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異世界のイージス~少女の中でコックピット生活〜  作者: 北佳凡人
三章

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11 疲労会談

お待たせしました。4日ぶりの投稿です




「きっとまた、チャンスはあるよ」


 カッコつけてそう言ったものの、予感があったわけじゃあない。

 それどころか、フェアと触れる機会は二度と無いかもしれないとさえ思っていた。


 しかし、チャンスは予想外に早くやってくる。

 三時間後、私達はまた光の結界の中にいたのだった。


「何をしてくれんだぁ?」


 そのときの私は、パジャマ姿でベッドでうとうとしていた。

 そのベッドが、いきなり消えてなくなって、冷たい床の上に寝ることになってしまった。

 夢から叩き起こされて、いささか不機嫌です。


「ご、ごめんモコト。炭屋のウェイブ・クラムさんに触れたらこうなった」


 フェアは申し訳なさそうな私のところにやってきて、ふわっと抱きついた。良い匂いが鼻の奥をくすぐる。


「さっきは、ウェイブさんがフェアに触ったとたん空間に閉じ込められた。それならばフェアが触っても同じになるかもしれない。それを検証したんです」


 リーゼライはドヤ顔だ。満足そうに証明終了!って胸を張っている。なるほどって感心だけど、次からはこちらが納得してから実践してもらいたい。


「私が起きてからやってよね」

「ごめんね。ウェイブの相手と会話をしたかったもので、私が頼んだんだ」


 そう言ったのは村長だ。山賊とレガレルがうなづいてる。顔が見えてるほうが、話しがしやすいし本音の伝わり方は絶対違う。メールの行き違いを避けたかったって感じね。

はいはい。


 ―― 只今ヨリ、ウィルスキル争奪デュエルを開始します ――


 またこのアナウンスか。もちろん今回の相手も十勝川。

 私より、ずっとずっと疲れた様子で、ぺたりと座り込んでいる。デュエルって、がっつりエネルギーを消耗するからね。精神体だけにマナの消耗はズシッと堪えるんだ。顔がゲッソリしてる。


 さっきは気付かなかったけど、あいつの頭の上にはゲージが見えてるんだよね。メモリはかなり少なくてすでにレッドゾーン。10%程度になっている。カンタンに私に負けたのはあれのせいかも。爆裂魔法でさんざん魔法を削られた後の、底に近い状態でデュエルをやったんだな。


 私のは?

 右目の端っこに確認できた。

 こっちは20%ほど。ヤツよりはましだけど、回復には遠いなぁ。


 ―― 十秒間ダケ質問ヲ受付マス タイムアウト後デュエル開始デス ――


「ねぇ聞いてた?」


 十勝川に話しかける。


「ああ、事情はわかった。オレも話し合いは必要だと考えてたからな。早いとこ済まそう。眠くてしょうがない」


 憔悴しすぎて立つのもしんどいらしい。早く済ませたいのは同感。


「だが、お前とだけは馴れ合うつもりはないからな」

「当たり前だべさ。初めて意見があったね」


 ―― デュエルスタート! ――


 もうか。10秒は早い。また質問時間を無駄にした。


 デュエルは始まったけど、戦わないでダメージがゼロなら引き分けで終わるのかな。魔力を消耗する以上、時間の制約はあると思う。無制限ってことはないだろう。時間も表示さてれば親切だったのに。


「デュエルの時間って何分ぐらいだと思う?」

「さあな。家庭用ゲームなら自分で設定できるのもあるんだが。 長くても十分、短いなら三分ってとこか」


 私もそんなところだと思う。時間が限られている前提なので、ポイントを絞らないといけない。


「どうなの?リーゼ君」

「問題ありません」


 私が寝ていた三時間に、ウィルのことは知っている範囲で説明し終えていたそうだ。事実を確認するだけらしいからこの場での時間は気にしなくて良いとのこと。結界が終了しても、話し合いは継続できるしね。そこまで整ってるんなら起さなくてもいいだろうに。


 とはいえ、プルカーンでは、十勝川が爆裂に拒否られてた。ウィルのことを話そうとすればサンプルは私しかいない。事実上、最大の擁護者となってるフェアバールが説明するの筋なんだけど、知らない大人だらけの部屋で、まともに話せるフェアではない。自然の流れで、リーゼライが仕切ることになったらしい。


 彼は、ツェルト村での訓練の模様を、自身の意見を織り交ぜて聞かせ、こう結論付けたという。【ウィルは宿主を防御するが好戦的。余計な刺激はしないように】



「講義する! それは事実を湾曲した解釈だ!」


 私の正当なる反論に、冷たい笑顔でリーゼライが答える。


「ゴブリンと戦いたい、ダンジョンに行きたいって、言ってませんでしたか?」


言った憶え、あるかな?


「あと仕事も嫌いみたい。枝落とし、嫌がってたし」


 追い討ちをかけないでくれる? フェア。


「芝桜、おまえ異世界に来ても暴れてんのか。日本人の評価を暴落させるな」

「わ、私、会社で暴れてなかったっしょ!」

「俺を投げ飛ばしただろうがっ。責任とらされて、首になったんだからな!」

「あ、あれは、あんたが――」


 みんなが、ジト目で見てくる。

 いや、事実だけどちゃんとした理由があるんです、裁判長!


