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fourteen

 城に到着すると、エメラルダはアランの部屋へと案内される。部屋はエメラルダの寝室よりも広く、天蓋付きのベッドにはアランが息苦しそうに(うな)されていた。


「はー、はー……ぐっ……うぅっ!」


 アランに仕えている侍女は、苦しそうにしているアランの汗を拭き取ったり、アランの口元に水を入れ飲ませたりしている。だが、あまりの苦しさにアランは水を飲めなかった。

 そもそも、意識がハッキリしているのかすらわからなかった。


「お前達はもういい。ここは私が見よう」

「はい」


 侍女は達は「失礼します」と、一言いうとエメラルダをチラッと見て部屋を出る。


「エメラルダ様。お願いします」

「言われなくてもするわよ」


 エメラルダはそう言うと、パチンと指を鳴らす。すると、何処からともなく例のPOISON BOOKが現れた。


「それは?」

「これは、ありとあらゆる毒草が書かれた本よ。さてと、まずは毒草を調べないといけないわね」


 エメラルダはそう言うと、自分の額をアランの額に合わせる。

 青年は、驚いた様子でエメラルダを見ると、何をしているのかを尋ねた。


「あの、それは何を……?」

「これから過去を見るのよ。少し黙ってて」


 そう言うと、エメラルダは瞳を閉じ小さく呪文を唱え始める。


「時よ巡り巡れ。偉大なる時の精霊よ、彼の者の過去を我に――」


 そう小さく呟いた瞬間、エメラルダとアランの体が薄らと発光し始めた。

 エメラルダの脳内には、今、アランの過去が見えている。アランが苦しんで倒れる所からそれは始まり、やがて、それは過去へ過去へと遡っていく。アランが食事をしている所、食事係りが作っている所、こっそりと厨房の者にバレないよう男が薬を入れる所、薬を入れた男が何かを受け取る所へと。

 そうして、アランの過去から他人の過去、物の過去へと遡り続けたのだ。

 エメラルダは眉間に皺を寄せ、過去を見続ける。エメラルダの額には薄らと汗が浮かんでいた。

 そして全ての過去を見ると、エメラルダはアランから額を話を「ふぅ……」と、小さく息を吐いた。


(やっぱり、過去を見るのには体力がいるわね……)


 エメラルダはそう心の中で呟くと、本を捲り開いた。


「この毒は、ケチョウセンアサガオね。吐き気、呼吸麻痺、最悪は心臓麻痺を起こすわ。とりあえず……」


 パチンとエメラルダは、また指を鳴らす。すると今度は、エメラルダの掌には紫色の液体が入った小瓶が現れた。


「この薬で治るわ。後は私が看病するから、貴方も出て行ってちょうだい」

「しかし……いえ、そうですね。お願いいたします」


 何かを言おうとした青年は首を横に振り、エメラルダに一礼すると部屋を出て行った。

 二人きりになったエメラルダはアランを見る。息が荒く、とても苦しそうな顔をしていた。


「今、薬をあげるわ」


 エメラルダはそう言うと、透明な瓶の蓋をキュポンという音と共に開封する。そして、それをアランの口に流した。

 しかし、薬は喉に通ることはなくアランの口元へと垂れてしまった。


「…………」


 エメラルダは意を決し瓶の中の薬を口に含むと、アランの苦しそうな顔を少し上げアランの唇に自分の唇を重ねる。すると、アランは苦しいながらも口の中に流れてくる液体をコクリと飲んだ。

 エメラルダは、アランが薬を飲んだことに安堵の息を洩らす。そして、側に置いてある布巾を水に濡らし、アランの汗を拭き取った。

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