第31話 黄金の世界
「見えてきた!」
ルールーとビリーが戦っている真っ最中、アティアがボロボロになった車の窓から顔を出しながら声をあげた。
巨大な島が見えてきた。とはいえ現時点では豆粒サイズでなんなのか分からないくらいだった。しかし、猛スピードで島に近づいていくにつれてその輪郭が徐々に浮かんできた。
「なんか…キラキラしてない?」
豆粒はどんどんと大きくなっていき、島の全貌がクッキリと見えてくると、まず目に留まるのはその金でコーティングされたビルだった。それも一つや二つなどではなく、目に映るもの全てが金色の輝きを放っていた。
「圧巻だよな。ゴールド・ラッシャーは元々金工を生業とする組織だったからな。金はふんだんにあるからな。世界の金製品の九割はここ産だから」
「…すごい大金持ちってこと?」
「すごいお金持ちってことだねぇ。その金のおかげで兵を雇えて、七大国家になるまで成長したからね」
ベティたちが雑談をしているうちに車は島の道路の上に上陸していた。
「到着っ。とりあえずまだ事は起きてなさそうだね」
街の人々の表情は普通であり、キラードライブに攻撃は受けた感じはない。
「これなら事前にキラードライブを叩けば大成功で終われるんじゃないか?」
「そうだね。ただ一番にマザー・キュートのところに行こうじゃない」
「マザー・キュート?」
ベティはクウコの言った人物に反応した。
「ゴールド・ラッシャーのボス。英雄『悠久の輝き』こと、キュート・P・スマイルマイリーだ。世界的にも珍しい平和主義者なのさ」
「…へぇ」
平和主義者、この言葉にベティは恐ろしいほど驚いた。そんな者が七大国家のトップであることに、こんな世界でそんな人間がいることに。
(てか、平和主義なんて言葉が存在してたんだ。この世界)
ベティたちを乗せた車は停止した。目の前にはこの世界で一番と言っても過言ではないほどに豪華で煌びやかで、巨大な黄金の宮殿がそびえ立っていた。
「着いたな。とっとと仕事終わらせちまうぞ」
「ここに来る途中もそうだったけど…キレイだね。街全体が基本壊れてない」
外に出たベティがそんなことをつぶやいた。今まで見てきた街並みはどれもキズがついており、ものによっては半壊状態で放置されてるものもあった。
それに対してこの島の建物は比較的キズが少なく、黄金の輝きが保たれている。
「ここの治安がいいんだよ。一日の平均死亡者数は十人程度だって話ね」
クウコがそう言いながら宮殿の門を越えた瞬間、クウコの顔面スレスレを銃弾が掠める。
「なーにが治安いい、よっ!」
ベティが魔法を放つ構えをするが、それを横からティアが止まる。
「いやー、アポなしで知らないヤツが自分の城に入ってきたらさすがに攻撃してくるよ、きっと」
クウコはアティアの言葉に頷きながら両手を真上に挙げて、攻撃してきた相手に向かって大声を張る。
「アタシたちはキングリーパーの人間だよ!アンタらを助けに来たのさ!」
クウコがそう叫ぶと、宮殿の柱の裏から一人の女性が姿を現す。フリフリの服に身を包み、両目は黒髪で半分隠れていて、左頬には赤の、右には白のハートのタトゥーが彫られている。
両手に二丁の拳銃を持ったその女は銃を構えながら近づいてくる。
「今、不定期に謎の攻撃を受けてる。知らない人は入れれない。それにお母さんに来客が来るって言われてない」
(一言連絡してから来るべきだったかね)
クウコはとりあえず対話を試みようとする。
「キミ、名前なんて言うのかな?」
「…ティンクル・スマイルマイリー」
クウコは名前を聞いただけだが、ティンクルは異常な程の警戒を見せる。
「ティンクル、私はクウコ・リグレッツさ。一ヶ月前にアンタのボスから助けてくれって呼ばれてきたんだよ。少し話がしたいから…入れてくれないかい?」
クウコが友好的な姿勢を見せながら一歩、前へと足を出した。
「動くな!!」
ティンクルが顔を怒りで歪めながら、弾丸を乱射する。
銃弾は飛んでくる。戦う気が微塵もなかったクウコはただ驚くことしかできなかった。しかし、気を張っていたベティはクウコの前にアイスウォールを生み出す。
「っ!あ、ありがとよ。ベティ」
「礼より前見て!」
クウコはベティに蹴り飛ばされる。その直後、クウコがいた位置を銃弾が通過する。
「貴方たちが何者かは関係ない。ファミリーじゃないなら…全員抹殺対象」
ティンクルは銃弾を乱射して敵対の意志を見せる。




