11 陰謀2
人を寄せ付けまいとするような、野生の巨木と罠のように生い茂る草木。光の届かない原始の森の底。わずかに開けた空間に立つ人影を目指して、闇色の鳥が音もなく降りる。
人影は周囲に目を向けながら、胸の高さに右の手を上げる。鳥は、出された手を止まり木にする。そのとたん煙になって消え、代わりに、手の中に竹簡が残った。
人影は、苔むした土の家屋に入ると、その場の一人の前で膝を折る。跪かれた男は、うやうやしく差し出された竹簡を掴み、パカリと広げて読んだ。
「やはりな」
「ギャズモルさま。伯爵さまは、いかにせよと仰せで?」
「シュベーラーさまは、証拠をお求めになられている……」
僅かな火で影を濃くする家屋の中に、小さなため息が漏れる。証拠とはつまり人間のことだ。呟かれた内容に乗り気でないのは、この場の共通認識らしい。
「はて。殺すのは得意ですが、生かして連れさるのは、ちと難問ですな」
「まあ、そう言うな」
別の影が、横から問い立てる。
「で、何人連れてけばいいの?」
ギャズモルは再度竹簡に目をやり、問いへの答えを捜す。
「・・・・・・多いほどいいが、最低でも二人」
ため息がどよめきに変わる。
「うちらの国まで、いったいどれだけかかると思ってんのさ。死なさず届けるなんて無理。それで責任なんか押し付けられるなんて、たまんない!」
感情に真っ正直すぎる意見を発する人物に、ギャズモルは細い視線を投げる。右手がそっと剣の柄にあてがわれた。
「バイグッドよ。面倒ならば、この場で責任とやらを果たしてやっても良いのだが?」
バイグッドと呼ばれた女の目が、ギャズモルの顔と剣に当てた手との間を忙しく行き来する。そのやり取りに、最初の人影がため息をつく。
「バイグッドさま。ここはご協力いただきたい。このバーンダルシからもお願い申しあげたく・・・」
バイグッドは、なおも少しばかりためらいを見せてから、諦めるように床に身体を投げ出した。
「わかった、わかったわよ。もう、圧力で脅すの反対ー」
すねる様に背を向けたバイグッドと、柄にかけた手を離るギャズモル。とりあえず、この場が丸く収まったのを見定めて、バーンダルシも肩の力を抜く。
「うむ。では皆の意見が快くそろったところで、会議といこうか。おお、茶がすっかりぬるくなってるな」
自らの気持ちを切り替えるように、ギャズモルが言葉を続ける。
「申し訳ございません。すぐに淹れ直します」
「ほれ、バイグッドも座れ」
「あぁーあ、ちゃちゃっと終わらせて、とっとと帰りたーい」
大きな切り株のテーブルの上に竹簡を置き地図を広げ、三人は、目的を達するための手はずを決めていくのだった。
これで、二章が終わりました。
三章は活動的になりそうです。
回収できないと困るので、風呂敷は小さくしてます。
それでも、キャラに振り回されている今日この頃・・・




