壊れる僕と壊れた妹
登場人物
弘瀬 幸也 (17) ♂
穏やかな性格の男の子。誰にでも優しく接するその様が
学校の女の子には人気。言動が変である紗那の事も
少しオーバーだけど僕の事を大切にしてくれている、と
感じてしまったり、少し堅いところもある。
弘瀬 紗那 (16) ♀
兄である幸也の事が好きで仕方がない、仲睦まじい兄妹である
レベルであれば問題は無いが、それは一線を越えており
言ってしまえば狂愛である。
香野 遊子 (17) ♀
幸也に好意を抱く女の子。
中学の時と高校と同じクラスで、気にはなっていたが
高校の体育祭の時に救護テントに連れて行ってもらった時に
完全に恋してしまう。
旭 良彦 (17) ♂
幸也の親友。頭は少し悪いが、人気者。
本人は知らないが、よく家から幸也を引っ張っていくと言うのを理由に
紗那には嫌われている。
『』は心の声です
【】は電話です
幸也 ♂:
紗那 ♀:
遊子 ♀:
良彦 ♂:
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幸也 『僕の妹は壊れている。紗那が壊れているという事実に近づくにつれて、僕が壊れていったのも事実だった。中3の春まではそんなこと、なかったのに』
(中3春)
良彦 「おっ、幸也ー。来たな」
幸也 「まったく…僕を呼び出して一体なんだよー?」
良彦 「お前も、興味あるだろ? なぁ、ほら?」
幸也 「うっ…わぁぁぁぁっ…お…女の人が……」
良彦 「むしろこの年にもなって何も興味が無い方がおかしいっての、ほら。何冊かやるよ」
幸也 「えっ…でも…母さんたちにバレたら…僕もう学校来れないんだけど…」
良彦 「大丈夫大丈夫、これくらいの本15歳の部屋だろ? あっても不思議じゃねぇって。なら、いらねぇか?」
幸也 「いっ…いや…! も…貰うよ……その……僕も見たい…」
良彦 「オッケー、んじゃ…これと、これな」
幸也 『中3になって、正直なところ。性欲というものの概念が僕自身に生まれたことは自覚していた。実際そういった内容に興味がなかったかと言われたら、やっぱりあった』
紗那 「お兄ちゃん? 何してるのー?」
幸也 「うわぁぁぁぁぁっ! の、ノックくらいしろよ紗那!」
紗那 「そ…そっか…ご…ごめんなさい……何読んでるの?」
幸也 「え? あ…いや…その……別に……ほ、ほら! ただの雑誌だよ! な? わかっただろ! 出ていけって?」
紗那 「ぶー…そんなに嫌がらなくてもいいのに…私にも見せて! えいっ!」
幸也 「あぁぁっ! やめろっての!」
紗那 「こ……これって………」
幸也 『この一瞬が無ければ僕は近づかなかったかもしれない、妹が。紗那が壊れているのではないかという疑問に』
紗那 「お…お兄ちゃん…こういうの…興味…あったんだ……」
幸也 「……そっ…そりゃあ…僕だって男だから興味あるよ……もういいだろ……返してくれよ」
紗那 「あ……うん………その……お兄ちゃん…」
幸也 「…なんだよ? まだ…僕に用か?」
紗那 「そんなに見たいんだったら……見る…? そっ…その…私……そんな本に載ってる人みたいに大きかったりはしないけど…」
幸也 「さ…紗那…? お前、何言ってるんだよ…」(あきれるように)
紗那 「実物の方が……いいんじゃないかって…ね?」
幸也 「僕をからかうのもいい加減にしてくれ……それと、母さんたちには言わないでくれよ」
紗那 「からかってないよ、私。本気だもん」
幸也 『幼いころ一緒に風呂に入ることが多々あったのは覚えている、でもまさか中3にもなってまた一緒に入りだすことになるなんて。父さんと母さんが帰る前に入る、その日を境にできた僕たち二人だけの鉄則だった』
