第11話 かわいすぎて草! ★
次の日から、ラナの何かが変わった。
「ねえ。おっ、おにぃ、ちゃん」
「...なっ......!!」
ラナが、俺を、お兄ちゃんって...
「ラナ、ラナがぁあっ! あぁあ! ぐすっ、うぅ...」
柄にもなく、おいおいと泣いてしまった。だって、だってぇ...俺が、お兄ちゃんって...認めてっ...!
「なっ、なんで泣いてるのっ?」
「ラナ、なんでも言うこと聞くよぉ」
「そっ、その、一緒に、あそぼっ!」
「ああ、もちろんだともっ!」
「んふっ...よっ、よかったぁっ!!」
あれっ、普通に、笑った?
「ほらっ、早くっ!」
「...ああっ!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
私は、昔から、お父さんが大嫌いだった。
私を殴ってくる、それだけじゃない。お母さんまで...
お母さんは、いつだって私を守ってくれた。好きだって、言ってくれた。
お父さんがいない時は、よく二人で出かけた。その頃から、外で遊ぶのが大好きになった。
家は退屈だし、痛いし、嫌いだった。それに、家じゃ遊べないから。動かずに本をじっと読むとか、そんなのは苦手だった。
ーーある日、突然だった。
お母さんの帰りが遅いと思っていると、お父さんに引っ張られてある病院へと連れて行かれた。
事故で、もう、手遅れだった。
私は、ショックで動けなかった。
最後に、二人で話す機会をくれた。
その言葉は、今でも覚えてる。
"「ねぇ、ラナっ。あなたは、お母さんのこと、好きっ?」
「ぐすっ...うんっ、大、好きっ!」
「そう。......いい、ラナ。お願いがあるの」
「なっ、な、に?」
「しっかり、前を向いて。笑って。これから、苦しいことがあるかもしれない。でも、その大好きって気持ち、絶対に忘れちゃダメよ」
「なんっ...っっ...でっ」
「それはね、'家族の愛'っていうの。これから、何があっても忘れてはダメ。いつか、また、それを教えてくれる、運命の人が、必ず現れるっ。だからっ、それまでっ...」
「...お母さんはっ、本当に、私が、好、きっ?」
「そんなの、当たり前じゃない。だって、ラナは私の、家族、なんだか、ら。最後に、聞かせて..ラナ、は、私の、ことがっ......」
「おっ、おかあ、さん? ねぇ、おかあさん、ねぇえ! おかあさん!! ねえっーーーー」"
その後の暮らしは、最悪だった。
あの人が死ぬまでの数年間で、お母さんに言われた気持ちなんて、とっくにわすれてしまった。
......そして、新しい家族と出会った。
家族が、またできてしまった。家族という言葉をきくだけで、あの生活がよみがえってきた。
分かっている。この人達は、お兄ちゃんは、そんな人じゃないって。
でも心の奥で、不安が消えない。家族が、こわくなった。
どれだけ優しくしてくれても、お兄ちゃんとして認めるのが、怖くて仕方がなかった。
でも、お兄ちゃんは、そんな時に教えてくれた。
「家族だから、かな」
「ーーラナが、大好きだから」
運命の人が、そこにはいた。私を、家族だからって。大好きだって、言ってくれる人が、もう一人、いた。
どうしていいか分からずに、あんな態度をとっていた私を、優しく抱きしめてくれた。
お母さんみたいだって、思ってしまった。
これは...なんだろ、胸の奥が、熱い。お母さんの時にだって、こんな気持ちはなかった。
あの時、私を助けてくれたおにぃちゃんの横顔が、頭から離れない。
私は、この人が、あのお母さん以上に、好きになってしまったのかも、しれないっ。
それなら、やることは一つだけ。
これからはもう、逃げたりしない。不安とか怖さとかを忘れるほど、笑顔で生きる。
「お兄ちゃんっ、次はおにごっこねっ! 早くっ」
「おっ、おうっ!」
お兄ちゃんは、まだ戸惑ってるみたいだ。
赤くなった目をこすりながら、必死に私に構ってくれる。
ずっと、やりたかった。また、こんな風に、遊びたかった。
「お兄ちゃん弱すぎぃ! ...ふふっ」
また、ラナから笑みが溢れた。
こんなに寒いのに、心の奥が、ずっと熱い。
もう、ここは、家族は、つらいものじゃない。お兄ちゃんがいてくれる、それだけで、最っ高の場所になった。
楽、しいっ!
「お兄ちゃん、遅いよ! 次はあっち!」
「はいはい」
握りしめた手は、お母さんよりもちょっと大きく、温かい。
まるで、あの頃に戻ったかのような、安心感で溢れる。これが、何よりも愛おしい。
気持ちの整理がついた途端に、これまで抑えていた何かが、溢れてきてしまった。
こんなに急に変わってしまったのは、やっぱりおかしいのかな。
でも、その気持ちを、思い出してしまった。
「うわっ!」
不意に引っ張られ、二人でよろけて庭に転んでしまった。
お互いに顔を見合わせて、どことなく笑いが込み上げてきた。
「ねぇ、おにぃちゃんっ」
「ん? 何?」
好きになって、また辛くなったとしても、後ろを向かなくてもいい。もう一人で抱えなくていい。
分け合ってくれる人が、ここにはいるから。
「私ねっーーずっと、ずーっと、大好きだよっ!」
やっと、言えた。お母さんにも、届いただろうか。
それは、ラナが前を向き、失いかけていた"家族の愛"を、再び取り戻した瞬間であった。
作品を楽しんで頂き、本当にありがとうございました。
"心が動いた"、"早く続きが見たい"という方は、ぜひ評価やブックマーク登録を、よろしくお願いします!




