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聖女の成り下がり  作者: 森宮寺ゆう
第一章 『希代の革命者』
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第7話 乱入

 ビリーの攻撃を恐れたキャナは即座に退散する。

(どーしようかな~)

 キャナは地面に転がるバールをサッと手に取ると、ビリーとの距離を一定に保ちながら考える。

「なんか悩んでるようならこっちから行かせてもらうぜ」

 ビリーはジャンプし、体を回転させてキャナ斬りつける。

 キャナ体を反らしてそれを避け、ビリーの体を思いっきり蹴り飛ばす。

「もう、イッパーツ!」

 よろけたビリーの顔面にバールを叩きつける。真正面から攻撃を受けとめたビリーは余裕そうに笑う。

「効かねぇよ。そんな攻撃」

「やせ我慢が見え見えだよ~」

 実際ただの虚勢を張っていただけのビリーはキャナの攻撃を警戒して動けないでいた。

「そうだな、すっげぇ最悪の状況だ。つか、このチェンソー使いづらいなぁ」

 ビリーは自身の腕をチェンソーを反対の手で叩きながらぼやく。

 そして、これ以上戦闘を続けたら自身が不利になると思ったビリーは早期決着を図り、とにかくキャナの体を斬ろうと腕を振り回す。

「おっと!わっとぉ!」

 ビリーの動きに慣れてきたキャナは、ギリギリながらも攻撃を全て避ける。

「あ…」

 避けてるうちに部屋の隅まで来ていたキャナは壁に背中をくっつけていた。危機的状況というのに、焦っている様子は微塵もない。

「わざわざ逃げ場のない角に来るなんてとんだバカなんだな」

 ビリーは確実にキャナの首をはねようと、チェンソーを力いっぱい横に振るう。

「ふふっ。そんな力入れたら壁に刺さっちゃうよ~」

 キャナはかがんで攻撃を避ける。チェンソーは空を斬りながら、キャナの背後の壁に深く食い込む。

「バカはそーっち!」

 バールを思いっきりビリーの顎を叩きつける。強烈な一撃。脳が揺れ、口から血を吐き、視界を僅かに歪ませながら、仰向けになって倒れる。

 意識はギリギリあるが、立ち上がる体力はない。立って攻撃を避けなければ、さらに追撃がくると、考えることまではできるが、行動に移すことができないでいた。

「君ぃ~。雰囲気的に捨て駒兵みたいだけど…なんで私たちがバレたかとか知ってる~?」

 もうビリーが動けないということを理解していたキャナは近づく。

「クードゥの…後をつけた」

 ここで抵抗しても意味がないことを悟ったビリーは正直にキャナの質問に答える。

「うーん。そっかぁ。やっぱりクードゥの顔は割れてるのか~」

 キャナは小さなため息を一つつくと、棚の上に置いてあった手錠を手に取り、チェンソーの無いほうの手首につける。

「人質、になるかは分かんないけど~。肉壁にはなれるよね~。あ、こっちの手をもとに戻して~」

 動かなくなったチェンソーをチョンチョンとつつきながら言う。

「ここで反抗しても意味ねぇよな」

 ビリーはキャナの言葉を素直に聞き、チェンソーを腕に変形させる。

「は~い、ありがとね~」

 戻った手にも手錠をかけると、手錠の鎖部分をつかんでビリーを引きずる。

「運ぶね~」

 キャナは扉を開け、階段を下っていく。雑に引きずられた無抵抗のビリーは段差に体をぶつけながら連れていかれる。

「は~い着いたよ」

 一階の部屋に到着したキャナはビリーを床に投げ飛ばす。

「終わったのか」

 部屋にはキャナ以外に、クードゥと髪が短みの少女が椅子に座っていた。

「終わったよぉ。クードゥ。クレリア~」

 クレリアと呼ばれた女性はコーヒーを飲みながらビリーを見下す。

「アタイらが助けに行かなくて良かったね」

「うーん。でも、上がぐちゃぐちゃになったけどね~」

「マジかよ」

 三人は敵であるビリーのことなど無視して話し始めた。

「…オレが何もできないと思ってぺちゃくちゃ喋りまくってよ」

 ビリーは悔しそうにつぶやく。拳銃の回収をされておらず、チェンソーを出すこともできる状況だが、する素振りは無かった。

「マールが帰ってきたら、ここから離れようか。増援を送られたら困るわ」

 キャナたちがそんな会話をしていると、扉の方向から乾いた発砲音が鳴る。ビリーやキャナたちが驚きで発砲音のする方向に視線を向けると、拳銃を構えた一人の女性がいた。

「助けに来たよ」

「っ!?て、てめぇは…外でぶつかった女じゃねぇか」

 扉にもたらかかるように立つベティを見て、クードゥが声をあげる。

「うん。そうね。で、私はあなたたちを殺しに来たの」

 ベティは拳銃をしまい、三人に向かって言い放つ。

 あまりにも唐突過ぎるベティの登場に状況を飲み込めていなかった三人は動けずにいた。

「アイスランス!」

 四本の氷の刃を生成し、それぞれを別の方向へと飛ばす。三本の刃はキャナたちの頭を狙って飛ぶが、ギリギリのところで避けられてしまう。

 しかし、この攻撃はおまけ程度で本命はもう一本の氷の刃だった。

「ビリー!あなたも戦って」

 残った氷の刃がビリーを拘束していた手錠の鎖を綺麗に裂く。

「はぁ、もうちょっと休ませてくれよ。オレもヘトヘトなんだけどな」

 ビリーとベティは三人を挟むように立ち、戦闘態勢へと入る。

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