第1話 大魔法師は帰ってくる!
俺は、魔法が大好きだった。
昔魔獣に襲われていた時、助けてもらった。
その魔法は、夕日さえも霞むほどきれいで、一瞬にして心を奪われた。
俺もこんなふうに魔法が使いたい。人を助けて役に立つような、魔法師になりたいと、願ったはずだった。
でも、そうはできなかった。魔法師団に入れば、戦争ばかりの人生へと変わった。
こんなのではダメだと分かっていても、ここに入ってしまった以上、抜け出すことなどできなかった。
周りからもすごいだとか期待だとか言われ、貴族どもからもこき使われ、うるっさくて仕方がなかった。
『史上最強の魔法師団長』だとかなんとか呼ばれたが、そんなの知ったこっちゃねぇ。
そんなものは、俺の求める魔法師像とは、程遠いものだった。
俺は頑張りすぎからかガンにかかり、余命はもう数日というところまで来た。
なぜかな。全然名残惜しくもねぇ。守りたかった家族だって、もう死んでしまった。
助けるために魔法を磨いたのに、バカらしいったらありゃしない。
俺は、最後の頼みをかけて、古代から解明されていない、新たな命に転生できるという魔法陣を使う事となった。
俺のイメージ力、そして超莫大な魔力量を使えば、必ず起動できると、みんなが信じた。俺も、そう信じたい。
そして、もし叶ったとしたら。その時は必ず、この魔法を、この力を、愛する者を守るために使いたい。
うるさい魔法師団なんかじゃなく、もっと守りたい人の近くで、静かに過ごしたい。
そう、思った。
「お前達、よく聞け。俺はここからなくなり、じきに忘れ去られるだろう。でも、それでいい。絶対に、お前らで人間界を守り抜け。そして、強くなれ。後の事は、全てお前たち子孫に任せた」
....「「「「はいっ」」」」....
「...あとな、絶対に俺を探そうなんて思うんじゃねぇぞ? いやマジで! 頼むから!」
神聖歴1542年、歴代最強と言われた宮廷魔法師団長、レイス・グレイラスは転生した。
世界に遺された者達は、カインからの遺言を果たすべく、魔法の研究に勤しんだ。
そして、親をはじめとする全ての愛する人達を置いて、未来へと向かうのだった。
今度こそ、悔いの残らないように、生きるために。
◇
ーー千年後。
とある家庭に、一人の男の子が生まれた。
「あなた......私達の赤ちゃんよ...ねぇ...!」
「ああ...ああ! 俺たちの、天使だ! 生まれてきてくれて、ありがとう...っ」
気が付くと、目の前には知らない女の人がいた。一瞬戸惑ったが、すぐに気づいた。
転生が、成功していることに。
あの伝説の魔法は、本物だった。
俺の願い。人のために魔法を使い、団長なんてもうやらずに静かに暮らすこと。
それを叶えるチャンスが、遂に訪れたんだ!!
キタァ!!
「ああぅ、うぁぇ、あぃい」
「あらあら、かわいいわね」
...し、喋りたくても、全然喋れねぇ...。マジかよぉ、おい。
「名前も、二人で一緒に話し合ったものねっ、あなた」
「ああ、そうだな。お前の名前は、ーーカイン・アルフレッドだ。これから、よろしくなぁ!」
二人は、俺を包み込むように抱きしめた。
この感じ、悪くないな...温かい。赤ん坊になるなんて、なんか新鮮な気分だ!
どれだけ経ったのかも、ここがどこなのかも、分からない。高揚感が、胸を熱くしてゆくのがよく分かる。
ここから始まるんだ。俺の、新たな人生が!
こうしてレイスは、新たな命、カイン・アルフレッドとして、人生を再び歩み出したのであった。
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