宮のはなし~秋~
季節は過ぎて秋。宮も大人猫の仲間入り。
皆は再び恋の季節。春には雌って勘定されて無かったのが今回からは違ってた。一歩外に出ると誰か寄って来る。宮はそんな気分じゃないの!
「うるさいっあっちいけバカッ」猫パンチが相手の鼻にヒットする。ほうほうの体で逃げてく雄を鼻息荒く見送った。
「そんなんじゃ何時までたっても番がみつからないな」一太に苦笑して言われた言葉を思い出す。ついでにその時馬鹿にしたような灰の顔も。腹立ってきた。
でもここで腹を立ててはならない。宮はおとなにナッタノダ。だってこれから灰の所にいくんだもの。なんでって?だって宮は気付いたのだ!灰の傍にいると雄が寄ってこない。虫よけバンザイ!
神社のお屋根の上に今日も灰は陣取ってる。そこに着くとお日様でポカポカ暖められた屋根がとっても気持ちよかった。
「またきたのか?いー加減どれかと番になってやればどうだ?」尻尾をぺしんぺしん上機嫌そうに上下させながら丸まってる灰がいう。
「絶対や。だって宮があいつらの子猫を産むのなんて想像できないし」そう言うと呆れた目でため息吐かれた。「あんな風に撃退してたらそのうち番う相手がいなくなるぞ?そしたらこの辺の女ボスだな」
「ボスじゃないし!いーの!!宮はまだそんな気分じゃないの!!!」
そう言うと宮もどっしりと腰をおろし丸くなった。それからいつもの言いあいをはじめる。
「お前まだガキだな」「灰だって番いいないでしょ。じゃあ灰だってガキじゃん」「俺はお前と違って選択してそうしてんの」「み、宮だってそうだよ」「違うね。お前、身体は大人になったけど心はガキのままなのさ。もしくは初めての恋の季節で無意識のうちに怖がってるか」「怖がってないよ!宮は大人だもん!!」「ふうん、じゃあ今回番をえらべるのか?」「う………それは………」
ほうらみろと言わんばかりの顔された。クヤシイ。クヤシイクヤシイ。
「で、できるよ!」「嘘つきめ」
いつの間にか灰が目の前に来てた。その静かな緑の目には何の感情もうかがえない。今日の灰はなんか怖い。
「じゃあ、下でお前を待ってるヤツから選べよ」「や、ヤダ」「やっぱり嘘つきだ」「う、嘘じゃないけど、やなんだもん」
あぁ、宮は本当にガキなのだ。そう言われてる気がしてちょこっと泣けてきた。
「じゃあ誰ならいいんだ?」流石にいじめ過ぎたと思ったのか灰の口調が優しくなる。
「わ、わかんない~」「そうか?」我慢していた涙が零れそうになる。それを、灰がぺろりと舐めとった。宮はびっくりして顔を挙げる。灰の顔は穏やかな緑の目をしているだけ。
それを見て宮はいっとうちっちゃな子猫だった時を思い返してた。一人ぼっちの宮を暖めてくれた大人猫。あれは灰だと知っていた。お礼を言いたくて傍にいたくて一所懸命後をついて回った。なのに、灰は宮の事覚えてないみたいで………。だから、いっつも嫌いっていった。宮を覚えてない灰なんて大嫌い!白ねーさんの言葉を思い出す。「宮って灰が大好きなのねv」そうだよ知ってる。でも灰は?
「灰なんか嫌いだ!」「そーだな」「大っ嫌いなんだから」「知ってる」
なんだかそう言う度に灰の顔が嬉しそうに緩む。宮だけ一人で馬鹿みたい。
「泣くなよ。いじめたくなるから」「なにそれ?」
今日の灰は変だ。いつもより怖くていつもより優しい。
「下にいる奴らが嫌なら俺の子猫を産めよ、宮」
初めて宮って呼ばれて驚いた。ううん、驚くのはそこじゃなくて………。ナニ?
「それって宮を好きってこと?」
「そーとも言う。春に言ってただろ俺の子猫を見てみたいって。ならお前が産めばいい」
いきなりで、突然で、世界がひっくり返った感じで宮の心臓はきっと今壊れると思った。それは素敵な考えで、限りなくないと思っていた考えで天と地が逆さまになってもありえないと思っていたから。
灰は、宮の答えを待つ。宮は………---。
次は灰視点の話デス。