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聖女の成り下がり  作者: 森宮寺ゆう
第一章 『希代の革命者』
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第21話 跳飛の弾丸

「え…?」

 ベティが間の抜けたような声を出す。その直後だった。

 ゴドが真上に放った銃弾は建物と建物の間に架けられてあった鉄骨に偶然当たり、跳弾して真下へと飛んでいく。そして、その弾は見事にベティの頭を撃ち抜く。

「ベティ!!」

 跳弾によって威力が下がっていたため、傷は浅く、脳に達していなかった。しかし、弾が頭に直撃すれば危険であることは誰でも分かることだ。

 ベティの頭に銃弾が入っていくのを見た二人は駆け寄ろうとするが、ピタリと足を止める。ベティが僅かに顔を上げたからだった。

「…ヒー…ル…ゥ」

 ベティにできた銃創がキレイに塞がる。

 倒れかけていたベティは踏ん張り、ゴドの顔を思いっきり蹴りあがる。

「やるね。あんな攻撃するなんて。けど…私の方がもっとすごいのよ!」

 ベティは蹴り飛ばしたゴドを壁際に追い込んでアイスランスを放つ。ゴドはそれを避けるが、避けた方向から飛んでくる分銅鎖に頭を打ち付けられる。

 しかし、ゴドはそのまま追撃を食らう前にベティから距離を取り銃を構える。

「死ねっ!」

 片手のみの不完全な構えで撃ったため、反動に肩が耐えきれずに脱臼する。しかし、そんなことを気にしている場合では無かった。負傷した状態だとしても撃つ手を止めない。

(こいつ…あと一撃で殺せるのに、その一撃がなかなか入れられない)

 計算された攻撃なのか、ただの偶然なのか、ゴドの放った弾丸はゴドを守るかのように周りを跳ね、ベティたちを寄せ付けないでいた。

「アイスランス!」

 ベティが放った氷の刃がゴドへと向かっていく。しかし、ゴドに近づくにつれ、すごい勢いで跳弾する弾丸に削られていき、ゴドのもとにたどり着いた頃には赤ん坊が片手で包み込めるくらいのつぶてとなっていた。

(魔法が届かない。あの防御をどうにかしないと…)

 弾丸はゴドの前後左右、上すらも隙間なく飛び交い、手の出しようがない。

「どうすんだ?アレ。ベティの魔法でダメならオレらは無理だぜ?」

「そうね…まあ、幸いアイツは自分の周りを飛ぶように撃ってるようだけど…向こうに余裕が生まれれば攻撃に転じるだろうね」

「とっととあれを突破しないとじゃん」

 しかし、突破する手立てなんて無く、二人が困っている中ベティが、スッと一歩前に出る。

「…ベティ。てめぇの魔法はさっき防がれたじゃねぇか」

「いや、あいつの頭上にも弾が飛んでるでしょ?」

「あぁ、そうだね。上からも攻めれねぇな。あまりにも完璧すぎる守りだぜ」

 ビリーの言葉にフルフルと首を振りながら否定する。

「まぁ、完璧な防御ではあるけど、私にはそれを突破する策があるのよ」

ベティが不敵な笑みを浮かべる。それを聞いていたゴドは驚きの表情を見せるが、ハッタリであると自分に言い聞かせることにした。

(何を…してくる。いや、下手に動かない方がいい。大丈夫、大丈夫なハズ…)

 ベティの奇妙な魔法を警戒したゴドは防御のための弾丸を増やした。

「残念。それが一番の悪手なのよ。アイスウォール!」

 ゴドの足元から氷の壁がせりあがってくる。

「なっ!?」

 ゴドは地面から隆起する氷の壁に体を持ち上げられる。唐突に足元が揺れ動いたことに驚いていたゴドだが、即座にに自分の状況を理解した。

(この高さは…)

 氷の壁に押し上げられたゴドの頭の位置は丁度、銃弾の通り道にあった。さっきまで自身を守ってくれていた弾丸は一転し、ゴドの脳を貫こうと襲いかかる。

 そして、運が悪いことにゴドの左右から銃弾が飛んでくる。

「そんな防御方法をとらなかったら勝てたかもね」

 ベティは勝ちを確信した。しかし、ベティはゴドの諦めの悪さを甘く見ていた。

 ゴドは今にも引き千切れそうな腕で右から来る銃弾を防ぎ、右から来る銃弾をスナイパーライフルで防ぐ。完全に防ぎきれはしなかったが、威力の落ちた銃弾がゴドの命を奪いまではしなかった。

「なんて、瞬発力なのよ」

「いや!チャンスだよ!今なら銃弾のバリアは無い。さっきのを逃れたとしたもアタシたちが圧倒的優位に立っていることには変わりないさ!」

 ゴドの腕は完全に体から離れて、銃はキレイに撃ち抜かれて使い物にならない。どう見てもこれ以上のやりようがない。

 クウコの叫びに応じるようにベティがゴドに向かって手を突き出す。

「…私は、負けた。けど、お前たちも…負けた」

 ゴドがギロリと睨みながら言い放つ。

(この目…何かまだ持ってる!)

 ベティはゴドの言う何かを恐れて大きく後ろに後退りする。

「私から離れても…意味は無い」

 ゴドはジーッとベティを見る。そして、ゴドを見ていたクウコはある事に気がつく。

「…!アンタ、何処を見てんだい!?」

 ベティを見ていると思われていたゴドはの目線の先は、ベティの背後にのびていたのだ。

 それに気づいたクウコが振り返る。

「っ!?車!?」

 クウコたちの背後に車がすぐそこまできていた。それも、三台が道を埋め尽くすように並走している。

「ベティ!ビリー!アタシの手に掴まりな!」

 空中に避難したクウコが二人の手を握って上昇していく。

「待ってよ!逃げられる!」

 先頭を走る車の助手席から一人の男が身を乗り出してゴドを捕まえ、そのまま連れ去る。

「今回は、これで終わる。けど、私が絶対に殺す」

 ゴドはそんな言葉を残して車の中へと消えていった。

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