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sixteen

 ✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼


 翌朝。鳥の(さえず)りと共に、アランは目を覚ました。


「う、ん……俺は……?」


 アランは微睡みの中で昨日のことを思い出していた。


「あぁ、そうか……。また毒を盛られたんだったな……」


 自分の愚かさに苦笑いをするアランは、上半身を起こそうとする。そこで、アランは体が少し重いことに気がついた。


「え……?エメラルダ?」


 エメラルダは椅子に座りながら、上半身をアランのベッドにもたれかかりながら眠っていたのだ。


「どうしてここに……」


 そこでアランは、ふと思い出す。エメラルダが、昨日居たような気がしたことを。


「そう言えば、昨日、居たような……」


 すると、コンコンと誰かがアランの部屋をノックした。


「あぁ、入れ」

「失礼します」


 ノックし現れたのは、執事兼秘書のフォルスだった。

 フォルスは、昨日より比べて元気そうなアランの顔を見るとホッと息を吐いた。


「おはようございます」

「あぁ。それで、これは、どういう事だ?フォルス、説明をしろ」

「はい。昨日、アラン様は毒を盛られお倒れになりました」

「あぁ。覚えている」

「それから城の医師を呼んだのですが……盛られた毒の種類、そして、解毒方法が解らなかったらしいのです」


 アランは怪訝そうにフォルスを睨む。フォルスはそんなアランに向かって話を続けた。


「どうやら、この地方では手に入らない毒草らしく、詳しく調べるには時間がいるとのこと。しかし、それまでにはアラン様の容態は間に合いません。ですので、私の判断で黒の魔女に助けを求めたのでございます」

「……なるほどな」


 アランは銀色の髪を掻き上げた。

 そして、気持ちよさそうに微笑みながらスヤスヤと眠るエメラルダの頬を優しく撫でた。


「また、俺はお前に助けられたな……」

「優秀と言われる医師にも治せなかったものを、こうも簡単に治せるとは驚きました。それに、他にも、薬を盛った者や関わった人物全てをエメラルダ様によって判明され、この度拘束されました」

「エメラルダが?」

「はい。不思議な方です……この方は。魔女なので一応は理解できますが……」

「くくくっ、まぁな」


 アランは可笑しそうにクスクスと笑う。

 そんなアランにフォルスはあることを尋ねた。


「アラン様。今回も、スフェン様には――」

「いや、言わなくていい。兄上を困らせたくない」


 どうやら、スフェンの言いたいことはアランにはわかるらしい。スフェンはアランに向かって頭を下げると「かしこまりました」と、言った。


「それに……俺は、もう決めた事があるからな」

「と、言いますと?」


 スフェンがそう聞くと、アランは少年ようにニカッと笑った。


「俺は、貿易商になる!」

「それは……唐突ですね」


 呆れながらも苦笑するスフェンに、アランも笑う。


「ふふっ、まぁな。だが、世界は広いし色々あるかもしれないんだぞ?それこそ、おとぎ話みたいな者とかな」

「エメラルダ様がそうですからね」

「兄上には、後程こちらから連絡を入れるつもりだ。王位も捨てるということも……」

「きっと、スフェン様はお喜びになりますよ。久しぶりのアラン様からの連絡に」

「ははっ、それだと俺も嬉しいよ」


 アランとフォルスはお互いクスクスと笑い合う。すると、眠っていたエメラルダが身じろぎをした。

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