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two

 エメラルダは棚に陳列されている中から空のガラス瓶を手に取ると、鍋で煮込んでいた物を木で出来たお玉で(すく)い空の瓶の中に入れた。

 すると、茶色かったドロリとした物が瓶の中に入れた瞬間、真っ白なクリーム状へと変化した。

 アランは感心するように瓶の中を見る。


「いつ見ても不思議だな」

「当たり前じゃ。私が作ったものだぞ」

「まぁ、それもそうなんだけどさ」

「ほれ、持って帰れ」


 押しつけるように瓶をアランに渡すエメラルダ。

 アランは微笑みながら「いつも、有り難う」と言うと、エメラルダはアランから顔を逸らした。

 アランは、思い出したかのように「あ、そうだ」と、言った。


「これからさ、デートしない?」

「はぁ!?」


 唐突に言うアランにエメラルダは驚く。


「なっ、なに言ってんの!?」

「何となく」

「こ、と、わる!」

「えー」

「えー、じゃない!!私は、もう人間と関わりたくないの!わかる?!魔女の中で私だけ……私だけが!宴に参加されなかったり。ちょ~っと羨ましいから悪戯してやったら、仕返しだとか言って、赤くなるぐらい熱くなった靴を履かされそうになったり……くぅっ!」


 エメラルダはその時のことを思い出したのか、唇をかみしめ恐怖で震える肩をさする。


「まぁ、それは……うん……」


「自業自得だろ……」と、アランは心の中で思ったが口には出さなかった。

 アランは気を取り直してエメラルダを誘う。


「でもさ!ほら、あれから何千年も経ってるんだから。もう、大丈夫だって」

「い、や!絶対に嫌っ!!人間なんて信用出来ないっ!」


 エメラルダは目を閉じさらに昔を思い出し、語り始める。


「そう、あの時もそうだった。姫をちょっと眠らせただけで怒り狂った国王から逃れて数十年後のあの時……。森の中で生き倒れていた子供を趣味で作っていたお菓子の家に招いて、お腹を空かせていたから色々食べさせてあげたっけ……あげたのにぃ~っ……!!」

「釜戸の中に入れられたんだろ?」

「そう!!あの時は驚いたっていうものじゃないわよっ!死ぬかと思ったわ!!少し、脅かしてあげようかと思っただけなのに……くっ……」


 エメラルダは拳を強く握る。


「酷いわっ!あれが、お菓子専用の炎じゃなかったら死んでたのよ!?というか、あの子達怖かったから、死んだフリしたわよ!!」


 アランは溜め息を吐き、傍にあった椅子に腰掛ける。それからも、エメラルダはグチグチと昔の思い出をふり返って、悔しそうに語り、時には涙し、怯え、自分の世界へとトリップしていた。


(こうなったエメラルダは長いんだよなぁ……)


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