第16話 森の守人①
ある日、いつも通り森に2人で来ていた。
森の中に向かおうとすると、ラナが服を引っ張ってくる。
「何?どうかしたの?」
「今日はこっち!」
「うわっ」
俺の手を引っ張りながら、ラナは進んでゆく。
言われるがまま歩いて行くと、なぜか森の奥に、一軒の家が立っていた。見たことも、聞いたこともない。
こんなところに、家なんてあったか?
ラナは勢いよく戸を叩く。
「お姉ちゃーーーん!」
「ーーああ、ラナちゃん! 久しぶりね、元気してた?」
出てきたのは、金髪の小柄な女性だった。
知らない家に、知らない女性。
なんだ、ここ? ラナは、なんでこんなところを知ってるんだ?
「うんっ、元気」
「ど、どうも...」
「ああ、君がカイン君かぁ! 初めまして、私はカナラ。あなたのことは、話でよく聞くからね」
女の人は、とてもフレンドリーに話してくれた。
「話って?」
「君はあの家の息子だし、有名だよ。"フツメンだ"とか、"変な奴だ!"とかかな」
...それって、全部バカにされてないか、俺?
「それで、ラナは何でここに来たの?」
「カナラお姉ちゃんのところ、あんまり行ってなかった、からっ」
「昔は行ってたんですか?」
「まあ、たまにだけどね。前の家族と一緒に、来てたかな」
この人は、ラナのことをよく知ってそうだな。
前の家族とって言ってたし、前の家族のことも、大分知っているのだろう。
でも、前の家族と来てたって、ここは一体ーー
「ささっ、中に入って!」
◇
中に入ると、そこにはたくさんの杖が置かれている。綺麗に整頓されているが、他には何も置かれていない。
ラナと席に座ると、お茶とお菓子を出してくれた。
「ありがとうございます」
「ありがと!」
「いやいや、いいよ」
カナラさんも席に座る。
ラナは、一心にお菓子を頬張り始めた。
「さて、君の名前はカイン君、だっけ。初めてだし、聞きたいことがあったら言って」
「では、カナラさんはここで何をしてるんですか? ここって森の奥ですよね、周りには何も...」
「...私はね、村の人間の中でも特別な存在なの」
「特別な、存在」
「そう、まあいわばこの森の管理人みたいなものかな。村の近くにあるこの森は、色々危険だからね。魔物の侵入を阻止したりするの」
「...それって、もしかして1人で、ですか?」
「当たり前じゃない。こんなところ、私以外誰もいないわよ」
「す、すごいですね」
一人でって、この村と森が面してる境界線なんて、とんでもない長さだぞ?
そんなに敏感に魔力を感じることなんて、めっちゃ難しいはずだ。すげぇなぁ。
まあ、多分俺もやろうと思えばできるけどね。でも、遠距離で魔法撃つとかめっちゃむずいからな。イメージしにくいし。
普通の人じゃ絶対無理だ。
「ふっふーん、まあね。私、結構強いんだからっ」
「じゃあ、このたくさんの杖って何のためにあるんですか?」
「ああ、これは売り物だよ。さすがに、お給料が少し足りなくてね。これで足しにしているんだ」
「それじゃあ、カナラさんは、腕利きの杖職人でもあるんですね」
「腕利きだなんて、やだなぁ、もう」
こんな量、ちょっとやそっとじゃ作れない。すごく作るのが早いのか、もしくは売れ残っているのか...
「まあ、来る人の大半は村の外からだしね。あんまり人は来ないよ。それでも、杖を作るのは大好きだから、ついつい作っちゃうんだよね...」
「へぇぇ」
うーん...てか、コイツ食べ過ぎだろ...手が止まる気配もしねぇ......
お菓子もほとんどなくなってるし。
「ほねえひゃんねっ、まほおがほっへほひへいなんひゃほ!」
「ラナ、飲み込んでから話しなさい。全く聞こえないぞ」
「ほ、ほへんなひゃい」
そう言って食べ続けるラナと、横でクスクス笑っているカナラさんはどちらも笑顔だ。
ちょっと恥ずかしいんだけど...。
「あなたたち、本当にとっても仲良しなのねっ」
今日のラナは、ちょっと元気すぎる気がする。カナラさんに会ったからかな?
こんなに一気に食うやつじゃない気がするけど。
「それで、今日は森を見なくてもいいんですか?」
「いや、それがね。魔獣は常時魔法を使っているから、ずっと魔力を感じるはずじゃない?」
「そうですね」
「それが、ついこの前、1番警戒してた最も大きな魔力が、突然消えちゃったのよ。それで、小さい魔獣も全然出てこないし...」
「それって、森の主ってやつですか?」
「いや、それは分からないわ。でも、そいつが死んだのか、それとも奥に隠れちゃったのか、よくわからないのよ。まあ、私の仕事が減ったのはありがたいわね」
魔獣は、共喰いとかあんまりしないからな。寿命とかかな?
「そいつとは会った事があるんですか?」
「いいえ、ないわ。結構奥にいるし、縄張りに入らなければ何もしてこないからね」
「ーーごちそうさまでしたっ」
見ると、すでにお菓子がなくなっている。
「ああ、もう。口汚れすぎ!」
ポケットからお手拭きを取り出す。
俺が拭いている間も、カナラさんはずっと笑っていた。
「カナラお姉ちゃん、お兄ちゃんっ。外で遊ぼっ!」
「ふふふっ、いいわよ」
「まあ、別にいいけど...」




