表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/22

one

 薄暗い森の薄暗い屋敷の中で、女はフードを目深く被り、沸たくる鍋を不気味な笑みを浮かべながらかき回していた。


「全て滅びよ……滅びよ……」

「おーい」


 外から若い男の声が聞こえてくるが、女はそれを無視し鍋を回し続ける。

 鍋の中は、茶色くドロドロとしていた。


「慈悲などはいらぬ……慈愛などは存在せぬ……」

「おーいってばぁー」

「滅びよ……滅びよ……」

「もう、いいや。お邪魔しま~す」


 男は屋敷に入り廊下を歩くと男は電気をパチッとつけた。


「また、そんな事してるのか?」

「滅びればいい……ふふふ……」

「て、無視かよ。お~い、エメラルダァ~?」


 女の後ろから鍋の中を覗き込むよう名前を呼ぶ男。

 すると、エメラルダと呼ばれた女はピクリと反応した。


「う……」

「う?」

「う、る、さ、い、わ、ね!!」


挿絵(By みてみん)


 バッとエメラルダは男の方を振り向くと、目深に被っていたフードを取った。

 すると、フードに収まっていた真っ黒な長い髪がふわりと腰まで流れ、菖蒲色の大きな瞳が睨むように男を見つめた。


「毎回毎回、なんなの貴方?!」

「だから、俺はアランだって名乗って……あ、見た目の割に、やっぱり中身はあれなのか……?」

「知っとるわ!名前を聞いたのではない!それに、なにさらりと失礼な事を言っている!」

「あぁ、すまんすまん」


 ははっと、笑いながらエメラルダの小さな頭に手を置くアラン。


「子供扱いもやめい」

「つれねーなぁ」

「ふんっ」


 腕を組んでそっぽを向くエメラルダは、アランを横目で一瞥する。


「で、今日は何の用じゃ?」

「ん?」


 アランはニコリと微笑むと「塗り薬を貰いに♪」と、言った。

 エメラルダはポカンとした表情になる。


「はぇ?……塗り薬??」

「うん、そう」

「いや……あの……それこの前渡しました、よね?」

「あれ?急に敬語?敬語も可愛いから、俺としてはどっちでもいいんだけどね♪」

「話を反らないで!」


 バンッと近くにあったテーブルを叩くエメラルダにアランな謝る。


「あー、はい。すみません」

「で、もう無いの?無いの?!」


 アランは黙ったまま頷いた。

 エメラルダは額に手を当てると、ふらりと倒れそうになる。


「あ、あり得ないわ……そんな、直ぐに無くなるなんて」

「ほら、俺ってこの森でも生き倒れるぐらいだから。てへっ♪」


 黒鳶色(くろとびいろ)の髪を無造作に掻くアランは、瑠璃色の瞳を細めて笑っていた。

 それを見たエメラルダは、またそっぽを向いた。


「笑うな!そもそも、どうしてそんなに傷が出来るか、私には理解不能だわ」

「ん?ん~……まぁ、ねぇ。ははは」


 曖昧な返事でアランはまた笑った。

 それがエメラルダには何となく心にモヤが出来るみたいで、不愉快に思えたのだった。


「………ふんっ。そこで待っておれ……」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