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第22話 強すぎワロタ

 そう言って連れて行かれた先には、深い森が広がっていた。

 霧がかかって、周りが見にくい。


「さっきのところは地下通路の中の部屋。そしてそこを抜けたここは、森の最深部だ。安心して、終わったらすぐに精霊が帰してくれるから」


「はぁ、もう早くやろうぜ」


「そんなにせかさないでよっ。まあ分かったわ、早速始めましょうか。倒れるか、降参したら負けってことでいいわね」


「別になんでもいいけど」


「おにぃーちゃーん! 頑張れぇー!!」


 なっ、なんか恥ずかしい...


「とりあえず、名前だけ先に聞いてもいいですか?」


「名前? 私はレーネ・アストリアよ。あなたは?」


「俺は、カイン・アルフレッドですよ」


 どちらも、戦闘態勢に入った。いや、まあ俺にやる気なんてないけども。


『そっ、それではっ。ーー始めっ!』


 ここで、前の狐の時みたいに、倒れることを危惧してためらってたら全然終わらない気しかしない。


 はよ、はよ終われ!


「穿て ーー『神の懺撃(ゴッド・バースト)』」


「なっ?! それ、エルフにのみ伝わるっていう、あの伝説の魔法?!」


「ふふっ」


 エルフはまだ絶滅していなかった上に、こんな魔法まで途絶えずにいたなんて...この魔法、使いたいっ!


「『絶対防御層(レイ・ディフェンサ)』っ」


 とりあえず、伝説の魔法だろうと関係ない。受け切れるかな?


「うぐっ.......がっ!」


 えっ?! 危なっ!


『とっ、止められたっ?!』


 いやハンパねぇぇ...今のやつ、攻撃力がエグかったなぁ、うん。貫通されそうだったし。


 エルフは長く生きてるせいで、魔力量がとてつもないんだよな。ああー、怖い怖い。


「でもっ、もう終わらせて帰りたいんでねっ! ー『水神の庭園(アクア)』ー『ラスト・ウォーター』っ』」


 正直、このエルフはどう見ても悪い奴じゃないし、なんなら物分かりがよくていい人だと思う。


 なんか仇とか言ってたけど、まあここで負ける訳にもいかないしね。できるだけ穏便に勝とうっ。


「おぼぼぼぼぼぼ...ブファッ...ゴホォェ」


「だっ、大丈夫、ですか?」


 しまった、水の量が多すぎたな...ちょっと溺れちゃったし。すみません、ホント。


「あなたにっ、心配されてもっ、しょうがっ、ないわよっ! ー『神の懺撃』っ! これで...」


 ...でも、その魔法は、さっきの威力とは程遠い、カスみたいな魔法になっていた。


「なっ、なんで、こんなっ?!」


「あれ、これは『水神の庭園』のイメージがちょっと強すぎた、かな? さっきも意味わからん量の水が出てきたし...」


「うっ、うそぉ...」


 レーネさん(?)は、崩れ落ちてしまった。


「うっ、うぐっ...うぅぅ...」


 ああ〜、これはぁ...服が濡れて、少し泣いちゃってるし。いやこれはさっきの水が垂れてるだけか?


 なんか悪いことをしてしまった気分だ。


 でも、服まで濡れてるし...うん? こっ、これはっ、これはちょっと刺激がぁ...あ゛あっ...これは、見ちゃだめだ。


「もっ、もう終わり! これで最後! ー『龍の咆哮』っ!」


 なんか、想像したあらゆる場所から炎を出せるやつ。


 これ、いつ覚えたんだっけ? よく覚えてねぇけど、なんかどっかの...うーん、誰に教えてもらったんだっけな...


