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6 訓練?


『そこじゃないって。もっと右によ右』

「こういう微調整ってムズイんだよね・・・」

『あー右過ぎるって・・・。うん、そこで固定してて。連続エアカッター!』


 次から次へと、空気を圧縮した鋭い刃が中に生まれてる。

 これのキレイなのが魔法か。間近でみるとすごいなぁ。

 この前は無我夢中で観覧どころじゃなかったからね。

 刃はシュッと音を立て、木々を間を抜けていった。

 わずかな時の後、幹から切断された枝々が地面へと落下していく。


バサッ、バサバサッ


『地面に降りて。こ、怖いからそっとね』

「ほーい」


 いま起動させているのは〔浮遊 1分につき 2〕だ。

 エネルギーゲージがまだ7割程度残っているのを横目で確認。地上から10mの高度を、じわりじわりと降下させていく。フェアのつま先が、地上に触れた。


『ふぅ~、やっと足がついた』

「まだこれからだよ。まだまだあるそうだから」


 ここは森に囲まれた林の中で、村から東に1時間ほど歩いた丘の上にある。伐採系の魔法が使える人たちがかき集められた、村人総出の事業だ。私もそこに強制参加させられている。フェアが約束していたんだと。

 案内された割り振られたエリアで、起立している木の枝を切り落としている、というわけだ。


 森へ行こうよと言われたとき、うっそうとした密林を想像した。しかし到着した場所の木々は碁盤の目状に並んでいた。札幌のビルのようだと思った。手入れが行き届いており下草が短く歩きやすい。

 歩いたのは、フェアだけど。


 それにしても木が高い。日本の杉の木は50mくらまで伸びるというけど、もっともっと高いんじゃね?

 木の天辺まで飛んでみたかった見たかったけど、フェアが怖がったのでやめにした。

 カットする位置は下の方なので、あんまり高く飛ばなくても用は足すんだけど。

 高い場所は大好きだ。どこまで昇れるのかも試してみたかった。

 そのうち、やってやろう。フェアを言いくるめて。


『ある高さまでの枯れ枝や生き枝を無くすことで、林を良好に育成してるんだ』


 リーゼライがなぜか自慢気。


「枝打ちでしょ」


 知ってるよ。子供の頃、地元にいたときは、じいちゃんに連れて行かれたし。

 異世界にきてまで借り出されるとは思ってもみなかった。

 ちなみに、成長の悪い木を間引く「間伐」は昨年やったらしい。


 林はどこまでも続いていて、終わりが見えない。

 地球ではチェーンソーで落としていた作業だが、ここでは魔法に置き換わっている。

 「夢と魔法の世界」の異世界のイメージが「勤労」という言葉で上書きされる。


 ゴブリンはどうした。

ダンジョンはないのか?

 訓練するって言ってたのに、言ってたのに!


「枝打ちって、労働ですよねー。魔物退治はどうしたの?」


 リーゼライ返事する。


『申し訳ありませんねモコト。村の林業発展に欠かせない大切な仕事なんです。すでに予定の9割が終わってるので、あともう少し。ぼくも、この後の訓練に付き合いますから』

「村の発展には木材が必要。わかった。はいはい、その通りです……」


 〔浮遊 1分につき 2〕をタップ。

 ほんじゃ、さくさくっと行こうか。

 

 身体を浮かす魔法には二つの方法があるらしい。エアブーストと、エアバーンだ。

 どちらも風の中級魔法だというが、元々は浮かすための魔法ではない。空気をぶつけたり破裂させて無理に身体を飛ばしているそうだ。一時的なジャンプなら難しくはないが、高く飛び上がったりずっと飛び続けようとするなら高度な技量だけでなく、とんでもない魔法量が必要だという。


 私の使っている〔浮遊〕は風魔法とは異なる。空中を飛ぶためだけに存在するのでムダが少ないのだ。

 効率の良さを見込まれて、普通の4倍に相当する作業エリアを申し付かった。2名の手伝いも加わってるが、理不尽だ。自慢して載せられた自分を叱りたい。


『べんりだね〜、怖いけど』

「便利だけど、エネルギーは無限じゃないのよ」

『それは、魔法も同じだよっ』


 フェアは元気だ。

 疲れる前に回復させているからね。


 私やこの世界の魔法のエネルギーになっているのは、マナと呼ばれてる不思議パワー。魔法使いは体内で生成できるというが、私には生み出せない。生み出そうにも体がないからね。周囲の空気から取り込んで貯めるのが唯一の手段。メニューのずっと奥のマニュアルには、そう書いてあった。マナが尽きれば、この前みたいに気絶する。


 貯められるマナには限界があるが、ウィルのレベルアップに従って上限が増えていくという。

 で、そのレベルアップの方法というのが「使えば使うほど」。そんなゲームがあったなぁ。繰り返し使うことでスキルアップみたいな。

 実にテキトウだ。


 しかしテキトウさはプラスにも働いてる。

 どのウィル魔法を発動してもレベル上げに貢献するのだ。何らかのメゾッドを常時発動してさえいればいいので、こうして〔浮遊 1分につき 2〕でフェアの枝落としを手伝っているわけだ。レベル上げするには、戦闘しなきゃってのがRPGの定石。命をかけて危険な戦いに挑まなくて良い点だけは、評価してもいい。


