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婚約破棄された令嬢は、貴族社会を会社だと思って攻略する  作者: ピラビタ


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4/4

代表者はよく喋る

 バルド=エルグレインが、意気揚々と第四分科を出て行ったその日の午後。

 私は、彼の背中を見送りながら静かに紅茶を飲んでいた。


「……本当に、止めなくてよかったんですか?」


 ミレアが、半ば呆れたように聞いてくる。


「ええ。

 止めたら“聞く耳を持たない人”ですもの」


 エルナスト卿は、落ち着かない様子で書類をめくっている。


「ですが……第三分科の案件は、東区の流通停滞ですよね。

 あれは、かなり繊細な……」


「だからこそ、ですわ」


 私はカップを置き、穏やかに言った。


「“繊細な案件”ほど、

 声が大きい人が前に出ると、必ず問題が起きます」


 二人は否定しなかった。


 それから数時間後。

 予想は、想像以上に早く現実になった。


 ――怒鳴り声が、廊下に響いたのだ。


「なぜ、私の指示が通らんのだ!」


 扉が乱暴に開き、バルドが顔を真っ赤にして戻ってきた。


「商人どもが、私を軽んじた!

 第四分科の代表だぞ、私は!」


(ああ、やったわね)


 ミレアが、目を伏せる。


「……何を、言ったんですか?」


「何って……

 流通が滞っているのなら、

 貴族として“正しい姿勢”を示せと言ったまでだ!」


 嫌な予感しかしない。


「具体的には?」


 エルナスト卿が、恐る恐る聞く。


「価格を下げろ、報告書を出せ、

 協力しない商人は名前を記録すると――」


 ミレアが、頭を抱えた。


「それ、脅しです」


「是正だ!」


 バルドは叫ぶ。


「無秩序を正すのが、貴族の役目だろう!」


(ブラック企業でいう“やる気のある無能”)


 私は心の中で分類した。


 バルドは机に書類を叩きつける。


「第三分科の連中も腰抜けだ。

 私が直接動いてやらねば、この国は回らん!」


 エルナスト卿は完全に萎縮し、ミレアは呆れを通り越して無表情になっている。


 私は、あくまで穏やかに口を開いた。


「それで、報告は?」


「……商人側が反発して、

 “協力拒否の嘆願書”を第三分科に出したそうだ」


 部屋が静まり返る。


(ええ、完璧)


 私は内心で、静かに頷いた。


 これはもう、

 第四分科の問題ではなくなった。

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