「そっ、それはっ、龍族にしか使えないっていう、あの魔法?! なぜ君が使えるっ?!」


「えっ? いや、なんかどっかで覚えた、気がするんだがな、よく分からん」


 とりあえず、服を、乾かしてあげよう。なっ、名残惜しくなんてないぞ? 当たり前だっ。


 困ってる人を、見過ごすわけにはいかないからな。


「あら、いっ、意外と優しいのね......はぁ...もう無理よ。負けでいいわ。大体ね、なんでそんなにポンポンと神話級魔法を使えるわけ? 魔力の消費がとんでもないでしょ? 最後なんて龍の最終兵器使ってたし...」


「まあ、うーん...訓練の、おかげだなっ!」


 そう、生まれてから五十年以上、頑張ってきた訓練のおかげ。

 ほんの少しの魔力で、神話級魔法だって使えるようになった。


「おにぃちゃーーんっ!」


 ぽふっ


 ...よかっ、た。ラナがいなくなって、マジで終わったかと思ったぜ。


 でも、泣かずに少し笑顔でいれるのはすごいな。こんなところに勝手に連れてこられたら、絶対に怖いはずなのに。


『...まっ、まさか本当にっ、我が王までもがっ』


「ラクス、これで分かったでしょう。彼はとんでもなく強い。その上、私に情けまでかけたの、きっとフェイのことも、何かあったのよ」


 狐はこっちへ向かってきて言った。


『......すみませんでしたっ、初対面であのような態度をっ...』


「いやぁ、別に気にしてないから、早く帰してくれない? マジで、早く」


「とりあえず、ラクスは気が済んだのなら、戻りなさい」


『はっ』


 そうして、森のさらに奥へと進んで行ってしまった。


「じゃっ、ちゃっちゃと帰して、妖精さんっ!」


「.........本当に、もう行っちゃう、の?」


「へっ?」


 レーネさんは、なんかはにかんだような変な顔をして、こっちに寄ってくる。


 な、なんだこの反応は?


「訓練で強くなったって言ったわよねっ。もっ、もう少し、ここにいて欲しいのだけれど...お話しとか、したい、し」


 エルフはおもむろに俺へと近づき、手をぐいぐい引っ張ってくる。


「なっ、何っ、急にっ?!」


 むにっ


 腕に、むっ、胸がぁぁあ!?


「...もう少しで、いいからっ。帰らない、で」


「いっ、いきなり何ですかっ」


「.........メスが強いオスを好きになるのは、自然の摂理、なんじゃない、かしら? はっ、初めてだし、私よりずっと強い、男の人、とかっ...」


「好きっ?!」


 やっばい、こいつの目、なんかすごくマズい気がする。はっ、早く戻らなきゃ!


「森はっ、とってもたいくつ、なのっ。誰も、いない。わっ、私でよければっ、何でもしてーー


「ちょっと!!」


「...何、あなた。邪魔なのだけれど。早く、その腕をどかしなさい」


「いーやーだー! お兄ちゃんはっ、私のっ! あんたなんかに、渡さないっ!!」


 うっ、腕がいってぇぇ...もう...


「いい加減に、しろぉーー!!」


「「ごっ、ごめんなさいぃ!」」


 びっくりしたぜぇ...


「そっ、そうよね。分かったわ、すぐに帰してあげるから...」


 ...でも、確かに、ここは退屈なのかもな。


 エルフ族は人間の派生種だ。エルフは絶滅したと思っていたくらいだから、本当に数が少ないんだろ。


 この、悲しそうな顔が物語っている。きっと、退屈で仕方がないのだろうね。


 この森には人間もエルフもいなさそうだし、ここだと種族的にもひとりぼっちなのか。


 分かる、分かるぞ、その気持ち。ぼっちはつらいよな...


「...じゃあ、たまに来るくらいなら、いいよ」


「......ほっ、本当にっ?」


「まあ、うん」


 なんだよ、その顔は...すっごいニッコニコやん。


 エルフとは会ったことなかったけど、聞いた話によると、めっちゃ男たらしらしい。本当なのかは知らないけど。


「んふふふっ、うれしいっ! これで、しばらくは退屈しなさそうねっ」


「ちょっとお兄ちゃんっ?! なんでぇぇ...」


「ごっ、ごめんごめん。でも、すごい寂しそうだったから」


「むぅぅ...」


 ああ、怒っちゃった...

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