 一定量の魔法を使うとレベルが上がり、使えるメゾッドとマナの限界量が増える。〔浮遊〕メゾッドはボタンに表記されているように、1分の稼動でマナを2つ消費する。常時発動はマナも消費するが、レベルも勝手に上がっていく。退屈してもいるけど。


 いま展開できるツリーメニューを確認する。


■ 戦闘


〔物理防御〕

 〔衝撃対策 5〕

 〔熱対策 5〕

 〔毒対策 5〕

〔魔力防御〕

 〔水魔法対策 5〕

 〔風魔法対策 5〕

 〔火魔法対策 5〕

 〔土魔法対策 5〕

 〔光魔法対策 5〕

 〔闇魔法対策 5〕

 〔全魔法対策 30〕


〔範囲拡張 1mにつき 5〕



■ 常時

〔通話〕

 〔フェアバール・G 0〕

 〔周囲全体 1mにつき 1〕

 〔対象A 2〕

 〔対象B 2〕

 〔固有登録〕

  〔リーゼライ・S 1〕

  〔 〕


〔移動〕

 〔浮遊 1分につき 2〕

 〔瞬歩 10mにつき 5〕

 〔転移 500〕


〔地図〕

 〔オートマッピング 10mにつき 1〕


〔〕

〔〕


〔クラウドポーチ〕

 ※ アイテムの格納

   ウィルと対象者間の引渡し可能

 〔未作成 1000〕



■ 直接操作

 〔フェアバール・G 0〕


■ 遠隔操作

 〔〕


■ 追加効果

 〔風〕

 〔水〕

 〔火〕

 〔光〕

 〔闇〕

 〔毒〕

 〔 〕


■ 回復・修復

 〔フェアバール・G >画像〕


■ 所有魔石

 ※個数に応じて豪華景品プレゼント!

 〔白 0〕

 〔赤 0〕

 〔黒 0〕



 ボタンの色がグリーンならアクティベート可能。ブルーならすでに使える状態だ。いっぽう、使える可能性はあるけど条件を満たしていないのは、くすんだグレイになっている。〔魔力防御〕ならば〔闇魔法対策 5〕から下がグレイのままだ。

 それにしても、突っ込みどころがたくさんありすぎる。

 所有魔石の「個数に応じて豪華景品プレゼント!」ってなんだ?

 課長神が再登場して景品を渡しにくるのだろうか。

 遭いたくないが、非常に気になる。


 飛ぶために〔浮遊〕を使っているが、常時発動の〔オートマッピング 10mにつき 1〕もずっと持続させている。歩いた範囲に従って地図が広がっていく便利な機能だ。


 〔瞬歩〕はわかるけど〔転移〕ってなんだ。

 もしかすると、街から街に移動できるってアレか。ファンタジーだ。

 マナを500も使けど、いつかは挑戦してみたい。


 お。また、レベルが上がった。



 < MSG >


 アクティベート可能な魔法対策が増えました

 〔闇魔法対策 5〕

 〔光魔法対策 5〕


 遠隔操作が可能になりました

 対象を1つ選択できます

 マナの貯蓄限界が上昇しました

 休止中は大気マナ充填します


 < MSG >


 アクティベート可能になったメゾッドがメッセージに表示される。ゲームのような効果音はないし、「レベル○○」みたいな表示もない。だけども状態変化がわかるので十分に役立ってる。


 〔遠隔操作〕が使えるようになったかぁ。何かを自由に動かせるということだね。座りっぱなしに飽きていたところだ。格闘技をやってた身としては、自分で自在に動かせれば少しスッとするかも。


 フェアとリーゼが、新しい木の列まで移動する。

 少し離れた列からは、ばさばさっと針葉樹の枝を落とす音がする。

 あれは我が班の手伝い2人の仕業だ。


『残るは、この両列だけですね』

「ひとつ教えて。このノルマを決めたのは誰?」

『ぼくと村長です。もちろん』


 やっぱり。


 私に位置を指図したリーゼは、自分の列へと戻る。私達とは背中合わせの場所だ。カットするべき枝を見据えては、切断作業を繰り返す。リーゼは2つの魔法を同時に使うことができない。つまり、飛びながら魔法を放つことはできないので、一本づつ片付けて行ってる。


「枝を元から切り落とせ ウィンドカッター!」


 バサリと切ると、次の木に面して照準を合わせていく。迷いなくキレイに切断しては、どんどん進んでいく。

 リーゼ君と比較すれば、たしかに効率の良さは認めよう。私達のノルマは4倍だ。私達は2人だけど4倍。しっかり使われてますな。


『藻琴。あたしたちもがんばろ』

「ふぇ~っす」




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