「では、ウィル全体ではなく、モコトだけが凶暴だということに確定します。次の議題は二人目のウィルです」

「わ、私のイメージが」


 木で鼻をくくった国会議長のごとく会議を進行していくリーゼライ。その言葉をうけて、村長が十勝川へと身を運ぶ。ウェイブさんもすぐ脇に立った。二人を、上目でにらみつける十勝川は、当惑しながら相手の思惑を推し量っている。


「この村の長として、あなたのことを知っておきたい。是非とも教えてほしい」


 両手を広げたまま動かない村長。しばらく見ていた十勝川は、知りたいのは能力だろうと言って話し始めた。


「隠しても仕方ないが、オレの能力は植物系らしい。草や木、それに関して周囲の酸素や二酸化炭素なども操れる。防御と治療と攻撃ができるが、ほとんどは、そいつ――ウェイブだっけ?――を護ることに関係する。重力もあったが、つい最近盗られた」


 なるほど、O2とCo2ね。爆裂魔法が、拡散したり途中で燃え尽きていたのは、酸素の無い層をまとっていたからか。


「炎の魔法を防いでいたけど?」

「あれは何重にも樹木の壁を作って、さらに周囲の酸素を消し去ってやった」

「酸素とは?」


 酸素を知らないか。ここには化学や物理のような学問はないのかも。まぁ、魔法で火も光も作り出せる世界だからね。うちらの世界とは、探究の方向が違うのは当然か。


「空気の説明は面倒くさい。固体や気体からしなきゃいけなくなるし。カンタンに言うと、空気には複数の種類がある。そのうち、物を燃やすのに無くてはならない空気が酸素だ。それを消し去れば何も燃えないし。人も死ぬ」


 そうだ。酸素を操れるってことは、命さえもカンタンに奪える。地味なようでいて恐ろしい能力に、村長が顔色を失っている。反対に、リーゼライは目を輝かせてる。


「トカチガワさん、でいいんですね? そういう物事の摂理というのは、貴方だけの知識でしょうか?」

「空気や元素の知識は学校で学ぶ。俺たちの世界では常識だな」

「じゃ、モコトも知ってると?」

「知らないほうがおかしい」


 それは不都合な真実だ。リーゼライが不気味には微笑んでこっち見てる。どうしてくれるんだ。明日から質問攻めにされるだろう。恨むぞ十勝川。


「話を戻しますね。あなたは、その力と知識を使って、何をしようとしてるんですか」

「質問の意味がわからない」

「モコトの魔法もそうですが、過剰な能力をもってるのがウィルです。今後その力を、どのような目的に使用していくのか、非常に興味があります」


 首を傾けていた十勝川だったが、リーゼライの真意がわかると、つまらなそうに口を開いた。


「用いようによって世界征服も可能だってか? 」

「そうです」


 周りの人間が、質問の意味を理解してはっとしている。そんな彼らを尻目にさらにつまらなそうに男が続けた。


「バカバカしい。そんな面倒なこと誰がやるか。オレは毎日楽しく生きていければそれでいい。もう家族にも会えないしな。爆裂魔法を浴びせるとか邪魔をしなければ、いくらでもら協力する。だいたい、自分一人では一歩も動けない身だ」


村長はそんなに心配だったのか明らかにほっとしている。興味深そうなリーゼライの方が私には心配だ。


 ここの住人は知る由もいけど、なんのかんの言っても、十勝川はゆとり世代だ。とくに不景気な北海道で、職探しに苦労もしているはずで、多くを望まない生活が身についてしまっている。最低限の暮らせるお金と娯楽さえあれば、家でじっとしてられるんだ。


 そこは、私も変わらない。


「すまなかった」


 そう頭を下げたのは炭屋だった。両手をついて土下座のような座り方をしてる。この世界にも土下座はあるのか。


「ウィルというのを知らないものだから、僕は、自分が狂ってしまったと思ったんだ。君の言葉を聞かないで怖がってしまった」


 それは仕方ないことかと。意識と無関係な台詞がすれば、自分の頭を疑うだろ。なんか電波キター!と喜ぶのは厨二ヤロウだけだ。


「分かってもらえればいい。オレも伝え方が悪かったかもしれないし。今から、協力関係を築ければそれでいい」

「ありがとう。そう言ってもらえると、助かる」


 私が割って入る。興味本位だが、自分をサイコと疑うような言葉って?


「あんた、この人になんて言ってたの?」

「決まってるだろ、一般的な通信会話だ」


「だから、なんて」

「あ――。……こちらスネーク、雷電聞こえるか? 敵地への潜入に成功した応援求む……、て感じだ」


 ふざけてんのか。分かってやってるとは到底思えない。


「ガチで言ってんの?」

「こんな、現実味のない状態で、まともに振舞えてるほうがおかしい。芝桜が現れるまでは、長い悪夢だと思ってたくらいだ」


「意外と繊細なんだね」

「馴染んでるお前が、ズボラなんだ」


 フェアが、私の頭をポンポンと叩く。

 いや、そこは慰めなくていいから。


 ―― タイムアップ。制限時間が終了シマシタ 引分けニツキ スキルハソノママデス ――



「聞こえたリーゼくん。時間切れだよ」

「タイムアップって? 意味はわからないけど、終わるんですね」


 ギャラリーにも、アナウンスは聞こえてるようだ。フェアは今回満足そうにしている。ずっとくっついてたからね。スキンシップのおかげで、私も心が満たされた。ありがとう、フェア。


「もうすぐ、この結界は消えるようです。みなさん、戻ってからも話しはできるので、後は集会所で」


 光の浮遊感がやってきて、第二回ウィル会談はお開きとなった。

 今度こそ、ゆっくりさせて。




いつも読んでいただきまして、ありがとうございます。

この後、2~3話で三章終了の予定です。


評価や感想なども、いだだければ、ウレシイかなぁ・・・

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