宮のはなし
宮は猫だ。仲間からみゃーと呼ばれてる。
なんでかって?宮がもっとチビだった頃、近所のケイちゃんが神社のお宮さんの下で宮を拾った。
だから宮って名前をもらったの。だけどまだチビだった私はその名前がちゃんと発音できなかった。
仲間に名前を言うのに
「みゃーっ(宮ーっ)みゃーっ(宮ーっ)」
って言ってたらメンドクサガッタ灰の馬鹿にみゃーって呼ばれるようになった。
ちっさいからって酷過ぎる!そういったけど宮の抗議は受け入れてもらえず他の仲間もみゃーって呼ぶようになっちゃった。
この前、その事を灰に抗議したら―――「んなもん、ちゃんと発音できないお前が悪い」―――だって!
やっぱりあの馬鹿嫌いだ。
猫は夜集会を開く。宮は飼い猫だけどお外に出してもらえる猫なので毎夜のようにこの集会に参加してる。チビだった宮も最近ガキあつかいされなくなってきた。手足も伸びたし毛だってシナヤカな青色。
だけど灰だけいつまでも子供扱い。自分が前から大人だからってズルイ。
一太は宮がムキなるからからかわれるんだっていう。
ムキになんてなってないもの!っていったら白ねーさんが宮って灰が大好きなのねvだって。違うし。好きじゃないもん嫌いだもん!そう言ったら大笑いされた。ヒドイ。
灰はこのあたりで一番強い猫だ。でも前にボスって事?って聞いたらチガウって。ボスみたいな面倒な事は嫌いだからって。面倒ってどうよ?でも灰がいるからこの辺は安全なんだって。じーちゃん猫がそう言った。それってボスって事じゃないのかな?
恋の季節がやってきた。猫は一年中恋してるけど、一番恋してる猫達が増えるのは春と秋だ。今は春。
皆、番う相手を求めてしっちゃかめっちゃか。
こうなると宮は暇だ。だって宮はまだ大人になりきってない。そもそも番う相手なんて想像もつかない。
この時期に宮と同じで暇を持て余している猫がいる。灰だ。強い猫は普通おねー様がたに引っ張りだこのはずなのにいつも神社の屋根で昼寝してる。そういえば、灰の子供って見たことない。雄にしてはキレーな灰色の毛。緑の目の子猫はきっと可愛いと思う。灰の事は嫌いだけど、子猫とは遊んでみたかった。
そう言ったらとっても変な顔をされた。もしかして、赤ちゃんつくれない身体なの?って聞いたらアホかって頭をはたかれた。あんまりだ。
宮の次は灰視点のお話です。