twuerubu
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あれから時はあっという間に過ぎて行った。
森の草木も、緑色から茶色へと移り変わっている。アランが来なくなってからエメラルダは、また、いつもの生活へと戻っていた。
森に出かけ、毒を調べ、精霊と戯れたり。でも、エメラルダの心は何故だか晴れなかった。
「何故かしら……」
(何かが、ポッカリと穴が空いたような感じがする……)
エメラルダは屋敷の窓から、森をジッと見つめる。
(寂しい、な……)
そこでエメラルダは、自分がついさっき思った言葉にハッとなった。
「さま、しい……?あぁ、そうか……私は、寂しいのね……」
エメラルダはアランがくれた花冠にそっと触れる。花冠はエメラルダの魔法によって色褪せること無く、貰ったままの美しい花冠だった。
「……アラン」
エメラルダがそう呟くと、誰かが屋敷の扉を叩く音が聞こえてきた。
エメラルダは、もしやと思い小走りで階段を降り扉を開く。
「アランなの?!」
しかし、扉に立っていたのはアランではなく、見知らぬ青年だった。
「……誰?」
エメラルダは内心ガッカリしたが、青年に向かっての警戒心は取らなかった。
「こちらに悪魔の魔女と言われる魔女がいると聞いたのですが……まさか……」
黒髪に片眼鏡を掛けている青年はエメラルダをジッと見つめた。
「悪魔の魔女は私よ。というか、悪魔の魔女じゃなくて『黒の魔女』ね。それで、用は何?」
青年は「やはり……」と、小さく呟くと目を見張りながら驚いていた。
しかし、それも一瞬のことだった。
青年はエメラルダに頭を下げ「貴女様に助けていただきたい方がございます」と、言った。
「助ける?」
「はい」
「私は……もう人は助けないの……。他を当たってちょうだい」
そう言うとエメラルダは扉を閉めようとしたが、青年によって閉めるのを塞がれてしまった。
「お待ちくださいっ!お願いします!私の主を助けて下さいっ!貴女様しかいないのです!」
「…………」
「お願いいたします!」
あまりの必死な願いにエメラルダは「はぁ……」と、溜め息を吐く。
「……わかったわ。話は聞いたあげる……でも、助けるかはわからない」
「有り難うございます」
青年は、またエメラルダに深々と頭を下げた。
エメラルダは、青年の話を聞くために屋敷の中へ招いた。
「中へ入って」
「いえ。中でお話しをする時間はございません。森の外に馬車を用意させてあります。その中でお話しします」
その言葉にエメラルダは眉を寄せ、真剣な表情へと変わった。
「……それだけ、その主が大変ってことなのね」
青年は苦い顔をし頷く。
「……はい」
「はぁ……。わかったわ。言っておくけど、この代償は大きいわよ」
「かしこまりました」
そう言うと、エメラルダはコートも着ずに青年の言う馬車へと向かったのだった。




