第25話 帝都に行こう!①
「あれっ、どこやったっけ...」
朝起きると、母さんが何やら探し物をしている様子だった。
「母さん、何探してんの?」
「あら、カイン。いやね、これまでずっと家に置いてあった調味料が、なんか見つからなくって...」
「調味料? 何それ」
「えっと...確か、"サイザルの味"、みたいな名前だった、はずっ。とりあえず探してるんだけど...」
いや、聞いたことねぇ...
てか、サイザルって、あのジジイと同じ名前じゃねぇか。千年も経ってるし、さすがに違うとは思うけど。
「何で、そんなに必要なの? 別に、調味料一つくらいいいじゃん」
「ダメなのっ! 私の料理、結構美味しいと思うんだけど、あれ、大体全部その調味料を使ってるのよ。あれがなきゃ、私、ほとんど料理作れないのぉ...」
...確かに、全部ちょっと味が似てるとは思ってだけど...そう、だったのか。
そういえば、一回も料理現場に入らせてもらえなかったっけ。
まあ、俺も料理できんし、入る気もなかったけど。
「うーん...他に、あまりとかなかったの?」
「あったわよ! すっごいたくさん! でも、全部無くなってて...。まあ多分だけど、泥棒とかじゃないかって、思ってるのよ」
「調味料だけ取る泥棒って、変なの...それで、どうするの?」
「どうしようかしらね...」
「じゃあ、新しく買ったら?」
「でも、今日も明日も仕事があるし...」
確かにな。母さんは、いつも仕事頑張ってくれてるし。
「それなら、俺が行こうか?」
「えっ! いいの?」
「いいよ。ここ最近、家にいて暇だったし。それで、どこに売ってんの?」
「それがね......多分、この近くにはないくらい貴重で、帝都に行かないと無いのよ」
「てっ、帝都?!」
帝都かぁ...
ここフェルン帝国には、帝都であるガルムという都がある。
ここは、フェルン帝国の超端っこ。海に面しているところだ。
ガルムまでなんて、一体どれだけかかるのやら。
「まっ、まあ、いいよ。俺が行く」
「ありがとう! お兄ちゃんは、やっぱり頼りになるわね」
すると、支度を終えた父さんが一言。
「カイン、帝都に行くのか」
「お父さん? うん、そうだけど」
「それなら、俺と同じ馬車に乗るといい。終点が帝都だからな」
「分かった。それで行くよ」
「じゃあ、早く準備するといい」
◇
「気をつけてね、カイン。危ないと思ったら、すぐに逃げるのよ」
危ないって、ただ帝都に買い出しに行くだけだろ?
何もないだろ、さすがに。
「分かった。じゃあ、行ってきます!」
「いってらっしゃい」
◇
仕事に行く父さんは、いつものふやけた顔とはまるで違う。
キリッとしてる。
父さんの違う一面が、見えた気がする。
いつも、仕事お疲れ様ですっ。
「カイン、これを持ってけ。金が入ってる。これで、数日泊まっていくといい」
「ありがとう。でも、何で?」
「お前は、家にばっかいるからな。外の世界について、全然教えられなかった。この機会に、いろいろ見てこい」
おお...! なんか、すんごい嬉しいっ。ちゃんと、俺のことを考えてくれてるのかっ。
「ありがとう、父さんっ!」
「う、うん...じゃあな。俺は降りるから」
「うん、それじゃっ」
それからの道中は別に特別なこともなく、父さんが降りてから20分くらいで帝都に着いた。
前におかれた大きな門をくぐると、中には衝撃的な光景があった。
そう、この帝国の王が鎮座する城だ。
父さんからたまに聞いてはいたが、それは天に突き刺さるほど高く、見た目も整っている。
あんなに高いなんて、風魔法があっても怖い事は間違いない。すごい技術だなと思う。
千年も経つと、いろんな事が新しく、進化している。
中を進んでいっても、やはり綺麗な街並みが続いている。石造りの家がずらりと並び、人もみんな賑やかだ。
ワクワクが、止まらないっ!
「ありがとうございましたっ!」