(中3の冬)
遊子 「やったー! 旭君も私も弘瀬君も番号あったよ!」
幸也 「! やったじゃん! これで高校でも一緒だね」
良彦 「余裕っちゃ余裕だったけどな」
遊子 「それ、旭君が言うの? ふふっ、受験対策のプリントほとんど真っ白だったのにー」
良彦 「う、うるっせぇな! べっ、べつに合格したんだからいいじゃねぇか!」
遊子 「そーうー? ならいいけど!」
良彦 「せっかくだ、久しぶりにこのまま3人でどっか遊びに行かねぇか?」
幸也 「おっ、いいね! 僕も賛成だ!」
遊子 「もー、すぐに気が抜けるんだから……賛成!」
良彦 「よっしゃ、じゃあ行くか!」
幸也 「あー、ちょっと待って! 家に電話だけするよ…………出るかな…?」
紗那 【もしもし? お兄ちゃん?】
幸也 【そうそう、僕だよ。受験、合格してたよ】
紗那 【そっか! やったぁ! じゃあ今すぐ帰ってきてお祝いしようよ!】
幸也 【それなんだけど、今から良彦と遊子とで遊びに行こうってなったんだ。だから帰りは夕方ぐらいになると思う】
紗那 【そ……そっか………うん……なるべく…早く帰ってきてね……お兄ちゃん】
遊子 「ほんと、紗那ちゃん。弘瀬君のこと大好きだもんね」
良彦 「だな、仲良すぎだぜお前ら! 良い兄妹じゃねーか」
遊子 「兄妹じゃなかったら結婚でもしそうな勢いだね、ふふっ」
良彦 「たしかにな、幸也は好きな奴とかいねぇのか?」
幸也 「そ、そうだな…特にこの人ってのはないかも…?」
良彦 「だってよ、遊子。チャンスあるんじゃねーか?」
遊子 「あ、旭君! そんな大きな声で言わないでよ!」
幸也 「ん? どうかしたの?」
遊子 「な、なんでもないよ!」
幸也 『そして僕が高1の冬、一歩手前で落ち着いていたのに、始まってはいけない関係がついに始まってしまったんだ』
紗那 「むー………」
幸也 「ここの三角形の合同条件はだな」
紗那 「もう疲れたよー…」
幸也 「お前が受験勉強したいっておしかけてきたから付き合ってるのに…僕だって寝たいんだからな」
紗那 「言っても8時に始めたのにもう11時半だよ?」
幸也 「それも、そうか…。わかった、今日はもう寝よう。ほら、出てった出てった」
紗那 「えーい」
幸也 「ちょっ…僕の布団だろ、自分の部屋で寝ろよ」
紗那 「嫌だ、お兄ちゃんの布団がいい」
幸也 「あのなぁ……風呂入ったり、これ以上の事が起こってて言うのもなんだけど…僕とお前は兄妹なんだ、その辺をちゃんと理解しろ?」
紗那 「なら…お兄ちゃんも一緒に寝ようよ」
幸也 「だから…自分の部屋で……あぁぁ…もう…いいよ、僕が1階のソファーで寝るから。風邪ひくなよ」
紗那 「あっ…ちょっとお兄ちゃん!」
幸也 「うぅ…やっぱり1階は寒いな…………? ……紗那!」
紗那 「ねぇ、お兄ちゃん」
幸也 「僕の部屋で寝てたはずだろ…? ちょっ…何してるんだよ紗那!」
紗那 「大きい声出すと、お父さんたち起きてきちゃうよ……」
幸也 「お、おい…! さっきの話聞いてただろ…、僕とお前は兄妹なんだ…!」
紗那 「今日は…大丈夫な日だから…ね?」
幸也 『兄妹相手にたったの一度でも持ってはいけない繋がりというものを僕は経験した。抵抗できなかったと言ったら嘘になる。どこか、紗那を認めている自分がいた気がした。父さんたちがいない時間が、僕たちのもう一つの接触の時間となり、気づけばおかしい行為という考えすらも消えてしまった』
良彦 「おっす、幸也。紗那ちゃん合格したらしいな?」
幸也 「えっ? あ…あぁ…うん、合格したって」
