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聖女の成り下がり  作者: 森宮寺ゆう
第一章 『希代の革命者』
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第11話 正式入隊

「話?それって後ろの子たちが関係してるのかな?」

 パソコンから目を離したルッテルはクウコの後ろで立っているベティたちを指さす。

「ええ、こいつらをアタシの部隊に引き入れたいんだ」

「うーん。違ってたらゴメンけど…その子たちはアニナが目をつけた子でしょ?怒られるかもよ?」

「それもこみでアンタに相談しに来たんだよ」

「うーん。まぁいいんじゃないの?正式にアニナの部下ってわけじゃなかったし」

 あまりにもあっさりと承諾されたことに少し拍子抜けだったクウコはポカンと口を開ける。

「あー。アタシ的には嬉しいんだけど、こんな簡単にオッケーだして良かったのかい?」

「いいよいいよ。最近アニナ調子のってる節があるからね。たまにはくやしそうな顔を見せてもらわないと」

 不敵な笑みを浮かべるルッテルはベティたちを指して言う。

「じゃあ、二人は正式にクウコの部隊に入れるってことでよろしくね。また今後隊服や武器を送り付けとくよ」

「ありがとね。言いたいことも言ったし、アタシは帰らせてもらうよ」

 クウコは部屋を出ていき、それに続こうとしたベティをルッテルが止める。

「ベティ…だったよね」

「もう名前を知られてるし…で、なにか用?」

「いーや特に意味はないけどね。アニナから聞いてたんだけど…ホントおもしろそうな子だね。期待してるよ」

 ニコニコと笑いながら話し出すルッテルに少し呆れ顔で返答する。

「変な期待をしないで欲しいな。私ここに来てから期待されまくってるのよ」

「そうだろうね。相当な実力者なら君の異質さが分かるだろうね」

(異質…間違ってはないかも。私はこの世界の人間ではないし、魔法を使えるし)

 ベティはドアに手をかけると、首だけをルッテルの方向に向けて言う。

「とりあえずはがんばるよ。あと、期待しすぎても後悔するよ」

「ふふっ。頼もしいよ」

 ベティはルッテルの言葉を受け止めながら部屋を出ていく。

「お、戻って来た」

 部屋の前に待っていたビリーが軽く手を振りながらベティを呼ぶ。

「なにを言われたんだい?」

「期待されるってさ」

「良かったじゃねぇか」

「いい迷惑」

 ベティは心底めんどくさそうに頭を掻くと、クウコに問いかける。

「で、私たちは今後何をしたらいいの?」

「さぁ、どうだろうね。アタシたちは上から仕事がくるまで基本何もしてないからね」

 クウコは口を動かしながら、二人を手招きすると、長い廊下を歩き下の階へと向かう。

「それとアンタらはアタシの家に住まわしてあげるよ。その方が色々と話やすいからね」

「何を話すんだよ?」

「色々、って言っているだろうよ。うるさいねぇ」

 クウコはあやふやな回答をしながら無理やり話を代えようとする。

「それと、アタシの部隊のやつら歓迎会でもやってやるよ」

「クウコの部隊って、何人くらいいるの?」

「覚えてないよ。人数が多いうえに入れ替わりが激しい。ただ、ずっと居座ってるやつは五人いるね」

 淡々と話していたクウコが横に立っているベティから視線を外して前に目を向ける。

「…うっわぁ」

 廊下の向こうからアニナがとてつもなく不服そうな顔でクウコに向かって歩いてくる。その原因が自分にあることが分かっていたクウコは深いため息を吐く。

「あ…あぁ、なんの用だい?団長さんよ」

(こいつ、団長だったんだ)

 殺気に満ちた目で睨むアニナに気圧されたクウコは少し言葉を詰まらせる。

「…さっき、ルッテルから連絡があったんだ。ベティが君の下についたって言われたんだ」

 アニナはぐいぐいとクウコに詰め寄る。

「…私、欲しいものは絶対に手に入れないと気が済まないの。ここに来てそれなりに経つ部隊長さんなら知ってるよね?」

「あー…っと、アンタがベティのことを狙ってるなんて知らなかったんだよ」

 興奮状態のア二ナと距離をとりたいという気持ちが強まり、適当なことを言いながら後退りをする。

「…逃げようとしてるよね?」

(あー、なんなんだい。こいつは…)

 クウコの胸ぐらをガシッと掴み、あいていた距離をゼロにする。

「あぁ、すまないよ」

「…分かったなら、私にそれを譲り…うっ!?」

 ベティがアニナを蹴り飛ばした。その瞬間、廊下を歩く人たち全員の顔がサーッと青ざめる。

 なにせ、アニナの実力を知る基地内の人間なら喧嘩を売る者はまずいない。

「譲りなよって。私が誰につくかを、私抜きで話してんじゃないよ」

(バッカじゃないの、ベティ!?武器もない状態でアニナに殴りかかるとか自殺行為だぞ!)

「…君死にたいの?」

 クウコに向いていた殺気がベティの体を突き刺す。あまりにも大きすぎる圧に一瞬足がすくむ。

「ッ!?私は…クウコにつくわよ。あなたについても雑に扱われて終わるのが目に見える」

 アニナの圧に対抗しようとジッと睨みつけるが、まだ殺気に慣れていないのか腕が僅かに震えている。

「…へぇ。ここまで生意気なガキは、久しぶりに見たよ」

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