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55. 入学試験 3

本日3話目です。


 爆発のあった建物のもとにアランがかけよると、既にそこには若干の人だかりができていて、遠まきに様子をみまもる野次馬で騒がしい状態になっていた。

 アランはそんな人だかりのややうしろにある植木に近付き、その幹に自然な体勢で背を預ける。


「中の状況は?」

『爆発があったのは3階の西側にある部屋です。お嬢様と試験官らしい人たちが数人。お嬢様は大丈夫みたいですけど、試験官の一人が気絶していて、その介抱にあたっているようです』


 独り言にも見えるアランの疑問に返答を返したのは、《影遁》で先行し、建物の中の状態を把握していたルナだ。

 ルナの報告を聞き、アランがほうとひとまず安心の息をはく。


「お嬢様に怪我は?」

『めだった外傷はありませんでした。無事です』


 アランは走っている途中に、いつの間にか姿を消していたルナの行き先を察し、木に投げ掛けられた陰を通して、影の中にいるであろうルナから目立たずに情報を得ようとしたのだ。

 そして実際、そこにルナはいた。

 二人が走りだしてからアランが木陰に話しかけるまでの間、二人のあいだに一切の会話はなく、お互いがお互いのできる最善を考えて行動した結果の、見事な連携であった。


「お嬢様に危険がおよぶ可能性は?」

『爆発の衝撃で天井の一部が崩れる可能性がなくもない、くらいです。なんにせよ、あんな爆発のあった部屋にお嬢様をそのままにしてはおけませんね』

「当然だ。ルナはもしものときのお嬢様の保護を頼む」

『わかってますとも』


 それだけ聞くと、アランは寄りかかっていた植木から背を離し、早足で建物の中へと向かっていった。



 * * * * *



『ルナはもしものときのお嬢様の保護を頼む』

「わかってますとも」


 そう答えて木の陰から離れたルナは、再び深い影の中に身をしずめながら、ほうと安心の溜息をついた。


 じつはルナは、自身の判断で《影遁》を使って先行し、建物の中を把握したはいいものの、いざそれをアランに伝えようと思っても、想定よりも人が集まってきてしまっていて、影から出るにでられなくなっていたのだ。

 学院側に怪しまれるのを覚悟で、建物内で合流しようかとも考えていたが、アランが察して行動してくれたおかげで正直助かった。


 ルナの頭上では、アランが「どいてくれ!」と声を上げながら建物へと向かっているところだ。それを聞いた野次馬たちが、みな一様に驚きを交えた顔でアランに道を開ける。

 そのうちの相当数が「なぜ自警団がこんなところに?」というような疑問をしているものだから、自警団の存在が王都の住民のあいだにどれだけ浸透しているかがわかろうというものだ。


(さて、私も私の仕事をしましょうか)


 そう思考して、ルナは言われた役割をこなすためメアリのもとへと移動をはじめた。



 * * * * *



「……ごめんなさい」


 帰りの馬車の中で、めずらしくしょんぼりとした様子のメアリに、御者台から元気付けるようにアランが声を掛けた。

 メアリはメアリで、入学試験に来ておきながら学園のものを壊してしまったことをそこそこ気にしているらしい。


「お嬢様のせいじゃないって。気にするだけ無駄です」

「アランさん、あまり気にしなさ過ぎるのも問題なので少しは叱っておかないと駄目ですよ」

「こういうことに叱るのは婦長の仕事だろう。俺の仕事じゃない」

「……なるほど、確かに」


 結局のところ、メアリには甘い従者二人なのであった。



「……ではお嬢様、屋敷へ戻りましょう。当主様がたがやきもきしながら結果を待っていますよ」

「結果が出るのはまだ当分先でしょう?」


 とは言ってみたものの、ジェフィードたちならばさもありなん、と思い直して諦めたように肩を落とす。

 メアリは気持ちを切り替えるようにかぶりをふった。


「……確かに、わたしがいろいろと気にしていても仕方がないわね。帰りましょう、我が家へ」

「まあ当主様に報告はするんですけどね」

「…ルナ!?」

「実際、弁償なんてことになったら払うのは旦那様たちですもんね」

「アランまで! ひどい!」


 御者台で手綱をにぎるアランが合いの手を入れると、メアリは大げさに驚いてみせたが、こらえきれなくなったようにクスクスと笑い声が漏れる。


 そんななごやかな雰囲気の中、一行は帰路についたのであった。




過去に書いた設定をまるっとコピペした部分もあるので、どこどこの文章がおかしい等の指摘がありましたら教えて下さい。

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― 新着の感想 ―
[一言]  2017年。。。 修羅場。。。   うーん。。。  続き 読めますように。。。
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