seventeen (END)
「……ん……ううん……眩しい~」
「おはよう、エメラルダ」
「うーん?……うん……おはよう……」
まだ眠たそうな目を子供みたいに擦るエメラルダ。少し寝ぼけているらしい。
そこで、エメラルダはようやく我に返りハッとした。
「はっ!!アラン?!もう、大丈夫なの?!」
エメラルダはアランの両肩を掴む。
「あ、あぁ、大丈夫だ。だから、落ち着け」
「そっ、そう……」
アランの顔色が良くなり、ほっと安堵の息を吐くエメラルダ。
フォルスは、そんな二人に気を遣い小さく頭を下げると静かに部屋を出ていった。
アランはフォルスが部屋を出るのを見送るとエメラルダを見る。
「ていうか、エメラルダ」
「なに?」
「今……俺の名前を呼んだ、よな?」
「え?う、うん……」
それが何?という顔をして、首を傾げるエメラルダにアランは心なしか嬉しそうに呟いた。
「初めて、名前を呼ばれた……」
「え?」
アランはニヤける口元を何とか抑えこむ。
「あ、いや。初めて名前を呼ばれたなって。今までは"貴方"とか"ねぇ"とかだったしさ」
「うっ……たっ、確かに……。べ、別にいいでしょっ?!」
ぷいとそっぽを向くエメラルダに、アランはクスクスと笑う。アランは、自身のベッドについてある天蓋を見上げた。
「あーあ。それにしても、エメラルダに俺の秘密がバレちゃったかぁ~」
「……駄目なの?」
ムッとした表情でエメラルダはアランを見る。
「いや、駄目じゃないさ。いつかは言おうと思ってたんだ。ただ……今は、さ。俺の身が危険だろ?エメラルダにも、危害を加えたくないから……」
「だから、あの日もう来ないなんて言ったのね」
アランは黙ったまま頷いた。
森の中にいた見知らぬ男達――それもおそらくアランを狙う刺客なのだろう。馬車の中でスフェンがアランの身に何が置きているかわかったからこそ、なぜ、アランが森の中で倒れていたのか、なぜ渡した薬をあっという間に無くすのかがわかった。
「あの時の言葉も、理解したわ……でも……」
「でも?」
エメラルダは下唇を噛むと俯いた。
「エメラルダ?」
アランはエメラルダの俯く顔をのぞき込もうとした。
しかし、エメラルダはその前に顔を勢いよく上げアランを睨んだ。その目には、涙が溜まっていた。
「馬鹿よっ!!馬鹿っ!わっ、私が…どれだけ寂しかったかっ……うっ……どれだけ、心配したかっ……!」
「エメラルダ……」
「いつもそうよっ!アランは……アランは、私には何も言わないっ!最初は気にしなかったけど……でも、今は、悲しいんだから!」
エメラルダはギュッと拳を握る。
「私は魔女よ!わっ、私だってアランを守れる力がある!少しはっ……少しは、私に相談してくれても――」
「――うん……ごめん……」
アランは泣きながら話すエメラルダの言葉を遮り優しく抱きしめる。
エメラルダは一瞬驚くとアランの背中に手を回し、ギュッとアランを抱き締め返した。
お互いの心臓の音が聞こえるぐらい、二人は抱き締め合った。
「エメラルダ……俺さ、この国を出て色んな世界を知ろうと思うんだ……」
「…………」
エメラルダは耳元で聞こえる言葉に胸の奥がズキリと傷んだ。
また、自分のことを置いていくのかと思ったからだ。エメラルダは、ギュッとアランの服を掴む。
「だから、さ……その……俺と一緒に、着いて来て欲しいんだ」
「……え?」
アランはエメラルダを離すと、今度は真っ直ぐな目でエメラルダの菖蒲色の瞳を見つめた。
「これからも、ずっと、俺の傍にいて欲しい」
「………………」
エメラルダは、また、ポロポロと泣き始めた。
それにアランはギョッとし驚く。
「え?!そんなに、嫌だった?!」
「馬鹿っ!違うわよっ!嬉しいの!!」
「へ……?」
「責任とってよねっ!私……その……あー、もう!!貴方に恋をしたんだからぁぁ!!」
顔を真っ赤にして叫ぶエメラルダ。アランは最初はポカンとしたような顔だったが、エメラルダにつられて顔が赤くなる。それを隠すように、アランは口元を手で隠した。
そして、アランな恥ずかしそうにエメラルダに向かってこう言った。
「えっと……喜んで責任を取らせていただきます」
――こうして、悪戯好きで歴史にも載っている黒の魔女もとい『悪魔の魔女』は、王子との愛を知り二人は国を出て幸せになりました。
そして、後に王子の貿易商は大きくなり、子孫共々繁栄が続いたのでした。
END
【あとがき兼予告】
『黒の魔女は愛を知った』をご覧いただき有り難うございます。
そして、その次は、エメラルダとアランの子孫――鯉恋にも登場した"水地茂"版をいずれ作りたいなと思っております。
ここまで読んでくれて有り難うございます。
『好き』と言ってくれて有り難うございます。
『良かった』と言ってくれて有り難うございます。
それでは、また、お会いする事を願って。




