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聖女の成り下がり  作者: 森宮寺ゆう
第一章 『希代の革命者』
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第26話 ドライブ中の誘い

「ふーん。なるほどね。ルッテルのせいで私は任務に向かわされてるのね」

「そうそう。ルッテルが忘れてたってさ」

 クウコが昼にルッテルと話したことや任務を行うに至った経緯を聞いていたベティが、話を聞いていてふと生まれた疑問を口に出す。

「ちょっと思ったんだけどさ…キングリーパー内の階級ってどうなってるの?部隊長に団長。さっきの話でクウコは総指揮長ってのいるらしいし」

 ベティの言葉を聞いたクウコは少しの間虚空を見つめてから口を開く。

「いろんな所拉致してきた奴隷兵が一番位が低い。その次がただの雑兵、ベティのような多少の自由が確保された人間のことだね。そして、部隊長。雑兵が二万くらいなのに対して部隊長の数は四十人程度しかいないのさ。その上にいる団長はアンタが会ったあの二人だけだよ。そして、総指揮長がキングリーパーのトップさ」

「ふーん。じゃあ部隊長ってすごいの?クウコは部隊長なんでしょ」

「そうだね。ただ…やっぱり団長、総指揮長になりたいね」

 クウコがベティの顔を見つめながら言う。ミースとアティアも不敵な笑みを浮かべながら頷く。

「そんなに欲しいの?総指揮長の座が」

「たりめぇだ!総指揮長になれば名を上げれる。それに伝説(レジェンド)に近づけるんだよ」

「…やっぱり、伝説(レジェンド)ってのはすごいの?」

 ベティがそんなことを言った瞬間、クウコたち四人は一斉にベティに顔を近づける。

「すごいに決まってるよ!伝説から見る景色はとてつもないの!この世界の一握りしか見れない世界を見たいのよ」

「そうだぜ。この世界に生まれ落ちたなら一度は夢見るんだよ」

「ああ、その気持ちは大小様々だがな。お前も憧れたことあるだろ?初めて会った時に言ってただろ」

 ベティはビリーに言われて、攫われた日に自身が言った言葉を思い出した。

「あ、そういえば…でも私にはあなたたちほどの熱量はないよ。そもそも生きていた環境が違うし」

「環境が違う?何を言ってるんだい?」

「ん?昨日言ったでしょ?私はこの世界とは違う、異世界から来たって」

 ベティの言葉を聞いたクウコは思い出したようで静かに頷いたが、納得いってなさそうに振り返ってベティを見る。

「そん時は酔ってて流してたけど…アンタ、だいぶ意味分からないこと言ってんね」

 クウコの言葉でビリーとミースも思い出したようで顔を見合わせる。

「え、みんなあの話信じてなかったの?」

 酒で感覚が鈍っていなかったアティアは、ベティが話したことに疑問を持っている様子はなく、驚いている皆に向かって言う。

「信じれるワケないだろう。あまりにも現実味がないじゃない」

「魔法を見た時点から現実味もクソもないよ。それにここで信じようと、信じまいと同じじゃない?」

 アティアの言葉にクウコは口ごもる。実際クウコもベティが魔法を使えることは知っている。クウコもベティがこの世界の常識からかけ離れた存在であることは十分理解している。

「まあ、この話はいいだろ。ベティがどっから来たかとか、どうでもいい」

 ミースは話の軌道を変え、ベティに肩を組んで話しかける。

「ここで重要なのは、お前が伝説(レジェンド)になる気ががあるか、ないかだ」

「…それ、重要なの?」

 首を傾げるベティの顔色を窺うミースに怪訝そうな表情を見せる。アティアとクウコも同じようにミースを見守る。

「興味はある、って言ったでしょ?ただ、私の前に現れる人間は全員ぶっ潰すよ」

 ベティの言葉にミースはニヤリと口角を上げる。どうやら満足いく回答だったらしい。

「じゃあよぉ。オレらと、一緒に…伝説(レジェンド)にならねぇか?」

「いいよ。元々伝説に興味はあったし。けど、伝説(レジェンド)ってのに協力してなれるもんなの?」

「無理だね。まず総指揮長にならないとスタートラインに立てないよ。まず名をあげないといけないのさ」

 ベティはバックミラー越しに映るクウコの苦い顔を見て、疑問そうにつぶやく。

「じゃあどうやったら総指揮長になれるの?死体を積む?」

「そのやり方もあるけど、ほぼ不可能さ。総指揮長が直々に育てている兵士が数百人いる。名前は総指揮長専属部隊といってねぇ。ソイツらから次代の総指揮長に選ぶだろうさ。少なくともただの部隊長やその部下に譲らないだろうよ」

「じゃあ…どうするの?」

 ベティの問いかけに少し間をおいてからニヤリと笑みを浮かべて力強く言う。

「総指揮長の座を空席にするのさ、殺してでもね」

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