前回のような気楽さはここにはない。拒絶されてるような空気が肩に重くアウェイ感がハンパない。カレンは、このまま帰ろうかとさえ思ったが、それはなんだか負けたようで癪にさわる。意地でも一つは依頼を受けたい。


「えーと。あたしたちは、なりたてF級だから、一つ上のEから受けられんだよね?」


「草とか木の実の採取ばっかり。魔物討伐とか、ないのカナ?」


新人冒険者は、まず、周辺の環境に慣れることを要求される。底辺のF級やE級に、魔物依頼はない。それでも、森の中には逸れた魔物や獣が徘徊している。採取であっても、街から遠くなるほど危険度が増し、依頼料も跳ね上がる。まるきり安全な依頼などはないのだ。


そうした、小さな依頼を積み重ねていき、実績を認められると冒険者ランクが上がっていく。


「あった、一つだけ。E級だけどゴブリン退治?」


「あー本当だ。えっと、はぐれゴブリンが出没だって。あたしたちにぴったりカナ?」


 掲示板の依頼票をぺりっと剥がして、受付のカウンターに持って行こうとする。


「そいつは、やめといた方がいいよ。嬢ちゃん方」


グレンが振り返るとガッチリした体格の女性剣士が近づいてきた。男しかいないと思っていたところに女性の登場。二人はちょっとホッとした。


「どうして? 」


「下の欄、日付けを見てみな?」


 言われた通り依頼票の日付け欄を見ると、二月になっている。今は三月。先月の依頼ということになる。


「簡単な依頼なのに、誰も手をつけてない。ひと月も過ぎてるのにな。なにかあると思わないか?」


「あの、あなたは?」


「あたしは、グレイス。女の冒険者は少ないからね。迷惑だと思ったが、潰れて欲しくないんで、声をかけさせてもらった」


「そう、そうなんですか。あたしはグレン」


「どうもありがとう。あたしはカレン。でも一応、受付に聞いてみるカナ」


「ああ、そうしな」


 グレイスに、ぺこりとお礼をしたグレンとカレンは、カウンターの人の並んでいない窓口へと依頼票を持っていった。


「北の森のはぐれゴブリン退治ですね」


 受付の女性が説明してくれる。

カウウルは急峻な山にへばりつくように設計されて造られているが、山の上は台地になっており、たった三軒の家がぽつんと暮らしているのだという。集落ともいえないその場所の、僅かな畑の作物を狙ったゴブリンが出没するようになった。


「山の上までいかきゃいけないし、ほかに脅威といえる魔物はいません。手間がかかる割には依頼料が安いので引き受け手が現れないんです。ゴブリン一匹とはいえ、討伐です。本来ならはD級なんですが、依頼料と危険度の関係でE級扱いなんです」


 住人も手をこまねいていわわけではない。罠をしかけたり、何度も退治しようとしたが、意外と狡猾で捕まらないという。たったの一匹に手を焼いてしまい、なけなしのお金を出し合って、ギルドに討伐を申し込んだという次第だった。


「あたしたちでも、受けられるよね?」


自分の腕を試したい。


 新人冒険者とはそういうものだ。身の丈を超える依頼を受けたがるが、こなせないで自信を喪失するケースも多い。あまりの落ち込みから冒険者をやめるのはまだマシで、仕事の最中に命を落とすことさえある。だからこそ、低レベルの冒険者には、採取依頼しか出さない。強いと勘違いした若者の暴走に歯止めをかけているのだ。


 しかし一方で、単調な依頼に飽きてしまった新人が、早々に冒険者を止めてしまう弊害も起こっている。冒険者のなり手がいなければギルド運営は成り立たない。簡単では廃業し、困難だと死亡する。ギルド運営側は両者のバランスを見極めながら、冒険者の技量に合った依頼を見繕うことになる。



女性職員は、メガネをグイッと持ち上げると、幼さが残っている双子の魔法使いを説得にかかった。


「ルール上は可能だけど、あなたがた初心者には荷が重いかと。力に見合わない依頼を了承することは、ギルドとして承服できません」


ギルド規則のグレーゾーンにある依頼。本格的に冒険者にはなるつもりはない。依頼を受けるのは暇つぶし気分だ。職員の言い分はわかるので、引き下がったところで問題はない。しかしカレンは感じた。能力が足りないと決め付けられているのだと。


「ゴブリンくらい、何度も倒してるけど。それでもダメ?」


「実力を主張して、倒れた冒険者は多ですからね。私はあなた方の力量を存じませんので、ランクで推し量るしかありません。間違いがあれば、親御さんが悲しみますよ?」


「なら、悲しむ親がいなければ、受けられるのね?」


 じつは二人は、自分の親の顔を知らない。両親は王都で結ばれたと聞いているが、幼い二人をつれて村に戻った母親は、まもなく病気で亡くなったらしい。父親は、その名前だけは知っているが、まだ王都にいるかどうか不明。魔物に殺されたのではないかという噂もあった。


 そうは言っても、親のいない子供はこの世界で珍しいものではない。誰もが、悲観するでもなく哀れまれることもなく元気に生きている。ことに魔法村では、魔法の使える子供を村全体で育てる習慣がある。潜在力の高い二人は、元気にすくすく育てられた。爆裂の村にありがちな、炎好きな性格を身に付けたのは誤算だったが。


「それは……、ごめんなさい」


 職員はカレンの言葉を重く受け止めて、言葉に窮してしまった。カレン本人は、してやったりと心の中でサムズアップ。


「だから、大丈夫。危なかったら止めて戻ってくるから」


「わ、わかりました。絶対ですよ?」


 人の良さにつけ込んで承認をもらった二人は、依頼達成の条件を改めて確かめ、カウンターを離れた。背中に感じとったため息は無視して、さきほどの女性剣士の元へいく。


「グレイスさん、依頼をうけましたよ」


「あたしたちでも、大丈夫だそうです」


 ふーっと、グレイスも大きく息を吐いた。困った表情をしている。


「それならいいけどさ、気をつけるんだよ。ルーキー狩りってのも横行してるそうだから」


「ルーキー狩り?」


「力の弱い新人を襲う連中さ」


「えー!?」


「そんなことして、どうするんですか?」


「さあね。奴隷にして人買いに売るのか、それとも弱いものイジメが大好きなんだろ。 で、依頼は、早速行くのかい」


「いえ、もう、夕方になるので明日にします。朝一で」


「そうかい、ま、無理しないでな」


「はい。いろいろ、ありがとうございます」


 何度も頭を下げると、入ったときのアウェイ感が吹き飛んだのか、意気揚々とギルドを後にした。



仕事の合間にスマホで書き溜めて、家でPCで修正と肉付け。というサイクルで行ってます。

でも仕事が忙しくなってサイクルが護れなくなってきました。どうにか週二回投稿をキープしてますが、この先どうなるか未知数です。

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