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異世界のイージス~少女の中でコックピット生活〜  作者: 北佳凡人
三章

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5 お買い物

いつも読んでいただき、ありがとうございます



 モコトの頼みを聞いてプルカーンを一回りして、ものスゴイ爆裂魔法を見物。

 やっと商店街にある武具店に入れた。リーゼとレガレルがあたしの後ろに続く。


「わあっ」


 服や武装はたくさんあり、種類ごとに分かりやすく並んでる。いかつい革製の鎧とか、動きやすそうな布製の防護服が目立つ。革と金属の混じった臭いが鼻につく。


 思ってたよりも店の中は広い。

 他のお客がいるけど、ゆったり見て回れそう。


 魔法使いが好むようなローブも何着か吊り下がってる。でも一番数が多いのは、村人が着ている作業服。そんで、武具屋なのに武器といえるのは、数本の槍と短剣だけ。武器は買う人が少ないのかな。攻撃魔法使いの村だから。

 斧やナタは、武器だと言えなくないけど、スコップってナニ?


『ワークショップのような品揃えだね』


 目の右端に映っているモコトが、見回わしながら話す。どういう風に見えてるんだろう。レガレルに聞えないように、今度はひそひそ声で答える。口でしゃべったほうが楽しい。


「ワークショップ?」

『私の世界で、仕事のための服や道具を売ってる店屋さんのこと』


 なるほど、言えてる。

 あたしが着れそうなのは見つかるかな。


 一つの服も見逃さないように、いちいち確かめながら品定めする。ハンガーで吊り下げてある衣服を指で触っていく。大きいとか色がちょっととか、欲しかったのとは違うのばかりだ。


 でも、自由に見てられる雰囲気って、なんだか楽しい。


「あたし、新しく服が欲しいんだよね。魔法使いっぽいのを」

『今の服も可愛いけどね』

「これしかないから、替えが欲しいんだ」

『この店のラインナップじゃ、難しそう』


 ほかの客の相手をしていた武具店の主人が、あたしたちのところへとやったきた。御用はないかと、豪快な大声で尋ねてきた。


「かわいいいお客さん。なにか、ご希望の品はあるのかい?」

『デモを兼ねているのかな。日本人ならコスプレにしか見えないけど』


 武具店の主人らしく、ごつい革張りの鎧を着込んでる。モコトがなんか言ってるけど、よく似合ってると思う。みごとな山賊姿だ。


『か、かわいくて、それで、じ、丈夫なのを』


 尻込みしながら伝えると、申し訳なさそうに主人が肩をすくめた。


「すまん。ここに置いてあるので全部なんだよ。嬢ちゃん向きなのは、オーダーメイドになるなぁ。旅の方だよね。四日はかかるけど、いつまで滞在してる?」

「あ、明日の朝には」

「そいつは、残念だ」


 このおじさんは、あまり残念でもなさそう。でも、あたしは本気で残念だ。

 それじゃ買取りはしてますかと、リーゼが横から尋ねる。


「武器や防具に使えるものであれば、なんだって買い取らせてもらうよ」

「アーヴァンクなんだけど、丸ごと一頭あります」

「ほぉ。そいつは珍しい。あいつら、連んで行動するから倒すのがたいへんなんだ。高く買い取らせてもらうよ」


「いま、出します」


 リーゼが、あたしのほうに両手を差し出してきた。あれね。くすんだ朱色のローブをまくり、腰のポーチを外して渡す。


「え?その中に? 冗談はやめてくれ。君たちのような子供が、アーヴァンクを仕舞えるような空間保存鞄をもってるわけないだろう」


 ふふん。


 つい笑みがこぼれた。そういうのの適正年令ってあるのかな。常識は、あんまりわからないけど、世の中は広いんだよ。


《モコト、あの中は、モコトの入れ物とつながったままなんだよね?》

『うん、〔クラウドポーチ〕は、出し入れ自由だよ』


 山賊さんの言う空間なんちゃらと、モコトの〔クラウドポーチ〕は、ちがうんだなあ。鞄なんてなくても、どこにでも、とり出せるし。

 なんにもないところに、物を出したり消したりしたら大騒ぎになるから、わざと、鞄から取り出してるようにしてもらってる。


 リーゼが、鞄の中に手を突っ込む。見下した目でみてる山賊主人。

 その目の前で、無造作にアーヴァンクを取り出した。


『う、▶︎◎×をあっ!』


 言葉にならないほどに、店主がおどろいてる。レガレルも一緒になって驚ている。仕舞うところを見みたでしょ、キミは。


 みごとな一頭の姿に、山賊主人が目をみはってる。

 ふっふん。


「お、驚いた。君たちを見くびっていたようだ。すまない。しかし、綺麗なアーヴァンクだな。ほとんど、傷らしい傷がないじゃねえか。剥製にしても高く売れそうだ。いま見積るから、しばらく時間を貰えるか」


