第7話 やっぱかわいい!
ーー我が家にラナが来てから、三週間が経った。
相変わらず俺とはまともに遊んでもくれないけど、さすがに慣れた。
毎日頑張って話しかけようとしてるし、リビングにいる時は毎回話すんだけど...
なんか、全然相手にしてくれない。一応返してはくれるが。
でも、顔は一向に暗いまま。その原因は、ずっと見てても全然分からなかった。
本当に、心配だ。このままラナのこんな感じがずっと続くのだろうか。
それは、嫌だな。もっと、ラナとも楽しく過ごしたい。
ラナは、唯一の妹だからな。
正直、無視されてても、すんごいかわいいと思っちゃう。
俺の頭に、脳内補正でも入ってんのかな? なぜか、ラナがキラキラして見える。
これは錯覚だと、思うけど。
「『神炎』」
それにしても、この魔法も随分と微調整できるようになったもんだな。
魔法はイメージでほとんどが決まる。
正確な長さを思い浮かべた上で、その魔法を出す正確な位置、威力や大きさまで、全て頭の中で完結する。
「『ウォーター・ボール』!」
だから、こんな感じで形を星にしたりだってできる。星型がちょっと汚くても、イメージを途切れさせなければ微調整だってできる。
...今日も、ラナは来ないか。ここ最近は、部屋すらも出てこなくなってきた。
本当に、このままでいいのか? そんな自問自答をしつつも、何もできずにいる。
ダメなお兄ちゃん、なのかもな。
◇
「ーーふぅ」
今日の訓練は、これで終わりだな。
ラナは...部屋、か。
ん? いっ、いやっ、いるぞ! ラナが、リビングに、いるっ!
...これは、話しかけてもいいのか? あかん、どうやって話しかければいいのか、全く分からん。
...でも、この機会を逃すのは、絶対に良くない。せっかく出てきてくれたんだ、俺も頑張らなくっちゃ!
「ラナ、ちょっと」
「カイン、さん? どうしたの?」
「この頃は、本ばっかりで、少し退屈なんじゃないか?」
「......いや、そんな、ことは」
ラナは、不自然にも目を逸らした。
三週間で、ラナのことは少しずつだが分かってきた。
たまに、視線を逸らす時がある。
「...あるん、だろ? まあ当たり前だ。俺だって、昔は本ばかりで退屈してたからな。そんなラナに、いいものを見せてやろう!」
「いや、だから本当にっーー」
「いいからいいからっ! ほら、早く早くっ!」
「うわっ!」
俺は、ラナの手を引っ張って庭へと連れてきた。
この前思いついた、ラナを喜ばせることができるかもしれない方法。
俺には、魔法しかないからな。
◇
「ラナは、綺麗なものは好きか? キラキラしてたり」
「いや、別に...」
なぜそこで目を逸らす?
「ほいっ、ー『遮光空間』っ」
「うわぁっ」
ラナは、少し驚いた表情で周りを見つめる。
「暗くてなんも見えないだろ。そして、それから...ー『ウォーター・ボール』...『虹彩幻煌』」
作り出したたくさんの星型の水を、いろんな色に発光させる。
『虹彩幻煌』とかいう魔法は、まあつまり、水を光らせる魔法だ。
前世の母さんと父さんを喜ばせるために、人生で初めて作った魔法だ。周りからはめっちゃバカにされたけど。
でも、本来の魔法は、こんな風に使うべきだと思ったから、頑張って作った。
まあ、それ以降使うわけないと思っていたが。こんなところでまた使うことになるとは、想像もつかなかったな。
「...綺麗、だろ?」
ラナは、この光のせいか目が光り輝き、星をまじまじと見つめる。
「どうだ、どうだっ!」
「......まあ、ちょっと、きれい、かも」
その視線は、逸らすことなく星を見ていた。
ラナは、自分でも気づいていないかもしれない。でも、顔に、少しの笑みが浮かんでいる。暗くてよく見えないけどね。
星々の光に包まれたラナは、宝石のように美しく彩られ、最っ高に満足した様子で、星なんかよりも、ずっと、綺麗だった。
「ラナ、もうちょっと、ここにいるか?」
コクコクと、静かに頷いた。
「分かった。じゃあ、この指輪を持っといて」
ラナの指に、一つの指輪をつけた。
「これには、この魔法に繋がる魔力を込めてある。ここに触れれば、魔力が抜けて外に出られるから。いつでも出ていいからね!」
そう言って、カインはその場を後にした。
「『転移』っ」
◇
「いやぁ、よかったよかった」
今日のは、意外と良かったんじゃないか? 多分喜んでたしっ!
それに、あの中で見たラナ、天使みたいだったよなぁ。
全身が輝いてて、元々すんごいかわいいのに、さらにかわいいと思ってしまった。
また今度、次はハート型とかも入れて、やってやるかな。
いいこと思いついたな、ホントっ! これで、少しはお兄ちゃんらしいこと、できた、のかな。
ーーそう思っていた矢先のことだった。夜の6時くらいだろうか、家が突然騒がしくなった。
「ラナーー、どこに行ったのー!!」
「ラナ!! 出てきてくれぇ!!」
なっ、何やってるんだ、二人とも。
「父さん、何してんの?」
「カイン!! お前も探してくれ! ラナが、家中どこにもいないんだよ!」
「.........えっ?」
一瞬、理解できなかった。だって、1時間前には、ここに...まだ、異空間から出てない、のか?
咄嗟に、庭へと飛び出した。なぜか、嫌な予感しか、しなかった。
「やっぱり、もう解除されてるっ」
これは、選択を、間違えた。
......そう、だった。俺は、いい気になって、ラナを置いて戻って来てしまったんだ。
ラナから、目を離してしまったんだ。
「ちょっと、カインっ! どこに行くのっ!!」
これは、これは、まずい。俺のっ、俺のせいでっ!
こんなの、やっぱりお兄ちゃん失格じゃないか。何を、して...
そんな考えを頭に巡らせながら、微かに感じる指輪の魔力を追って走った。
「ここって、もし、かして...」
通じていたのは、森の中、だった。
俺の、せいだ。でも、そんなこと考えてる暇はない。一刻も早く、ラナをっ!
頼む、まだ、まだっーー




