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聖女の成り下がり  作者: 森宮寺ゆう
第一章 『希代の革命者』
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第10話 キングリーパー本部

(ん?何か…騒がしいわね)

 ベティの耳に誰かの声が届いてくる。

「ほれ!ベティ。早く起きなっ!」

 クウコの叫び声のような目覚ましでベティは意識が完全に取り戻し、ボケッとした表情でベッドから出てくる。

 しかし、クウコの顔を見た瞬間、寝ぼけた顔から驚愕の表情へと変わった。

「クウコ!?」

 ベティは飛び起き、クウコに魔法を放とうとする。それを察知したクウコは慌てて両手をあげ、敵意が無いことを示す。

「おっとっとっ。もうアンタを殺す気なんてないんだよ」

「それで信じると思ったの?」

「信じてもらわないと困るんだよ。あと、少しはアタシの話を聞きな」

 ベティが机の上に置いてあった拳銃に手にかざすが、何者かによって取り上げられてしまった。

「はい、没収だぜ」

 ビリーが拳銃の銃身部分を親指と人差し指で掴み、ベティの顔を覗き込んだ。

「よう、ベティ。とりあえずは信じてやれ。ここ二日はお前を寝かせてくれたんだぜ」

 ベティは驚いたような様子でビリーを見つめ、そのまま首をクウコに向ける。

「えぇ、確かにアンタを寝かせたよ。殺す機会なんてバカみたいにあったよ」

「そう、あなたにどんな心変わりがあったかは知らないけど…とりあえずはありがとね」

 ベティはクウコに放っていた殺気を抑え、ベッドの上に座る。

「で、なんで私を助けたの?」

「簡単。アンタらをアタシの部隊に入れたいな、ってだけだよ」

「なんで急にそんなことを?殺しにかかったと思ったら今度は仲間にしたいって…」

「詳しくは言えないけどアンタが必要なのよ」

「詳しくは話せない?あなた、私に信じてもらうつもり無いでしょ」

「お願いだよ。それでもアタシについて来てくれないかい?」

 ベティは曖昧なの不信感を持ちながらも首を縦に振る。

「そう言ってくれて良かったよ。もう少し時間が経ったら教えてあげるからよ」

 クウコはベティの肩を両手で掴みながら嬉しそうにつぶやく。

(今は言えない…何が目的なんだろう?)

「とりあえず、アタシについて来てくれないかい?アンタらの事を上に報告しないといけないんだ」

 クウコはタンスから黒いコートを取り出す。背中と左胸には片目の潰れたドクロのマークがついている。

「暑そうね」

「これが制服だからね。それに見た目ほど暑くないんだよ」

 そう言いながらクウコは二人の手をとり、外へと引っ張る。

「今からその報告に行くの?」

「ああ、そうだよ。」

 ベティたちは素直にクウコの後ろをついて行く。

 少し大き目の一軒家から出たクウコは車のエンジンをかけて、二人を乗車したことを確認する。

「はい、発進するよ」

 車が動き出すと同時にゆっくりと離陸していき、高速で雲に向かって突っ走る。

「ど、どこに行く気っ!?どんどん上昇してるけど!」

 このままどこまでも昇っていきそうな車を見て、心配の声をあげる。

「あぁ、ごめんね。アタシの家は地上にあるんだよ」

「いや、どういうことよ。話がかみ合って…無い…よ?」

 車が雲を突き破ると目の前に大きな島が現れた。大陸を丸ごとくり抜いて上空にもってきたような見た目で、底部には島を支えるための大きなエンジンがつけられている。

「わ、わぁ…すっごぉ」

 ベティは初めて見る光景に驚愕と感嘆が入り混じった声で感想をつぶやく。

「なんだぁ?空上都市を見るのは初めてか?」

「は、初めてよ!こんなの見たこと無いわよ」

 ベティは少し興奮した様子でクウコの体を揺さぶる。

「あ、危ないわよ。まあ、田舎とかではなかなか見ないかもね」

 車は空上都市に急接近し道路に着陸すると、市街地を猛スピードで駆け抜ける。

「あれがアタシたちが今から向かうところだよ。キングリーパーの本拠地さ」

 ベティが指さす先には周りの建物と比べて何十倍もの大きさのビルが建っている。周りにはクウコの服にあるマークと同じドクロがかかれた旗が何個も掲げられている。

 クウコの車が門に近づいていくと、閉ざされていた門がギギギッと錆びた音をたてて開く。

「そういえば、盗まれた情報なんだけどね」

 クウコは基地の敷地を走りながら、そう話を切り出した。

「情報の正体はキングリーパー本拠地の内部地図だったんだよ」

「…たかが地図一つであんな大騒ぎしてたの?」

 ベティは自身が命をかけて取り返したものがただの地図だと知ると、あからさまに落ち込む。

「いや、すっごい詳細なものだったんだ。一般公開されてない最上階のことも、無数にある隠し通路も全てが記されてたんだよ」

「それはすげぇ。けど、あんなに兵をつぎ込むような代物とは思えんな」

「そうかもだけど…後々役立ちそうなんだよね」

 クウコがそういうと、車を地下駐車場に停める。

「二人とも。着いたよ」

 クウコが指をパチンと鳴らすと、車の扉が全て自動で開いた。

「ついてきな」

 車を降り、急ぎ足で近くにあるエレベーターへと向かう。

「どこに向かっているの?」

「私の上司にあたる人間、ルッテル・エースのもとに向かうんだよ」

 エレベーターのランプが六階で止まり、扉が開く。

 クウコはそのまま廊下を突き当たりまで歩き、一番端の部屋の扉をノックする。

「ルッテル団長。入るよ」

「ほーいほーい」

 扉の向こうから鼻歌混じりの陽気な返事が返って来る。扉を開けると、机の上に足を乗っけながらパソコンを操作してる男がいた。長い黒髪で、目の周りに大きな古傷を持っている。

「んーっで、クウコ。どうしたんだぁ?それとその後ろは…誰?」

「ええ、ちょっとコイツらについて話があるんだよ」

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