魔女と哀れな人魚姫(Ⅱ)
「でも、それには願いと引き換えのものがいるわ」
「引き換えのもの?」
「えぇ。そうねぇ……貴女のその美しい声がほしいわ」
「私の、声……?」
女の子はそう呟くと、自分の喉にそっと触れる。
「わかったわ」
女の子はコクリと頷いた。
エメラルダは、誰もが魅了されると言われている人魚の声を手に入れられることに内心喜んでいた。
エメラルダは嬉しそうに水晶を見つめる。
「では、その願い聞き入れました。さぁ、陸に上がるといいわ。そのままでは、溺れてしまうわよ?」
女の子は、また頷くと陸へと泳いで行った。
そして、山となっている大きな岩へと隠れる。
「さぁ、いくわよ」
エメラルダはそう言うと、小さな言葉で呪文を唱えた。
すると、陸に上がっている女の子の足はみるみると人間の足になっていった。
「さぁ、これで大丈夫」
「……人間の足だわ」
女の子はそっと自分の足に触る。足は長くて細い綺麗な足だった。
「さぁ、口を開いて」
女の子は小さく頷くと、口を小さく開けた。
エメラルダは、また呪文を唱える。すると、女の子の喉が淡く光りだし、喉から小さな光の粒が出てきた。
そして、それは女の子の目の前で消え、エメラルダの水晶からスーと現れる。エメラルダは、その小さな光の粒を透明な硝子瓶の中に入れ封を閉じた。
「確かに足の引き換えの声は貰ったわ」
女の子はパクパクと魚のように口を開いたり閉じたりしている。どうやら、何かを伝えているらしい。
勿論、エメラルダは心の声を聞いているから、女の子の伝えたいことなどは直ぐに解る。
(有り難うございます。魔女様)
「どう致しまして。美しいお嬢さん」
エメラルダは、水晶越しからにこりと微笑んだ。
そして、女の子に大事な事を三つ伝えた。
「貴女に、大事な事を三つ伝えるわ。一つ目。人魚の貴女には、きっと人間の足は大きく負担がかかるわ。海にいる時と違って、自分の足で身体を支えるのだから、歩く度に足の裏は痛むでしょう」
「…………」
「そして、二つ目。貴女が、自分の想いを彼に打ち明けられなかった時、貴女は泡となり永遠に海の水となるわ」
女の子は、少しだけ眉を寄せる。
それでもエメラルダは最後の三つ目を女の子に伝えた。
「三つ目。これは、元の足に戻す方法よ。それは、あの青年の心臓の血を足に塗ること」
「!!!」
その言葉に、女の子は酷く驚いた。そして、ギュッと胸の上から両手を握った。
「さぁ、大事な事は伝えたわ。後は、貴女次第」
そう言って、エメラルダは女の子に語りかけるのを止めた。
しかし、エメラルダは女の子の様子を止める事だけはなかった。




