第17話 森の守人② ★
それから、昼過ぎまで遊んだ。
かけっことか隠れんぼとかでほとんどの時間を過ごしたけど、少し魔法も見せてもらった。
熟練の魔法師って感じだった。
魔力操作、イメージ共に綺麗だった。本気で撃てば、絶対めっちゃ強い。
この歳でここまで洗練されているのは、すごいと思う。
遊びきって戻ってくると、ラナはヘトヘトになっていた。
とりあえず、奥の部屋のソファに横にさせる。
「ラナちゃん、大丈夫? これ、お水」
「んくっ、んくっ、んくっ...」
「ちょっとはしゃぎすぎだったぞ、全く」
何であんなに元気だったんだ?
うーん...
......あっ、あれ、そういえば今日ってラナの誕生日、なんだっけか? 母さんが、言ってたっ、け?
そうか、だからか。
......や、やばいぞ、何も買ってなかった。
あッ、そうだっ!
「ラナ、ちょっとここで休んでてね」
「うん」
「カナラさん、ちょっと」
「ん?どうしたの?」
俺はカナラさんを連れ、一旦二人で店のところに戻った。
「そ、その...」
「いいよ、何でも言って」
優しい目で話してくれる。なんかお姉さんと話してる気分だ。
じっと待ってくれるカナラさんを前に、俺は話を切り出す。
「今日、ラナの誕生日なんですけど、プレゼントを選んでなくってですね。だから、杖をあげようかと」
「ラナちゃんに? 杖って、ラナちゃんは使えるの?」
「ラナは、最近魔法の練習をするようになったし、喜ぶかなって」
「そう。それで、お金はどれくらいあるの?」
「ええと、お小遣い合わせて...これ、だけです」
手には、銀貨が4枚と小銅貨3枚のみ。俺のポケットマネーだ。
そう、これが俺の全財産だッ。
「これじゃ、さすがに無理ですよね」
「...いや、一つだけ、あるよ」
「え?」
「ちょっと待ってて」
そう言って、奥へと行ってしまった。
何だろうと思いつつ、数分座って待った。戻ってきたカナラさんは、手に長い箱を持っている。
「よいしょっと」
「これ、何ですか?」
「これはねぇ...」
カナラさんは箱を静かに開けた。
その中には、一本の杖が入っている。少し短く、装飾も綺麗な、一本の杖が。
「この杖は、私がこれまで作った中でも、最も強い杖よ。私ができるすべての付与をしてあるわ」
「それで、これはいくらなんですか?」
「ふっふー、それは君次第だよ、カイン君」
「俺、次第?」
カナラさんは、杖を手に取って俺に突き出す。
「カイン君が、これを使いこなせたなら、君の持ち金だけで売ってあげよう」
使いこなせたら...俺の、持ち金だけで? それは、さすがに大盤振る舞いがすぎるんじゃないか?
「ほ、本当に...?」
「本当だよ。これは、扱うのがとっても難しい。これまで、来た人にはみんなに試してもらったけど、軒並みダメだった。君にはやるつもりなかったんだけど、せっかくだし、いいよ」
杖を持って外に出た。
杖っていうのはなかなか高価な物だ。良質な霊木からとった杖に、様々な付与魔法をかけて作る魔法の杖は、作る人の腕と木の質で値段が決まる。
普通はこんな金額じゃ買えるわけないんだが、すごいラッキーだったな、ホント。
「ここで、魔法を撃って見せて。私がそれを見て、判断するわ」
そう言う事なら、絶っ対に遠慮はいらないな。ラナのためだ、ここは本気でいこう。
杖を持つと、すごい力を感じた。
分かる、これはすごい杖だ。これがあれば、魔力操作の感覚がわかりやすくて、ラナも魔法の調節がしやすくなるかもしれない。
それに、魔法の強化魔法まで備わっている。杖は長くて邪魔な物だとずっと思ってきたけど、意外と小さいし、これはいい物なのかもしれないな。
でも、ラナの魔法がこれ以上強化されるのは......ま、いっか。
「じゃあ、いきますっ」
あれ、そういえば使う魔法考えてなかった...
