感覚
こんにちは。近頃は物騒な世の中になってきてしまいましたね。私は経験の足りなさからか、とても恐怖と焦燥感を覚えて来てしまいます。これからの世界が平和であることを願っております。
真っ暗だ。いや、正確には僕の目はまだ明るさを感じ取れる状態ではなく、そもそもまず目を開けたところで見渡せない空間に居る。殻である。僕はまだ誕生する前の状態であり、周りの環境から守ってくれる殻に包まれている。故に、真っ暗だ。
しばらくすると、外で何かによって僕は振動を感じた。きっと僕の親だろう。外気とは全く違う、生物の恒常性によって生まれる熱が、僕を包み込む。このような事が何度も続いた。
ある時、外で今までに無い程の振動、そして衝撃があった。それもとても長い時間だ。何があったのか、見えないながらも外を勘ぐろうとしてみたはいいものの、守るはずの殻が邪魔で僕は外気に触れすらできないことを思い出した。───しばらくして、再びいつもの熱が僕の全身を包み込み、ようやく自身の出来立ての心臓が落ち着くのを感じた。
そしてようやく、待ちに待った日が来た。誕生である。今まで己を守っていた壁を自らのくちばしで突き破り、僕は光を感じる。白一面の世界は少しずつ落ち着いてゆき、やがて世界は僕に隠していた姿を見せる。これが色か。感動して涙が出そうになる、と言いたいところだったが、如何せん腹が減る。僕は大きく口を開け、与えられたものを食べるだけの生物初心者となっていた。
生まれた時から疑問に思っていたことがある。他の兄弟はどこだろう。そして、僕よりも早く生まれてきたこの子。何かが違う。…気がするのだ。だが、そんなことを気にしている暇はないほど腹が減って仕方がないのだ。今はただ、食べることに集中しようとした。
ある時、その子が近寄ってきた。初めての正式な顔合わせ、というわけにも行かず、僕は生まれた瞬間から今に至るまで、顔を見たことがない。などと考えていると、その子の背中に当たった。次の瞬間、ドンッという衝撃によって僕は巣の端に追いやられると共に、思考もどこかへ弾き飛ばされるかのように働かなくなってしまった。なんだ。何が起きた。押された?いやまさか。でも仮に押されたとして何のために。そんな思考が次々と思い浮かぶ。その間に更にその悩みのタネである背中が近寄って来ており、巣の外に押し出されそうになっている。痛い。高い。落ちたら大変だ。───死ぬのか?こんなことで。せっかくこの美しい世界に生まれて来れたというのに。
気がついたら僕は地面に転がっていた。最後の力を振り絞って、この美しい世界を目に焼き付けようと薄ら目を開けると、そこには割れた殻、完全に形成されていない僕の同族。兄弟。家族。それらの見るに堪えない状態に変貌したモノが転がっていた。
初夏の心地よい陽気の中、ホトトギスの鳴き声が響き渡っている。
お読みいただきありがとうございました。初めての投稿なので誤字脱字、文法のおかしな所などは暖かい目で見守って頂けると幸いです。




