第24話 合流
「ふう。危なかった」
アティアは火で燃やされて脆くなった木の壁を突き破って外に飛び出す。
「わーお。すご」
アティアが振り返ると、そこには天まで燃え上がる炎の塊があった。木をメインに使われた建物だったため、ほんの数秒で炎に包み込まれてしまっていた。
アティアは燃え上がる店に群がって来た野次馬達を押しのけてミースを探す。
「ミース?どこ~?もしかして…まだ中にいるの…?」
アティアはキョロキョロと見渡すがそれらしい人影は見つからない。アティアの頭に嫌な想像が駆けめぐる。そんな中、野次馬たちの困惑の声が聞こえてくる。
「お、おい!また中から人が出てきたぞ!」
アティアが突き破った壁から黒焦げの人間がフラフラとした足取りで現れた。全身が真っ黒でその人物が何者かが判断できない。アティアはもしかしたらミースでは?と思ったが、瞬間でその考えは消し飛んだ。
その人物は骨格からして男である。そしてなにより、開いた口から見える銃身はその男が何者か特定するための決め手となった。
「ペッチ!?あの炎の中、生還したっていうの!?」
ペッチはかすれた、猛獣のような雄叫びをあげながら銃身をアティアに向ける。
「うがぁぁぁ!死ぃにやがれええぇぇぇえ!」
ペッチの口から大量の弾丸が飛んでくる。ペッチの死を確信して、緊張の糸が切れていたアティアはその弾丸を数発食らってしまった。
(うっぐぅ。まだまだ戦う気なの!?)
ペッチはなりふり構っていられないといった様子で野次馬たちに当たっても気にしていない。
「厄介だね、ホンット!」
一発でも当たった瞬間からペッチのペースに入ってしまっていた。さっきは数分間も避け続けられていた攻撃を、既に何発も食らってしまっている。
(やばい。アイツにおされてしまっている。これはマズいな)
アティアは遮蔽物に隠れて形勢を立て直そうするが、それを許さないペッチは立て直す暇を与えないように必死で追いかける。
「逃ぃげようとするなぁぁぁあ!」
ペッチは首をぐわんぐわんと振って弾をあらゆる方向に弾を飛ばす。
「くっ!」
顔を両腕で隠したため頭に命中することは無かったが、それなりのダメージを受けてしまった。
(とにかく逃げて、チャンスがくるのを待って、そこをやればいい)
アティアは弾丸を避けながら後方に下がろうとする。
「逃がさないとぉ…言っただろおおぉぉぉ!!」
ペッチは逃げようとするアティアの腹部を撃ち抜く。攻撃を受けたアティアは後ろに向かって倒れていった。
(ヤッバい!)
ペッチは口を大きく開き、地面に転がるアティアに弾丸を放つ。その弾丸をうつ伏せの状態からクルリと横に転がって避ける。
「無駄なんだよぉ!」
立ち上がったアティアに向かって数発の弾丸を飛ばす。アティアとペッチとの距離ほんの三メートル程度で避けれそうになかった。
(っ!!ヤバい…)
アティアは死を直感して硬直したまま立っていた。目を見開き弾丸を見つめていた瞬間、アティアの目の前を何かが横切ると同時に弾丸が消えた。
「えっ…?」
状況を理解できていないでいるアティアの真横から五発の弾丸が飛んでくる。そしてその弾丸はペッチの体を貫く。
「ぐぅ、あああ!」
何者かの銃撃を受けたペッチが膝をついているところで、さらにペッチの顔面に拳が飛んでくる。
「どこの、どいつだぁ~!?オレの、妹に…手ェ出してんのはよぉ!」
「て、てめぇ…」
一人の女性が怒号を発し、ペッチを見下ろしていた。アティアの視線の先には壁にもたれながらペッチに向かって指をさすミースの姿があった。
「ミ、ミース!」
「はぁ、くそぅがぁ…戻って、来やがったのか…いや、結局二人を殺すのは決まってたんだ」
ペッチは勢いよく立ち上がり、顎が外れるのではと思うくらい口を開けてミースに銃口を向ける。
「まとめて、地獄に送ってやるよぉ!!」
「地獄に行くのはお前だけだよ!」
ミースはペッチの真正面からぶつかりにいき、口の中の銃身を殴り壊す。
「ほーら、お終いだよ!」
ミースは拳を口の中で広げて指先にあいてある穴から小さな銃弾が射出される。
「うっ!?ごぼっ!」
ペッチは悲鳴をあげながら前に倒れていく。そして、ペッチの顔の位置がミースの腰まで落ちてきたタイミングで勢いよく膝を持ち上げてペッチの顔面にめり込ませる。
「あばよっ」
ミースは蹴り飛ばされて後方に跳んでいくペッチの眉間にトドメの一発を撃ち込んでからアティアに歩み寄る。
「はぁ~。気分わりぃ。派手に暴れたせいで頭がクラクラするんだけど」
ミースはアティアの背中に乗っておぶってもらおうとする。
「ミース…すごいタイミングで現れたね。もしかして見てた?」
「んなワケないだろ。店燃えたりしたから探してるところに出会ったってだけだ」
ミースはアティアにおんぶされながらため息を吐き、進行方向を指さす。
「さすがに今日はこれ以上飲めねえな。とっとと帰ろうぜ」
「はいはい分かったよー」
アティアはそう言いながらミースの指さした方向にゆっくりと歩いていった。




