魔女と哀れな人魚姫(END)
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その後、エメラルダは何日も人魚の女の子を水晶から見ていた。
声の出ない姿に心配した姉達に、女の子が文字で事の成り行きを伝えたり……溺れている風を装って、青年の侍女として仕えていたり。しかし、幾日経っても女の子は青年に想いを伝えることができなかった。
――そして、それは余りにも切ない悲劇となったのだ。
そう。それは、女の子が侍女になってから数週間後のことだった。
女の子が助けた青年と、助けてもらった相手だと勘違いをした人間の見知らぬ女の子が結婚をする事になったのだ。
「…………」
エメラルダは、その一部始終をジッと水晶から見ていた。
哀しみに暮れた人魚の女の子は、夜、青年の寝室にこっそり入り、姉に貰った銀のナイフで心臓を突き刺そうとした。
その手は、微かに震えている。しかし、最後までそのナイフが心臓を突き刺す事はなかった。
人魚の女の子は涙を流す。
エメラルダは、水晶から女の子の心の声を密かに聞いていた。
(……出来ない。私は……この恋が実らなくても、この方を愛している。愛する人を殺すことなんて……できないわ)
女の子は、そう心の中で言うとナイフを持って青年の寝室の窓に手をかけた。
窓を開けると、下には広い広い海へと繋がっていた。
女の子は、涙を流しながら深く眠っている青年を見る。
(さようなら)
声も出ない口で言うと、女の子は海に身を投げてしまった。
そして、最後は静かに泡となり海の一部となったのだった。
エメラルダは、水晶の前を手でスーと横切ると、水晶は光を失い何も映さなくなった。
エメラルダは「ふぅ……」と、小さな溜め息を吐く。
(哀れで馬鹿なお姫様……)
心の中でそう思いつつも、エメラルダは何もない天井を悲しげな瞳で見上げたのだった。
END