 さっきとは一転。職人らしい目つきで、アーヴァンクを品定めする。頭を持ち上げたりお腹を触ったり、毛の感触や重さを丁寧に確認していく。


 肉が美味しいって、誰かがいってたっけ。食べてみたいなあ。あとの二頭は、皮とかお肉とかに解体してあるはずだから、そのうち食べたいな。


『剥製という言葉が気になった。もしかすると、私のスキルが活かせるかも』


 山賊主人の見積もりが終わって、奥にある応接の間に招かれる。紙に書かれた引き取り金額をみながら、お茶を飲む。高いか安いかわからないけど、リーゼが上手いことやってくれるはず。


 入り口の方がザワザワしだした、ほかの客が騒ぎはじめたのだ。

 また爆裂魔法かな。


「おい、外で誰か暴れてるぞっ!」

「なにっ?」


 山賊主人が、それを聞いて立ち上がる。待っててくれと見積もりは打ち切ると、腕まくりをしながら表へと飛び出していった。


「くそっ、遅れたかっ!」


 騒ぎについて覚えがあるみたい。

 楽しげにもみえるその姿は、獲物を襲撃する山賊そのものだ。


 野次馬レガレルが、勢いに釣られて追いかけていった。

 リーゼライもため息をつきながら腰を上げた。


「またまた騒動。最近、どこへ行っても待ち受けてる気がするなあ」

『フラグを立てた者がいるとすれば、それは私かもしれない。ごめん』

「不吉なことを言わないで、モコト」


 店の表に出ると、公園の中に二十人ほどの人が集まってきていた。人だかりから、だい距離をおいた場所には、髪の毛がツートンのさっきの炭屋の主人が立っていた。出遅れたぁっ、と言いながら山賊主人が集団に加わるのが見えた。


 両の手で頭を抱えている炭屋さん。しかめた表情でなにかをつぶやいていた。団扇でふうふう暑がってたときとは、まるで様子が違う。


「あの人、どうかしたんですか?」


 リーゼライが、近くにいた女性に尋ねる。

 女性が親切にウケ答える。三十歳くらいの風格のある人だ。


「三、四日前から時々、発作をおこすのよ。わけの分からないことを言ってね」

「発作ですか? 沢山の人が集まってるきてるけど、ただ見てるだけですね。誰か治療とかしないんですか?」


 村の人がどんどん集まってきて、もう、100人は超えてそう。ゴブリンの騒ぎを思い出して、ちょっと怖くなった。


 炭屋さんは大声でわめきちらしながら、頭をガンガン地面にぶつけている。マトモには見えない。ここがツェルト村なら、無理にでも押さえこんで治療魔法を試してる。絶対に。

 でも誰も治療しようとしないし、なぜだか、列を作って順番に並んでる。


「オレはオレだぁ、中から出て行けー!」


 ん?

 中から出てけって言った?

 似たようなこと、誰か言ってなかったっけ


『覚えてるフェア? 同じようなことを口にしてたのを』


 モコトが、ぼそっとつぶやいてくる。


 え。

 あたしだっけ。

 そういえばそんな気もする。

 あれは、モコトが生霊とか言ったから怖くなったんだよ。

 それよりも、今は治療しなきゃ。


「おばさん、あの人痛そう。治療してあげな……」


 ズッガアアァァァーーン!!


 耳をつんざく轟音。

 公園の半分ほどを埋め尽くす灼熱の炎。

 生じた突風に飛ばされないよう、あたしたちは身を伏せた。

 爆裂魔法が、またしても、轟いたのだ。


 炭屋の主人を狙った今度のは、さっきの二人の爆裂とは比べものにならない。村を囲んでいる遠い山の稜線が陽炎のせいでボケボケになった。


 炎の余韻が収まるのを待って、おばさんが、にこやかに立ち上がる。


「プルカーンには、プルカーンのやり方があるのよ」


 この村は、変すぎる!



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