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聖女の成り下がり  作者: 森宮寺ゆう
第一章 『希代の革命者』
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第8話 処刑人

「さぁ、斬り刻んでやるよ!」

 ビリーは腕を変形させながら走り出す。

「チッ。面倒だな」

 クレリアは背後から向かって来るビリーにナイフを投げつける。

「危ないっ!アイスウォール」

 クレリアとビリーの間に氷の壁が現れ、その壁にナイフが突き刺さる。

「まずはあなたから潰させてもらうわ」

 標的をクレリアにしぼったベティは、目の前に立つキャナの横を通り過ぎ、クレリアに向かって魔法を放つ。

「アイスランス!」

 氷の刃が一直線にクレリアの背中に飛んでいくが、僅かに体を反らしたため深く突き刺さることは無かった。

「行かせないよ~」

 キャナはベティの後ろ髪を片手で引っ張る。重心が後ろに向いたせいで、バランスを崩してしまった。そこをすかさずバールでキメる。

「アイスランス!」

 痛みなんてどうってことないといった様子で魔法を放つ。至近距離で魔法を撃たれたキャナは体を傾け、胸部に当たりそうになった氷の刃を自身の腕で受け止める。

「おぉ、それ避けれるんだ」

 感嘆の声をあげたベティの背後からクードゥが迫ってきていた。

「挟み撃ちだっ!」

 背後に立つクードゥが頭に拳銃を突き付け、前にいるキャナがバールを振りかざす。ベティに銃口がくっついた瞬間、体を低くして両方の攻撃を避ける。

「残念!」

 ベティは右腕から出した分銅鎖でクードゥの足に絡みつかせる。

「まずは一人よ」

 分銅鎖でクードゥを引き付ける。クードゥ引っ張られて地から足が離れたせいで、思うように体を動かせずにいた。

 そして、ベティはクードゥの首もとに人差し指をトンッとおく。

「アイスランス」

 空中で避けようにも避けれなかったクードゥの首を四本の刃が貫通する。ゼロ距離ですべての氷の刃を浴びたクードゥは首と胴体が離れていく。

「あんた!クードゥを!!」

 さっきまでビリーと集中していたクレリアは、クードゥが死んだ途端にビリーからベティに目標を代え、ナイフを向けてくる。

「悲しいよね。仲間と死ぬの…分かるよ」

 ベティはウンウンと頷きながらクードゥの頭をキャッチし、向かってくるクレリアに投げつける。

「ガラ空きだよ」

 ベティはクードゥにやった時と同じように、クレリアの首もとに人差し指をつける。

「やめてっ!」

 キャナは奇声に近い怒声を発しながら、バールを叩きつける。これまでとは桁違いのパワーを持った攻撃を受けたベティは吹き飛ぶ。

「わっ!?アブねぇ!」

 少し遠くで援護の隙を伺っていたビリーが慌ててチェンソーを止め、飛んでくるベティの足首をキャッチする。

「ありがと、それと、人数的にはこれで五分五分になったね」

「消耗はこっちのほうが大きそうだけどな」

 ビリーはチェンソーを起動して前へと出る。ビリーが動き出すと同時にキャナもバールを振り上げる。

「君たちは~、生かしちゃいけないよ!」

 ビリーが攻撃する前にキャナはバールを振り下ろす。頭に強烈な一撃を食らったビリーはよろけるが、ベティに背中をグッと押す。

「ぶっ倒れないでよ!」

 ベティは続けてビリーになにかを耳打ちすると、キャナに向かって銃弾を撃つ。近距離で放ったにもかかわらず銃弾をはじき飛ばされてしまった。

「うらっ!」

 キャナはベティの足をひっかけ、転んだところにバールを何度も振り下ろす。

「アイス…ランスッ!」

 キャナがバールを振り上げた一瞬のスキに魔法を放つ。しかし、氷の刃は避けられしまい、そのまま天井に突き刺さりヒビを作る。

(よし、避けてくれたほうが嬉しいわ。ヒビが入ったほうがやりやすいでしょうし)

 ベティはそんな事を考えながらキャナに向かって足を突き出す。蹴りを警戒したキャナはバールで受け止めるが、初めから攻撃をするつもりのなかったベティはバールを強く蹴り、クレリアに向かってジャンプする。

「へ!?」

 遠くから横やりをするつもりでいたクレリアは唐突向かってくるベティに驚きながらもナイフを前に構えたが、ベティにはたき落とされ、そのまま銃口を眉間に突きつける。

「戦場で気を抜いてちゃダメじゃない」

 耳元でささやくように言うと、引き金を引く。避けようのない弾丸がクレリアの脳を貫通する。大量の血と微かな涙を流しながら、その場に力なく倒れていく。

「お前ぇぇ!…本気で殺すぞ!」

 キャナは涙を数滴流し、手のひらから血が出るほどの力でバールを握りしめる。

 あまりにも大きな怒号にベティは耳を塞ぎそうになる。

「今まで本気じゃなかったの?ま、怒る気持ちは分かるけど、先にケンカ売って来たのはそっちらしいからね」

 ベティは拳銃をその場に捨て、キャナに背を向ける。

「どこに行く気なんだよっ!」

「仲間の死からの覚醒。あなたの中ではここからクライマックスって感じだろうね」

「…は?何を言ってんの!?」

 キャナはバールを構えながらベティを睨みつけ、答えが返ってくるのを待つ。

「あなた、私に気を取られ過ぎよ。ビリーはさぁ、どこ行ったと思ってるの?」

「何を言って…」

 部屋中を見渡してもビリーの姿がどこにもない。キャナがそれに気づいた瞬間、頭上から小さな石の欠片が降ってくる。そして数秒後、天井が音をたてて崩れ始めた。

「なっ!?」

 驚きで動けずにいたキャナは鉄筋コンクリートのガレキの下敷きとなってしまった。

「ベティ…こんなでけぇもの切るのに大変だったんだが?」

「結果それで倒せた。それだけでいいじゃない」

 ポッカリと空いた天井から降ってきたビリーが華麗な着地を見せる。

「とりあえずの勝利ね」

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