eleven
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夕方なると、アランはエメラルダを屋敷へと送って行った。
「別に、わざわざ送ってもらわなくてもよかったのに……」
「送るまでがデートなんだよ」
「ふーん」
そんなものなの?と、エメラルダは内心思う。そして、目の前に立っているアランをチラッと見た。
アランは何かを言おうか悩んでいる顔をしていた。
「どうしたの?」
「いや、その……」
アランは口元を片手で覆うと眉を寄せる難しい顔をした。
「なんなのよ?言いたいことがあるなら、言いなさいよ」
アランは小さく溜め息を吐くと、エメラルダを真っ直ぐな目で見つめる。
「うっ……な、なによ……?」
ジッと見つめられて心無しかエメラルダの心臓がドキッと鳴る。
「俺、もう、ここには来ないから」
「…………え?」
突然の言葉にエメラルダは言葉を失う。エメラルダは俯き、拳をギュッと握った。
「なっ、なによそれ……」
「多分。これから、エメラルダに迷惑をかけることになるから……」
「そうじゃない!私は、ちゃんとした理由を聞きたいのっ!」
顔を勢いよく上げ、エメラルダはアランに言った。
だが、アランはエメラルダから目を逸らし「ごめん」と、言っただけだった。
「……今は、言えないんだ」
「………………」
エメラルダは下唇をギュッと噛み締め、また俯く。
「もう……いいわよ……わかったわよ!好きにすれば?!それに私はね、貴方が来なくてせいせいするわっ!それじゃ、さようなら!もう、本当に来ないでよねっ!」
「お、おい!エメラ――」
――バタンッ。
アランがエメラルダの名前を呼ぶ前に、エメラルダは屋敷の中へと入り鍵をかけた。
「くそっ!」
アランは自分に苛立ち、髪をクシャっとすると苦虫なような顔をし渋々森の外へと向かったのだった。
エメラルダは、アランの去る足音を聞くとその場に座り込む。
「……なによ……なんなのよ急に……」
(人をあれだけ馬鹿にして……来るなって言っても、毎日毎日飽きもせずに森の中に来て……)
「……うっ……うぅっ……ぐず……」
エメラルダは両足を抱え扉の前で蹲る。
「人間なん……やっぱり、嫌いよ……うっ……うぅっ……」
花冠を作ったときは陽だまりのように心が温かかった。
だが、今はもう、凍ってしまった氷のように心は冷たく、そして、酷く胸が傷んだのだった。




