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エメラルダが指した場所に来ると、アランはその光景に思わず息を飲み驚いた。
アランが目にするもの――それは、鬱蒼としていた深い森の中なのに、視界は開け、周辺には色とりどりな花が咲いていた。
「森でも、こんな綺麗な場所あったんだなぁ」
「ここは神聖な森よ?当たり前じゃない。って、何やってるのよ?」
アランはエメラルダから離れると、その場に座り込み何かを作っている。
「んー??秘密♪」
秘密と言われ、少し腹が立ちムスッとなるエメラルダ。
そして、ものの数分でアランが、「できた、と」と言うと、それをエメラルダの頭に被せた。
ふさっとした物を頭に感じたエメラルダは、そっとそれに触れる。
「これは?」
「あらら?知らない?花冠」
「はな、かんむり?」
聞いたことのない名前にエメラルダが首を傾げる。
「昔、兄貴とどっちが綺麗に作るれるか競争――いや、なんだもない。それより、綺麗だろ?エメラルダにやるよ♪」
「……………」
エメラルダはアランがいつも大事なことを話してくれないのに、この時だけは少し悲しかった。
しかし、エメラルダはそんな自分の気持ちを気にしないことにした。
「これ、どうやって作るの?」
「へ?」
「私も作りたい」
アランは真っ直ぐ見つめながら言うエメラルダの視線から目を逸らす。
アランの耳が少しだけ赤くなっていた。
「そ、そうか?……まぁ、女の子だもんな。よし、教えてやるよ!」
こうしてエメラルダは、花冠の作り方ををアランから伝授してもったのだった。
最初は、とても花冠には見えないぐらい酷いものだった。
しかし、回数を重ねる事に少しずつ上達していった。
「やっと、できたぁ~!」
「よく出来ました」
パチパチと手を叩くアラン。エメラルダは嬉しいのか「えへへ」と、言いながら微笑んでいた。
アランは無意識に見せているエメラルダの嬉しそうな笑みに心臓がドキッと鳴る。
「っ!!」
すると、エメラルダが綺麗にできた花冠をアランの頭に乗せた。
アランはエメラルダの行動に口を開けポカンとする。何が起こったのかわからなかったのだ。
「あげるわ。こっ、これをくれてお礼よ……」
少し頬を染めそっぽを向きながらエメラルダが言った。
アランは、それが嬉しく、そして何だか花冠をお互い作って交換するのが可笑しく思いクスクスと笑った。
エメラルダは何が可笑しいのかよくわからなかったが、でも、なんだか少しだけ心がお日様みたいにポカポカとしたのだった。




