第34話 オハナシしましょ
「私たちはキングリーパーの人間よ。あなたたちの支援要請に応じてきた」
ベティの言葉に最初は意味が分かっていなさそうだったが、一ヵ月前に依頼した件について思い出したようで手をポンと叩く。
「あ~。そういえば…それにしては遅いじゃなぁい。ま、来てくれただけでも嬉しいんだけどね。ティンクル~、飲み物持ってきてちょーだぁい」
キュートは扉の横に立つティンクルを指さしながら飲み物を要求する。そして、その指をスーッと横にずらしてミースとアティアを向ける。
「わたしぃ、一対一で話したいのぉ。邪魔者扱いするワケじゃないけどさ。こっちが一人のほうが都合がいいのよ~。色々とね」
キュートの話を聞いたミースとアティアはお互いに視線を交わし、同時に頷いて部屋から出て行こうとする。
「オレたちはそこで待機させてもらうぞ」
「は~い。ごめんねぇ」
(ごめんねって…圧かけて追い出したくせによ)
部屋にはキュートとベティの二人きり。キュートはベティに息がかかるくらいまでの距離近づいて、ささやくように喋った。
「ねぇねぇ、きみの、お名前は~?」
ベティはキュートに話しかけられる度に嫌な寒気に襲われる。ただ名前を訊かれているだけだ。それだけなのに心の中をかき回されるような感覚がしていた。
ベティは息を整え、顎をつたう冷や汗を拭ってキュートに向き直る。
「ベティ・ジャッタリーよ。あと、ちょっと近すぎるから離れてくれない?」
「フフフッ、そうだよねぇ。ごめんねぇ」
キュートは一歩後ろに下がる。ただ一歩程度では結局近く圧迫感があることには変わりない。
(緩い喋り方の癖に…なんなんだろう、この異様な雰囲気。居心地は良くないわ)
一刻も早くこの部屋から出たいという気持ちでいっぱいだったベティは本題に入ろうとする。
「それで、私たちはあなたのために何をしてあげればいいの?」
「フフッ、してほしいことは沢山あるけどぉ…その前に仲良くしようか~。信頼関係、信頼関係」
「い、いらないでしょ。そんなこと」
キュートはその言葉を無視してジーッとベティの目を見つける。キュートの黄金に輝く目がどうしても異様で奇妙でしょうがなかった。
「これ、なんほ~ん?」
ベティから距離を取ったキュートは左手を持ち上げ、パーの手を作る。
「え?五本、だけど…」
唐突に何をしだしたのか分からないが、見たままの本数を答える。そして、キュートは指を一本ずつ折り曲げていく。
「あの、何をしてるの?何が目的なの?」
「気にしなくていーのよぉ。フフッ、五本、かぁ~」
キュートはベティの回答を満足げに頷いた後、質問攻めを始める。
「隠し事なしの関係でいこーか~。それじゃ、今から質問していくよぉ」
数時間ほど、少なくともベティは三時間はキュートと会話をしていた。不思議なことに会話の最中は意識が朦朧としており、何を訊かれた、何を喋ったかなどはかなりあやふやであった。
「フフフッ、ありがとねぇ。仲がとぉっても深まったわぁ」
キュートの拘束から解放されたベティは疲れ切った様子でドアノブに手をかける。
「何かがあったらわたしから連絡するからねぇ」
手を振るキュートに元気がないながらも手を振り返したベティはそのまま部屋を出る。
「ふぅ。つっかれた」
外に出るなり息を大きく吸って気持ちを落ち着かせてる。そして、外で待機していたミースとアティアに向き直る。クウコも二人と合流していた。
「ごめんなさい。すごい時間をかけちゃったわ」
三時間以上も待機させてしまっていたことに対して謝罪を述べたが、三人はポカン口を開け、何に謝罪をしているのか分からない様子だった。
「時間をかけたって言ってもさ…三十分も経ってないよ?」
「そうだね。アタシも少し前に足が動くようになったばかりだったし」
「…え?そう、なの?」
キュート何を話したかは覚えてない。そのくらい曖昧だったベティはもしかしたら体内時計もく狂っていたのではと思い始めた。
(いや、すごい時間が経った気が…でも覚えてないし…アレ?)
頭がこんがらがったベティは一旦考えるのを止め、覚えている限りのことを三人に伝えた。
「とりあえず事が起きれば連絡してくれるってさ。それ以外は…多分関係のない話をした、というかさせられたわ」
「…かなりフワフワだけど大丈夫かい?それ…まぁ、ならその連絡がくるまではどっかに泊まろうか」
「おっけ、分かったわ」
ベティたちはそんなことを話しながら宮殿の廊下を歩いていく。