良彦 「よかったじゃねぇか、お前らほんとに仲いいんだからよ。並んで歩くと付き合ってるみたいだな」
幸也 「そうかな…? まさか」
良彦 「まぁでも、仲が良すぎたりってか。なんてーか。兄妹愛ってのが変な方向にならなけりゃいいんだけどよ」
幸也 「え?」
良彦 「なんか、紗那ちゃんお前に最近少しベタベタし過ぎてる気がしてよ。あぁいや、俺が紗那ちゃんに惚れてるとかじゃなくてだ」
幸也 「紗那が?」
良彦 「行き過ぎてたりすると、ゲームとかアニメみたいな話になるんだよなぁ。これが」
幸也 「げ…ゲーム?」
良彦 「そうそう、ヤンデレって聞いたことないか? まぁ、さすがに実際の世界に存在したらそりゃマジでヤバいとは思うけど」
幸也 「き、聞いたことないな」
良彦 「図書室のパソコン借りて調べてみろよ、うちは電子機器の携帯は禁止だからなぁ」
遊子 「何か調べものしてるの? 弘瀬君」
幸也 「あぁ、いや! その…ちょっとね…」
遊子 「ヤン…デレ?」
幸也 「そ、そうだよ。ヤンデレって言葉を調べてたんだ」
遊子 「ゲームとかにあるやつでしょ? 主人公の事が好き過ぎて周りの女の子を殺しちゃったり、とか…あとは主人公の事を監禁したりーとか…? そんな感じのヒロインの事を指すんだっけ?」
幸也 「そ…そんな感じ…みたいだ…ね…」
遊子 「まぁ、それは仮想の物語の話だもんね。ふふっ、なんか意外。弘瀬君がそんな事調べてるなんて」
幸也 「う…うん……僕も…ちょっと……興味があった…だけだから……うん…」
遊子 「興味って、弘瀬君に対してそんなに好意を抱いてる女の子がいるって事?」
幸也 「え? あぁ…いや…ただの興味だよ、ほんとに。そんなことないない…」
遊子 「そうなんだ…何か少し安心したかも…」
幸也 「…? 何が…?」
遊子 「なんでもー!」
幸也 「あれっ…おかしいな…世界史の教科書が無い……紗那の部屋にあるかな……?」
紗那 「何してるの? お兄ちゃん」
幸也 「あぁっ、いや。世界史の教科書が見当たらなくてさ…。紗那のを借りようと思って」
紗那 「部屋に入るの?」
幸也 「そうそう、ちょっと貸してくれ」
紗那 「待ってね、探してくるから」
幸也 「僕も探すよ、一緒の方が早いだろうから」
紗那 「ダメ、待ってて」
幸也 「僕の部屋に散々入ってるんだからいいだろ、な?」
紗那 「ダメ!!!!!!!!」 (豹変して激怒するような感じ)
幸也 「そ…そんなに怒らなくてもいいだろ……悪かったよ……じゃあ…待ってるから」
紗那 「………うん、待ってて」
幸也 『僕は気になった。あそこまで紗那が僕を部屋に入れてくれない理由を。紗那が留守の時に見てみよう、僕はそう決めた』
幸也 「よし……入るぞ……紗那は今日は帰りが遅いはずだ………なんだよ……これ……え…? ちょ…っと……待て…よ…。どうして…僕が捨てたゴミが……? …! これは…僕が破れたからって捨てた下着……さ…紗那……? 」
紗那 「何してるの? お兄ちゃん」
幸也 「!? ……さ……紗那………? ど……どうして…お前が…ここに居るんだよ…」
紗那 「お兄ちゃんが早退したから私もそうしたの……お兄ちゃん…入らないでって…言ったのに……」
幸也 「お…おい……紗那…その…カッターは…何を…」
紗那 「こんな私…嫌いだよね…そうだよね…ごめんなさい……嫌われて当然だよね…おかしいもんね…お兄ちゃんに嫌われるくらいだったら…私は…死んだ方がマシだから…」
幸也 「ま、待て紗那!」
紗那 「離してよ! 離してってば! お兄ちゃん!」
幸也 「僕を見ろ!」
紗那 「……ぐすっ……何…」
幸也 「たしかに…驚きはしたけど……別に…僕はこんなことでお前を嫌いになったりはしないよ…」
