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聖女の成り下がり  作者: 森宮寺ゆう
第一章 『希代の革命者』
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第16話 ケンカ

 フールの号令で下っ端たちはまずミースを狙う。

「こんな雑魚を集めてもオレは殺せないぜ」

 ミースは一番近くまで迫ってきている男の額に人差し指を当てる。そして、腕の中に内蔵されてあった銃弾を発砲する。

「くっ。囲んで殺すぞ!」

 一人の下っ端がそう叫ぶと、他の奴らはそれに従う。

 アティアが一人の下っ端の頭にビール瓶を叩きつける。叩きつけられた下っ端はその衝撃で前に倒れてしまい、そこをミースが射殺する。

 人数的には下っ端たちの方が多かった。しかし、それでは覆らないほど力の差があった。ミースとアティアの二人だけで次々と下っ端たちをなぎ倒していく。

「ク、クソッ。お前ら!やっぱ下がってろ!全滅しちまうだろ!」

 膝をついて見ていたフールが立ち上がったところを、クウコが思いっきり蹴り飛ばす。フールは派手に吹き飛び、机や椅子を巻き込みながら転がる。

「…強い?こいつが?どっからどう見ても雑魚なんだけど」

 ベティは室内中に転がるフールたちを見て疑問そうにつぶやく。

「コイツの実力は中の下程度だ。といってもアタシらとコイツの戦闘スタイルが全く違うのさ。アタシらが好きなのは乱闘スタイル、コイツの得意なやり方はサシ。一対一になると突然強くなる」

「へぇ」

 ベティが興味無さそうに相槌をうつと、店員が申し訳なさそうにクウコに近づく。

「あ、あの。すいません。あまり暴れられると他の客に迷惑がかかって…」

 クウコはそう言うと店員の顔を見て、少し嫌そうな顔をする。

(うーん。この店のものは美味いからいいんだよね。このまま暴れれば出禁、最悪処分される。それは面倒だね)

 クウコの脳内では『面倒くさい』という考えが大半を支配していた。もちろんフールにはそんな考えはなく、死ぬ気で戦っている。

「すまないね。それじゃあ…この店のルールに沿ってやらせてもらおうか」

 この店のルールとは、一対一の喧嘩呑みである。店員もクウコの言葉に同意するように頷く。

「そうしてもらえると、うれしいです」

 店員の言葉にミースは戦闘を止め、近くに置いてあった椅子に腰をかける。

「フール。デスマッチでもしようじゃないか。ケンカのね」

「…デスマッチ?喧嘩呑みをするなら報酬が必要じゃねぇか?報酬が無いなら俺はやらねぇぞ?」

 フールは報酬がどうこう言っているが、実際は報酬なんて用意できないとたかをくくり、逃げる理由を作らせようとしていた。

「…アティアをやるさ」

 クウコの言葉にフールは口を開け驚いていると、思わず小さく笑う。

「いいのか。あんなにアティアを渡すことを嫌がってたのによ」

「もちろん。勝てたら、ね」

「どーゆう了見だ、クウコ。誰が戦うんだ?指定が無いならアタシがリングに立つぞ。腕っぷしだけなら」

 自身の妹を報酬にされたミースは怒り心頭といった感じでクウコの肩を掴む。

「安心しなよ。無策でこんなことはしないさ」

 クウコは肩を掴むミースの手を払いのけ、ベティに視線を送る。

「ベティ。アンタが行きな」

 ベティもまさか自分が指名されると思っておらず、びっくりして口を手で覆う。

「おい。お前もあいつの力を知ってるだろ?オレは実力も知れない女に妹は頼めないぞ」

「ああ、そうさ。フールはサシだと強い。だからベティの実力を知るのに丁度いいじゃない?最悪ベティが死んでも、その後にアタシらでフールを殺しちまえばいいのさ」

 クウコはミースに耳打ちすると、もう既にステージの上に立っているフールを見る。

(この距離なら逃げれそうだけど…いや、フールが()()()()を連れて来られるよりかはここで仕留めた方がマシか)

「…なりいいが。ベティ、アイツをとっとと殺せよ」

 ミースは右拳でベティの胸を強めに叩くと、ステージへと送る。

「言われなくても、あんなの殺すよ」

 ベティはそう言いながら余裕の表情でステージへと向かう。

 一部始終を見ていた客たちはベティが前に出たことに相当驚いていた。なにせ、ベティは今回の話では完全に蚊帳の外だった。それは何も知らない客にもなんとなく伝わっていた。

「ハハッ。なんだ?これは遠回しに俺にアティアをくれるって言ってるようなもんだろ!」

 ステージの上に立ったベティを見たフールは思わず吹き出してしまった。

 フールはベティよりも二回りくらい大きく、この段階でフールは勝ちを確信していた。

「おーいおいおいおいぃ!わざわざ死ぬためにここにあがるなんて、バカだなぁ!」

 さっきまではクウコやミース相手にコテンパンにやられていたが、ベティが相手と分かった途端、ここぞとばかりに煽る。

「…うるさい。さっさと終わらせるよ」

 ベティは静かに冷たく、フールの目を見つめる。フールはその目を見た瞬間、体がわずかに震わす。

「…ハッ」

 さっきまで調子に乗っていたフールが顔が引きつらせ、強がりな笑みを浮かべるだけだった。

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