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異世界のイージス~少女の中でコックピット生活〜  作者: 北佳凡人
四章

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14 魔物販売



 ホテルから飛び出し、わりと清潔な表通りに出た五人。どこへ行こうかと少々もめだした。


「まずは、魔物を買ってくれる店だ。武器屋か鍛冶屋だ」


「そうだね。お金が欲しい」


「リーゼライにフェアちゃん、何をのんきにしてるの? 馬車が壊れてるってことは、この街に足止めなんだよ!」


「最悪、【合わせ月の焚(クロスルア)】に間に合わなくなることもある、カナ?」


 魔物販売を提案する二人に、グレンとカレンが異を唱えた。

 レガレルが、イヒヒと笑いながらカレンをからかう。


「そうだよなあ。グレンが壊さなければ、明日には出発できてたろうし」


 その通りである。街道で左右の森に隠れていた盗賊をフェアバール無力化した。そのとき、加勢しようとしたグレンの火魔法が暴発し、ガスラーの大切な馬車の上と下を貫いたのだ。ムッとするグレン。姉妹を擁護するカレンが庇う。


「グレンは手伝おうとしただけ。あれは事故だった、カナ?」


「事故でもなんでも、壊したんだろ?」


「グレンはわざとやったんじゃない、カナ?」


「ワザとじゃなきゃ、壊してもいいのか?」


「グレンの魔法は最高なの!」


「魔力が強いだけで、精度はからっきしだろ」


 真っ赤になったにらカレンは、レガレルをにみつけたまま、両手を交差。指先をむけて、無詠唱で炎魔法を放った。動きを察したレガレルは、とっさに短い呪文を唱え、水の防御魔法を展開する。


 指先から飛び出した2つの炎は威力が小さい。水の縦に到達するなり、じゅっという音とともに消え去った。身体を横に移しながら、次の魔法を放つカレン。今度の魔法は火弾。盾の防御力をみてとった彼女は、先ほどより威力を上げつつサイズを圧縮した。


 貫通力を高めた火魔法であったが今度も水の盾に阻まれた。レガレルは魔力を追加し、水盾の強度を高めたのだ。


 少年と少女が路上で大声を張り上げて口喧嘩をしている。何事かと、通行人たちが足を止めたところ、すぐに魔法のやり取りに発展。ぶっそうやイベントに驚きつつも、面白い見世物を始めた子供達を見ようと、見物人が増えてきた。


「こんなところで暴れちゃ、だめだよ、二人とも!」


 フェアバールが、カレンの手を握り締めた。自分よりもずっと大きなお姉ちゃんを、小さな身体いっぱいを使って静止させる。リーゼライも歩み出て二人の中間に収まると、二人にだけ届く程度の小声でつぶやいた。


「街の警備兵に捕まれば牢屋だぞ。悪くすると馬車が直っても王都にはいけなくなる。【合わせ月の焚(クロスルア)】にも間に合わなくなる」


 カレンとレガレルは、言葉の意味が分からなかったが、そろりと周囲に目をやり自分達を観覧している住人たちの多さに驚く。これだけの騒ぎになれば、いつ警備兵がやってきてもおかしくない。すぐさま魔法の構えを解いた二人は、所在無く互いをにらみ直した。

 

 リーゼライは、遠巻きにしている通行人にぺこりと頭をさげた。


「すみませーん。この二人、仲がよすぎて、ケンカしてしまいました」


「な……」


「仲がいい?」


 レガレルに歩みよると、大げさな動作で肩に手を回す。


「なんでもないので気にしないでください」


 住人たちは、面白くなさそうにぶつぶつ言いながら解散していった。子供の痴話喧嘩か、魔法の喧嘩が見られると思ったのに、などと、言っている言葉は物騒だ。カウウルの街に魔法使いがいないワケではないが、数が少ないので、魔法の喧嘩や決闘は珍しいらしい。


 肩に手を回したままリーゼライが歩くと、フェアバールがカレンの手を握って引っ張っていく。グレンがその後に続いた。人気のない路地に入ると、二人を見比べながら言い放った。


「壊れたものは仕方ない。修理代は、国がもつんだろうし、言い争っても仕方が無い」


 レガレルとカレンの子供の喧嘩であるが、年齢はどちらも十六歳。十五歳で成人になるこの世界では立派な大人のはずだが、成熟には程遠い。むしろ十五歳のリーゼライのほうが落ち着いていて、グループの引率者に見える。


「庇うのはいいけど、グレンは困ってるぞ。それとレガレルは、言いすぎだ」


 リーゼライが説くと、とりあえずふたりを納得させる。


「それでだ。ガスラーさんは、あれでかなり手際のいい商人だぞ。街に入るときも、審査に待たされなかったろう? だからおそらく待っても二日だ。それで修理できなきゃ、他の馬車を手配する。と、オレは見ているが?」


「リーゼがそう言うなら、そうなんだよ。ほら、グレンちゃん、カレンちゃん。お店に案内して」


 建物さえ吹き飛ばしそうな魔法の喧嘩が始まりそうな勢いだったが、リーゼライとフェアバールの言葉で、カレンは矛を収めた。


「ふー。フェアちゃんは、気楽だねー。まあいいわ。わかった」


「カレン、ありがと」


 グレンがぽそっと、礼を言った。




 カウウルの街は大きい。何度もきているという割には、さんざん迷った双子。迷惑そうな道行く人に尋ねながら、表通りからも外れている、すす汚れた建物の間の細道をくねくね入った薄暗い通りを進む。