紗那 「ほん…と……?」
幸也 「あぁ……本当だ」
紗那 「よかった………お兄ちゃん大好き……」
良彦 「ヤンデレの意味、わかったか?」
幸也 「あ…あぁ。すごい怖かったよ…」
良彦 「だろ? 一度好かれちゃうと、その子以外を好きになったりしてみろ? 殺されちまうぞ…」
幸也 「そっ、それはゲームとかの話だろ…? どうして僕がそうなるんだ」
良彦 「からかってやっただけじゃねぇかっての」
幸也 「ま、まさか。紗那はそんなことしないよ…」
良彦 「まぁ、それが普通の兄妹だよな。当たり前だ」
幸也 『僕と紗那に兄妹の一線を越えた関係があるなんて絶対に誰にも知られてはいけない秘密だった』
良彦 「そういや、幸也」
幸也 「えっ? あっ、あぁぁぁぁ。うん? どうしたの?」
良彦 「あんまりボサッとしてんなよ? 明後日体育祭じゃねぇか! 気合入れてかねぇと…だろ?」
幸也 「そっ、そうだったな! OK! 任せろ!」
良彦 「お前の俊足に期待してっからな!」
幸也 『そして体育祭。僕にとって人生最大の喜びと不安が同時に押し寄せた出来事が起きた』
良彦 「オォイ遊子! 大丈夫かよ!」
遊子 「っ…いたたたたた……」
幸也 「遊子! 大丈夫…? 立てる…?」
良彦 「幸也、テントまで連れてってやれよ。ほら、遊子も立てなさそうじゃねぇか」
遊子 「あ…旭君! そ…その…いいかな…弘瀬君?」
幸也 「もちろん。………はい、僕がおぶってくよ」
遊子 「ご…ごめんね…私…重いかも…」
良彦 「重くても絶対に重いなんて言うんじゃねぇぞ、幸也!」
遊子 「旭君!」
良彦 「ハハハッ」
幸也 「大丈夫大丈夫、小学校のころから何度も何度も紗那の事おぶってやってたから慣れてるよ」
遊子 「ありがとう、弘瀬君」
幸也 「いいよ、全然。足の方は大丈夫?」
遊子 「まだ痛いけど…しばらく冷やせば大丈夫だと思う……」
紗那 「お兄ちゃん!」
幸也 「そっか、良くなるといいね…って、紗那…! どうした、そんなに慌てて」
紗那 「お兄ちゃんがテントに行ったって聞いたから…」
遊子 「私をテントまでおぶってきてくれたの、弘瀬君が怪我したわけじゃないから」
紗那 「そ…そう…ですか……」
幸也 「そうだぞ、僕は怪我してないから。ほら紗那、もうすぐお前の種目だろ」
紗那 「………う……うん……み、見ててね。ちゃんと」
幸也 「わかったわかった…」
遊子 「本当に、仲がいいんだね」
幸也 「そう……なの…かな…」
遊子 「本当だよ、でもやっぱり安心した…!」
幸也 「…なにが? 紗那の事?」
遊子 「私ね…弘瀬君の事が好きだったの」
幸也 「えっ!? ぼ、僕が!?」
遊子 「そう。中学ぐらいの時からかな…ふふっ。誰にでも優しくて、女の子にも人気があって…敵が多いだろうなって感じてたけど…やっぱり言わないとスッキリしなくて」
幸也 「そ…そうだったんだ……ありがとう…!」
遊子 「ほら、はたから見たら紗那ちゃんと弘瀬君って付き合ってるように見えるし…仲もいいし…それに紗那ちゃんすごく可愛いし…私が自信なくなりそうなくらいだったもん」
幸也 「付き合って…る…か…」
遊子 「でも、兄妹だからそれはありえないじゃない? だから安心したって事…かな…。弘瀬君、ううん…幸也君。これからは…その…と…友達じゃなくて…一人の…女の子として……ええと……ああもう! いいや…! 私と、付き合ってください…!」
幸也 「…! …そんなの…こちらこそだよ…! 遊子はみんなに気を遣う事が出来てすごく落ち着いてて、僕からも憧れた存在だったんだよ…!」
遊子 「幸也…君…」
幸也 「遊子………。!?」