まあ、なんでもいっか。
「ーー『水神の庭園』ーー」
魔法強化して強化魔法使うとか、なんか変な感じだな。
でも、この魔法結構好きなんだよな。俺。
まあ、さすがに使う魔力量を制限しないと、俺の魔力が切れちゃうけど。
「.............」
カナラさんは、黙りこくってしまった。
「どうですか?」
「......うそーーん.........」
これは...どういう反応なんだ?
「...ふっ、ふっ...ふふっ、合格よっ」
不自然に笑いながらも、カナラさんは答えた。
「じ、じゃあ、本当にこれだけで...」
「いや、お金はいいよ。いらない」
「え、いらない?いや、さすがにそれは申し訳ないって言うか」
「これは、今私が決めたの。この杖、本っっ当に頑張って作ったからね。ふさわしい人にあげるべきだと思うんだ」
「で、でも、これからさらにふさわしい人が来るかもしれないし...」
「今の魔法、『水神の庭園』、だよね。神話級の」
「はい、そうですよ」
「やっぱりそうか...」
カナラさんは、再び少し黙り込んでしまった。深く思案していうようだ。
でも、すぐに決心したようで、再び口を開いた。
「...やっぱり、これは君にあげるべきだね」
「でも、これはラナにあげちゃうのに、本当にいいん、ですか」
「カイン君が選んだ人なら、別に構わないよ。・・・それに、ここで渡さないと、多分これから二度と渡す人は現れないから。私がずっと持ってるなんて、作った意味がないじゃない」
「.........では」
こんなもの、本当にタダでもらっていいのか、少し迷うところもある。
けど、カナラさんは俺を評価してくれたんだ。
ありがたく貰おう。
「はいっ、どうぞ」
「...ありがとうございますっ!」
「おにぃちゃーーーん!!!」
その時、家の中から大きな声が鳴り響く。ラナの、かわいい声が。
「ラナ?」
「ほら、ラナちゃんが呼んでるよ。早く行ってあげて」
「ほっ、本当にありがとうございました!お礼は、いつか絶対するので!」
「分かったわ。楽しみにしてる」
それを聞いて、カインは家へと走り出した。
ーーーー
「ーーその魔法、私と団長しか使えないはずなんだけどなぁ...」
ここ最近の不可解な事も、彼の仕業かもしれない。
周りに広がった水の領域は、森をも包みこんでいた。
現代で唯一の神話級超強化魔法。
浮かび上がったたくさんの水玉は、夕日を反射してとても綺麗だった。
あそこまで広い範囲で展開してるのに、一切のブレも無かった。
継続的なイメージが絶対的に必要なはずだ。それがあんなに綺麗だなんて。
ちょっと、団長に似てたかも...いや、ぜっ、全然違うし? 団長はもっとすごいし?
...でも、いつか彼が世界を変える存在になるのかもしれない。
あそこを辞めてここに来て、良かったのかも。カイン君に会えたからね。
そう、思った。
◇
「楽しかったっ。ありがとっ」
「いやぁ、私も楽しかったよ。また来てね」
「色々、ありがとうございましたっ」
カナラさんは、チラチラと目線を送ってくる。誕生日プレゼントがバレないように、言葉にはせずにいてくれるようだ。
なんて気の利く優しい人なんだ...!
「じゃあ、気をつけて帰ってね!」
「では、また」
「ばいばい!」
2人で、手を繋いで家へと向かう。
「お兄ちゃん、その袋は何?」
や、やっぱり気づいちゃうかぁ...まあ、こんな袋ぶら下げて歩いてたらそりゃ思うわな。
「カナラさんから、お土産をもらったんだよ」
「お土産っ!」
「だーめ、これは見ちゃだめ」
「え〜」
マジで、見られちゃダメなやつっ!
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