第1話.普通から異常へ
「それじゃあお母さん、行ってくるね!」
「希…元気でね?何かあったらすぐ電話するのよ…?」
「大丈夫だよ!三年間といっても普通の学校だからさ!」
「そう…ね、じゃあね希。いってらっしゃい…」
「うん…いってきます!」
そう力なく微笑み母は私に手を振ってくれた。
ずっと笑顔を見せていたがもちろん実際は寂しい。家族と三年間会うことができなくなるのだ、寂しくないはずがないだろう。
私は『異人』だ。
それに気づいたのは小学生の高学年くらいの時だ。
でも特に気にしなかった、私のは隠しやすいので普段の日常で困ることはなかった。
周りの友達も仲良くしてくれていた、虐められるのではないかと思っていたこともあったがみんな自然に接してくれていた。
それは中学生になってもだった。
ただ私だけは受験はなく進路は決められたものだったが…
『那由多学園』
今日から私の通うこの学校は私のような異人たちを教育するといっていたが…
どうせ学園とか言っておいて本来の目的は私たちの監禁に違いない。
「はあぁ……やだなぁ」
重い溜息が出る。
正直怖い。
頭の良し悪し関係なく異人である人が強制的に集められるのだ。
何か実験とかさせられるのかも知れない…そうじゃなくとも学園生活自体が不安しかない。
そんなことを考えていると正門の前に着いた。電車で2駅、初めて見たが…中々に立派だ。寮も大きくいろんな設備があるらしい…
「君、この学校の入学生か?」
「あっ、はい!」
正門の前にいた警備員に話しかけられた…その時私はちらっと見てしまった。
警備員は銃を装備していた。
いつでも撃てるようにしている…やっぱり私たちは恐れられる存在なんだろうと実感される。
ー私たちは普通になれないのだ
「そうか、ならこの先まっすぐ行ったところに体育館がある。そこへ向かいなさい」
警備員は笑顔ひとつ見せずに語りかけてくる。距離を少し置いて語りかけてくる。
「はい…」
小さく頷いて私は那由多学園へと足を踏み入れた。
そして私は複雑な思いのまま体育館へと向かった。
そこで様々な出会いが待ってることはまだ知ることもなく…。