five
屋敷に着くと、エメラルダは男をクラシックソファーに下ろすよう指で精霊達に命じた。
すると、男はゆっくりとソファーに沈んで行った。
「はぁ……めんどくさいものを拾ったわ」
そう言いつつも、台所に向かうエメラルダ。そして、フードを目深く被り、パチンッと指を鳴らす。
すると、辺りの電気が勝手に消え、部屋は薄暗くなった。
その数時間後。パチッと男が目を覚ました。
「ここ……は……?」
男は、ぼんやりした頭で重い体を起こし辺りをキョロキョロと見回した。
見たことのテーブルに、暖炉、塗装が剥がれている壁には古い本棚や絵画などがあった。
「誰かの家か?……まさか!」
男は膝に手をつき立ち上がる。そして、部屋を出て廊下に出ると何やらブツブツと何かを唱える声が聞こえてきた。
(なにかを唱えているのか?それとも独り言なのか?正直よくわからないが……)
男は、声のする方へと恐る恐る歩いて行く。扉が微かに開いていたので、男はその隙間から中の様子を窺った。
部屋は薄暗くてよく見えないが、そこに誰かがいるということだけは男にはわかった。
「あれが、例の魔女なのか……?」
暗くてよく見えず、扉に手を付けもっと近くで見ようとした途端、ガタンッと、扉が何かにぶつかった音がした。
「……っ!やばっ!!」
男は冷や汗を掻く。そして、背を向けて何かを唱えていた者が、突然ピタリと静かになった。
その者がゆっくりと男の方を向く。男はゴクリと口の中の唾液を飲み込んだ。
逃げようにも、ここで逃げるわけにはいかず男は緊張した面持ちでその者と向き合った。
そして、目が合った。
男は、魔女だと思っていた人物の正体を目視すると口をあんぐりと開けた。
「なっ……!?こっ、これが……魔女?」
「これ、とは何よっ!失礼ね!!私は、ちゃんとした魔女よ!!」
エメラルダがパチンッと再び指を鳴らすと、部屋の電気がつき辺り一面明るくなった。
男は、明るくなって先程までハッキリとわからなかったエメラルダの顔を見ると、またポカンと口を開けた。
エメラルダは目深く被っていたフードを取る。すると、髪がシュルシュルとフードから垂れ流れた。
「お前……本当の本当に魔女、なのか??」
「むっ!だから、そう言ってるじゃない!呪い殺すわよっ!?」
「うわ。ひでぇ、やっぱり、魔女だ……」