遊子 「どうか…したの…?」
幸也 『さ…紗那……』 →(心の声から帰還)「え? あ…いや…なんでもないよ…」
紗那 「お兄ちゃん………私…すごく寂しい…」
良彦 「めでたくカップル成立ってな、こいつら~!」
幸也 「ははっ…ありがとう」
遊子 「次は旭君の番だね」
良彦 「俺はまだまだ自由に生きるぜ!」
幸也 「いつだって良彦は自由じゃないか!」
遊子 「間違いないかも?」
良彦 「ハッハッハッ……え?」
幸也 『遊子と付き合い始めても、僕と紗那の影での接触は止まらなかった。間違ったこと、良くない事であるという事はわかっていた。背徳感を感じていても…僕はやめられなかった』
遊子 「明日の日曜の昼…空いてる? 幸也君」
幸也 「? 全然大丈夫だよ」
遊子 「なら、一緒に映画…見に行かない?」
幸也 「! いいね! 行こう行こう、」
遊子 「よしっ、決まりだね。立花ドーナツの前、11時に待ち合わせね!」
幸也 『そして今日。僕はついに壊れてしまった』
紗那 「お兄ちゃん、どこに行くの?」
幸也 「……遊子と映画を見に行くんだよ」
紗那 「行かないでよ……私…すごく寂しい…」
幸也 「なぁ…紗那……」
紗那 「何…? お兄ちゃん」
幸也 「もう…やめないか…?」
紗那 「……何を…?」
幸也 「わかってるだろ……僕たちは…僕たちは兄妹なんだ……待ち合わせに遅れる…続きは夜に話そう…」
紗那 「待って!」
幸也 「なんだよ……! 言っただろ…! もうやめようって…!」
紗那 「どうして…何を…!? 何をやめるの…!?」
幸也 「……僕たちの繋がりをだろ…兄妹関係なんかじゃない…男と女の関係だよ」
紗那 「私はこんなにお兄ちゃんが好きなのに…どうして…!」
幸也 「だから言ってるだろ! 僕たちが何を言ったところで許されないんだよ!」
紗那 「そんなの平等じゃない…! 私にだってお兄ちゃんを好きになる権利はある!」
幸也 「僕たちの言い合える好きという言葉の意味には限度があるんだ…!」
紗那 「そんな……ひどいよ……」
遊子 「遅いな…幸也君…電話…かけてみよう…」
幸也 「もう…本当にやめよう…僕も悪かったんだ……。! 電話だ……待ち合わせの時間過ぎてる…! もしもし!」
遊子 【もしもし、幸也君? 大丈夫? 時間になっても来ないから心配しちゃって】
紗那 「香野さん? 香野さんだよね……今話してるのは私でしょ! ねぇ!」
幸也 「あっ、電話が! おい! いい加減にしろって言ってるだろ…! 紗那…、お前と僕はむすばれちゃいけないんだよ!」
遊子 【もしもーし! 幸也君! おーい! 聞こえてる? 今すごい物音したけど】
紗那 「私は…私は…! お兄ちゃんがいないと生きていけないの! いないと…寂しいの…」
幸也 「紗那……お前……」
遊子 【幸也君! おーい!】
紗那 「周りの誰かに気持ち悪いって言われてもいい、お父さんやお母さんに娘って思ってもらえなくてもいい…! 脅しなんかじゃない…お兄ちゃんが…誰かと結ばれるくらいなら…私は…死んだ方がマシ」
幸也 「カッター!? さ…紗那…! やめろ!」
遊子 【そこにいるの紗那ちゃんだよね? おーい!】
紗那 「私はお兄ちゃんだけが良いの、お兄ちゃんを愛してるから……ずっと…一緒にいたいの…」
幸也 「………もしもし」
遊子 【あっ、やっと聞こえた! 幸也君だいじょ-】
幸也 【ごめん、急用ができちゃって】(台詞にかぶせて)
遊子 【えっ? 急用、どうし-】 (電話切られる)
紗那 「…お…お兄ちゃん……!」
幸也 「…………おいで」
紗那 「大好き……お兄ちゃん…ずっと…ずっと…一緒…」
幸也 『僕は妹に恋をした』
終