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four

 ✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼


 アランが座っていた椅子に腰掛け、エメラルダは薄暗くなっている空を窓越しに見上げながらアランを助けた時の事を思い出していた。


 薬草を採る為に森へ出かけたエメラルダは、ふと、森の精霊がざわついているのに気がついた。


(また、人間が来た……)


 エメラルダは顎に手をやると「うーん」と、考え始める。


(いつもなら無視してるけど、こうも興味本意で入られると癪に障るのよねぇ)


「よしっ!」


 その人間を少し脅かしてやろうと思ったエメラルダは、精霊がざわついている場所に向かったのだった。

 エメラルダが「さぁ、脅かすぞ!」と、思った矢先に目撃したもの――それは、うつ伏せに倒れている男だった。


「あ、あれ……?」


 エメラルダは、恐る恐る倒れている人間の傍まで歩み寄ると、地面に落ちている小枝を拾いツンツンと男をつつく。


「…………」


 男の返事はない。どうやら意識を失っているらしい。

 そこで、エメラルダは再び考え始めた。


(助けるか否か……うーん……)


「でも、助けてもねぇ。また、釜戸なんかにぶち込まれたりしたら嫌だし……そもそも、もう人間なんかと関わりたくないし。かと言って、見て見ぬ振りをするのも……こう、胸が痛いというか……寧ろ、その後が恐いというか……うーん」


 一人でブツブツと呟くエメラルダ。

 そして、エメラルダは遂に決心をした。


「よし、見てなかった事にしよう!!」


 勢いよく後ろを振り向き、来た道を引き返そうとした時だった。

 ガシッと、足首を掴まれたのだった。

 誰とは言うまでもないだろう。何せ、この『深き森』にはエメラルダと生き倒れている人間しかいないのだから。

 エメラルダは無言で足を上下に振る。何とかして掴まれている足を開放しようとした。


「ぐっ……こ、このっ!このこの!」


 しかし、手は全然これっぽっちも離れなかった。


「なっ、なんていう力……そして、ある種の自己防衛なの……」


 エメラルダは呆れながらも今だに気を失っている男を見る。そして、ついに根負けすると溜め息を吐き、吐いた分の息を少しだけ吸い呪文を唱えた。


「森の精霊よ聞いておくれ。風の精霊よ手を貸しておくれ。我は黒き魔女エメラルダ。森よ風よ我に力を……」


 エメラルダがそう唱えた瞬間、森の木々はザワザワとザワつき、強い風が吹いた。

 男はエメラルダから力なく手を離すと、男の体はエメラルダの腰の辺りまでふわっと浮いたのだった。


「はぁ……」


 エメラルダは、また溜め息を吐くと、自分の屋敷へと歩み始める。その後に続いて気を失っている男は宙に浮いたまま、エメラルダの後ろをゆっくりとついて行ったのだった。

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