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聖女の成り下がり  作者: 森宮寺ゆう
第一章 『希代の革命者』
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第15話 飲み騒ごう

「来たぞ」

「トーチャク~!」

 ミースがやって来た数秒後、二人の男女がベティたちのもとに現れた。一人はナタで、もう一人はミースと似た顔立ちの女性だった。しかし、ミースとは雰囲気が全く違く、フワフワの金髪をなびかせながら、愛らしい笑顔で話しかけてくる。

「えへっ。初めまして~、ボクはアティア・ココラだよ」

「ココラ…姉妹か?」

「そーだよ。へへっ、似てるでしょ」

 アティアはビリーに向かって手を振り、ミースの隣に椅子を引き寄せてドカッと座る。

「全員揃ったね。こいつがベティ・ジャッタリー、こっちはビリー・サンセットだよ」

 クウコの紹介を聞いていたミースはビリーの体を見て、ニヤリと笑う。

「ふーん。そうか、ビリー。腕っぷしに自信はあるかぁ?」

「あー、どうだろうか。男にしては弱い方だと思うぜ」

 ビリーが淡々と言うと、ミースは驚いた表情で開いた口を手でおさえる。

「んなワケ…そのガタイでかよ」

 そんな事を言いながらミースは右ひじをテーブルの上につける。

「ま、いい。ビリー、オレと力試しをしようぜ」

「ワッ!出た。ミースのワルイクセ。自分の力自慢しておかないと、気が済まないんだよね」

 悪戯っぽく笑うアティアの横でビリーも不本意そうにテーブルの上に肘を立てる。ちなみに料理はそのままの状態なため、勝敗関係なくテーブルの上の大惨事は確定している。

「んじゃ始めるよ。3…2…1、ゴォ!」

 アティアの合図とともに両者は腕に力をこめる。

 まず、最初におしたのはビリーだった。ミースの手の甲とテーブルとの距離がゆっくりと縮まる。しかし、誰もこのまま決着がつくとは思っていなかった。

 ビリーは歯を食いしばり、両目をギュッとつぶっていかにも本気といった様子だった。それに対してミースは笑顔でまだまだ余裕といった感じだ。

「さあさあ!大逆転劇の始まりだぁ!」

 ミースの手の甲とテーブルの距離が拳一つ分くらいになったところで、ついにミースが本気を出した。

 わずか数秒で開始時と同じ状態まで押し返す。そして、ミースは止まることなく、どんどんとビリーの腕が倒れていく。

「おっわりだぁー!」

 ミースは力をふり絞ってビリーの手をテーブルに押し付ける。ビリーは抵抗することが出来ずに、バランスを崩して転げてしまった。

「しゃあ!オレの勝ち。想像以上に弱いんだな。女みたいじゃん」

 地面に仰向けになって倒れているビリーを指さして嘲笑う様に言う。

「はぁ…ったく、そりゃそうだろ」

 ビリーはほんのり腫れている手をおさえながら立ち上がる。

「さささっ。今度はベティが…チッ、マジか…」

 ミースがベティに話しかけようとした瞬間、笑顔から険しい表情へと変わった。さっきまで楽しそうにしていたミースのテンションが明らかにダウンする。それはクウコもアティアも同じで一斉に顔をしかめていた。

「騒がしいやつらが居ると思えば…アティアどもか」

「チッ、失せろ。アティアには指一本触れさせないぞ!」

「は!急にひでぇな。なんだぁ?俺はただ酒を飲みに来ただけだぜ?」

 ミースの視線の先には、数人の下っ端を連れた金髪オールバックで、上半身裸で自分の筋肉を見せつけている男がいた。

「…誰?こいつ」

 ベティはクウコにだけ聞こえるくらいのボリュームで話かける。

「フール・ユンカン。最近アタシら…特にアティアに絡んでくるギャングのボスだよ。なんか、アティアに一目惚れしたってよ。しかも厄介なことに無駄に力を持ってるから簡単に手を出せないのさ」

「…ふーん」

 二人がそんな話をしている間もフールとアティアは色々言い合っていた。

「おいおい、いいじゃねぇか。俺の女になれよ、悪い思いはさせないからよぉ」

「イヤって何度も言ってるでしょ!本気で殺すよ!?」

 アティアは本気で嫌がっている様子で、ミースの後ろに隠れる。

「お前がどんなことをしようと、オレの妹はやらねぇよ!」

 ミースは近づいて来るフールを思いっきり突き飛ばす。いきなりの事で対応できなかったフールは後ろに倒れてしまった。

「ボ、ボス!?」

 フールの後ろに立っているだけだった下っ端の一人がフールを立たせようと近寄る。

「体幹ザコ過ぎるだろ…」

 思いっきり体を地面に打ち付けるフールの姿を見てビリーがポツリとつぶやく。その言葉を聞いたフールは顔を真っ赤にして立ちあがる。

「黙れ!いつもいつも…邪魔してきやがって。アティアをとっとと俺に譲ればいいだけの話なんだよ!」

 フールはナイフを取り出すと、それをミースに突きつけて威嚇すると、ミースも手で銃の形を作り、フールの額に指を向ける。

「そっちがその気ならこっちもやってやるよ!」

 ミースの指先にあいている穴から銃弾が飛び出す。

「オワッ!?」

 ミースに攻撃をしようとしていたフールは、飛んでくる銃弾を慌てて避ける。

「ッ!てめぇ!」

 自身のボスが殺されそうになった下っ端たちは怒りをあらわする。そして、それぞれが武器を取り出し、ミースたちに突っ込む。

「お前らぁ!こいつをブチ殺してやれ!」

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