 店に到着したのは、放置されたネコの死体に足をすくませ「戻ろうよ」とフェアバールが弱気になり、さっきの趣旨返しかとレガレルが思った頃だった。


 グレンは、スス汚れた看板を揚げている鍛冶屋を指差す。


「ここが一番よ」


「【乱れた女豹】? 、ここって本当に鍛冶屋なのか?」


「村長の弟がやってるの。潰れた酒場を買い取ったんだって」


「看板を付け替えるか、お金がないならせめて外せ、と村長は言ってるカナ。中に入るよ」


 うらぶれた通りから入った店の中は、思いのほかキレイだった。魔法道具を張り巡らしているのか天井全体が明るい。鍛冶屋という職場がもつ、汗と材料の入り混じった臭いも無い。展示してある品物は、金属や魔物の皮で作ったものであろう。食器やイスなどの生活実用品から、剣や盾といった武器が並ぶ。


 実用性とデザインとが妙にバランスよく、表通りにあれば、たちまち評判になるような洗練された物が目立った。丁寧な挨拶で、折り目正しい好青年が迎えてくれた。


「いらっしゃいませ……なんだ、フレーム姉妹か」


「なんだ、はないと思う」


「つれない、カナ?」


「カナ? そのへんな語尾はいつからだ、カレン」


「キャラづくりだったのかぁ? そいうやグレンも最初、なんか付けていたな?」


 指摘を受けて赤くなるカレン。無理やりな語尾はキャラ作りだったことが判明した。


「う、うるさい、カナ?」




 鍛冶屋の主人は、ロックスペック・ゲルという。グレンが言ったとおり、プルカーン女村長シャンゼの弟だ。妻と二人で経営していた。リーゼライが前にでて買い取ってもらいたい旨を伝えると、奥にある素材部屋へと案内された。


「冒険者ギルドへ持っていかなくていいのかい?」


「ぼくら三人はまだ冒険者じゃないんです。登録にいきたいんですが、その登録料が足りないので、ここで買ってもらおうということになったんです」


「そういうことなら、規約違反にならないか。ああいう組織は買取のナワバリ意識が強いからね」


「はい。大丈夫です」


 魔物はすべて、ここまでの途中で襲ってきたのを撃退したものだ。夢中で対応しているうちに、気が付けば30匹を越えていた。オーク種やゴブリン種が主だが、一匹だけ毛色の違うのが混じっている。小型のワイバーンだ。馬車の後をしつこく狙ってきたので、まず、カレンの火魔法で目を焼き、モコトが強化した風魔法で翼に切れ目た。あえなく墜落するとあとはカンタン。やりたい放題で止めを刺したものだ。


 フェアバールが腰につけてるポーチから、モコトの〔クラウドポーチ〕の中身を出していく。


「うへぇ、空間保存鞄かぁ。ぼくも持っているけど、ここまでの量は入らないなぁ。どこで手に入れたか教えてくれないよね?」


「言えませんね。彼女の家に伝わる家宝だと。そう思ってください」


『私は骨董品かっ』


 黙っていたモコトが、しばらくぶりにツッコむ。リーゼライは無表情を貫いたが、ほかの四人は笑いを堪えていた。


「ん? なにかおかしかったかな?」


「わかりません」


 しらっと答えるリーゼライの表情が、ガマンしている笑い増徴させる。


「ごほん。いくらで買っていただけますか?」


「そうだなぁ……」


 計算するねといいながら、棚に並んでいる分厚い帳簿を引き抜いた。材料の価格表なのかもしれない。パラパラと熱心にページをめくりながら、用意したメモに魔物の価格を書きめていく。


『リーゼ君、アーヴァンクを動ける剥製にしたいんだけど、いくらかかるかな?』


「この、剥ぎ取ったアーヴァンクは、剥製にしたいんですが、できますか?」


「うん? できるよ? いつまで?」


「できれば、明日までに」


「無理かなぁ」


「では、明後日ならば?」


「頭部と骨、それに皮が半分以上があるのか。七割ほど処理が済んでるから、それくらいならどうにか間に合うか。何に使うか知らないけど、だいぶ小さくなるよ。それと料金も……」


「割り増しですね? かまいません」


「じゃ決まった。これでどうかな?」


アーヴァンクも希少だが、やはり、ワイバーンの買取が高い。ロックスペックは、65枚の金貨と40枚の銀貨を提示した。


金貨一枚はおよそ十万円、銀貨は千円になる。合計すれば654万円だ。


「ぼ、冒険者ってこんな、儲かるの?」


予想以上の高額に、グレンカレンは声を無くし、レガレルは気絶しかけた。実感のないフェアバールと、まるでピンときてないモコトを他所に話しが決まる。


「それでいいです」


ニヤリとするリーゼライは、受け取った金貨をモコトのポーチにしまうと、残った銀貨を10枚づつ分ける。およそ1万円。お金を持ち慣れない田舎者が一日遊ぶには十分なお小遣いといえる。


礼を言って店をでると、次はギルドだ。







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