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その18




「エリオ!」

マヤの叫び声が、エリオを我に返した。

はっとその声に振り向いたエリオへ向けて、手にしていた霊樹の枝を投げて渡した。

それは今の彼女にとって、自らの命を削る行為である。


シューラの前では、霊樹の枝などただの棒切れにしかすぎないことを知っている長老は、傷ついたマヤを抱きかかえながら、二人の様子を冷ややかに見ていた。


ゆるやかな放物線を描き、吸い込まれるようにエリオの手の中に枝がおさまった。


「なんだ、あれは?」

長老が驚きの声をあげた。


エリオの手の中で、霊樹の枝が、まばゆく光る一振りの立派な剣に変わっていた。




それを、なんと考えればいいのだろう?

エリオは自分の手にある霊樹の枝、いや霊樹の剣をしばらくの間、ぼんやりと見つめていた。

いままで、見たことはあっても武器に触れた経験のないエリオにとって、それをどのように使いこなしていいのかという、戸惑いがあった。


その間にも、敵は少年に向かって進みつつある。

エリオは手にした霊樹の剣をチラと見た。物言わぬ剣が、何かを語りかけているような気がした。


長老の腕の抱かれたマヤが、痛苦の為もはや口にすることはできない祈りを込めながら、懸命にエリオの様子を見守っている。




もう、エリオは待たなかった。

一歩、二歩と、シューラに向かって足を踏み出すと、技も計算もなく、ただ無心に霊樹の剣を振り下ろした。


それは、マヤが無惨に退けられたあの場面の繰り返しにすぎなかった。

戦士の盾は、易々とエリオの剣を受け止めた。


しかし、次の瞬間──


エリオの振り下ろした霊樹の剣が、ガッという鈍い音を響かせて、盾ごとシューラの左腕を粉砕した。

その衝撃は、エリオではなく巨魁の戦士のほうを吹き飛ばした。


ぞ?わが庭を荒らすものは」

そのとき、深い静寂とともに、たおやかな女性の声が、まるで鈴ように玲瓏と響いた。


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