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聖女の成り下がり  作者: 森宮寺ゆう
第一章 『希代の革命者』
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第5話 白昼堂々戦闘

 間合いに入ったベティは、閃光のようなパンチをマールの腹部に放つ。

「ッ!いってぇな」

 マールはベティの手首を握り、路地裏に向かって投げ飛ばす。そして、狭い一本道で避け場のないベティに銃弾を放つ。

(避けようがない)

 ベティは拳銃を抜き、飛んで来る弾丸に向ける。弾と弾がぶつかり合い、粉々になって散る。

「相殺しやがった」

「アイスランス」

 ベティは間髪入れずに魔法を放つ。

「なっ!?」

 アイスランスを避けきることができず、氷の刃が腕を貫通し、その勢いで腕を切断される。マールの右腕が宙を舞い、地面に落ちる。

「あーあ、腕が無くなった」

「黙れ!」

 マールは歯ぎしりをしながら、嘲るように喋るベティに拳銃を向ける。

「遅いよ」

 ベティは素早くマールの間合いに入り、拳銃を突き飛ばす。そして、ベティが銃の引き金を引こうとすると、マールが姿勢を低くして突進してくる。

「うわっ!」

 マールとぶつかったため、照準がズレてしまい、銃弾があらぬ方向へと飛んでいく。

「おらおら!」

 ベティが怯んだ隙をどんどんと攻めていく。右腕を失ったというのに、ベティに反撃の隙を与えないように殴りつける。

(チッ、押されてるわ。魔法を唱える暇もない)

 ベティはどんどんと押されていき、いつの間にか表通りに出ていた。

 歩行者たちはベティたちの戦闘をチラ見するが、特別な感情を抱かずそのまま二人を避けるように歩いていく。

「くっそ!」

 ベティは歩行者が盾になるように下がる。さすがに無関係の人間を殴ると大変なことになることが分かっていたマールは攻撃の手を止める。

「ブリザード」

 マールが戸惑っている隙にベティが手を真上に掲げる。辺りが冷気に包まれた直後、唐突に吹雪が吹き始める。

「おい!どこに行った?」

 急に視界が真っ白になり、べティを見失ってしまった。しかし、マールは目を凝らして周りを見回す。

(そこかっ!)

 朧げながら見える人型のシルエットに敵意を向ける。まだベティとは確定しておらず、攻撃をするのを躊躇っていると、シルエットが拳銃を取り出す。

(っ!確定した)

 マールがシルエット目掛けて、拳を振り上げる。

「うわっ!?」 

 ベティの驚きの声と共に、吹雪が止む。

「…よく分かったね」

「目を凝らしただけだよ」

 ベティはブリザードの中で自分を視認されたことに驚きながらも銃弾を放つ。

 マールを避けることができたが、近づいてきたベティに顔面を殴られる。

「はぁ、はぁ、とっとと死にやがれ!」

 マールは一瞬足に力を溜め、渾身の蹴りを放つ。マールの蹴りをモロに食らったベティは歩行者の頭上を飛び、車道に出る。

「そのまま轢かれろ!」

 立ち上がろうとするベティに、猛スピードで車が向かって来る。

(避けれない!)

 車はクラクションを鳴らしながら走り去っていく。

 車とベティの左半身が衝突する。衝突した勢いで空高く吹き飛んだベティはコンクリートの上に激突する。

「うぅ、ヒール」

 ベティは立ち上がり、マールに向き直る。

 歩行者たちは二人をチラ見しながら通り過ぎて行っている。

「ふっざけたマネして…本気で殺してやるわよ」

 かなりのダメージを負わされたベティは、相当な怒った様子で魔法を唱える。

(同時に二つの魔法を発動させると、反動がすごいけど…一撃で決めてやるわよ!)

「アイスランスッ!」

 ベティが指で銃を撃つポーズを見せる。すると、八本の氷の刃が全方向からマールを襲う。

「うぐっ!?」

 マールの体に強烈な痛みが走る。

「う、ちくしょう。これは…」

 マールの全身に氷の刃が突き刺さる。当たりどころが良かったのか悪かったのか。死ぬことは無かった。

「痛そうだね。すぐ楽になるよ」

 痛みでうずくまるマールが顔を上げると、目の前にゼロ距離で拳銃を構えているベティの姿があった。

「な、て、てめぇ…」

 マールが何かを言い終わる前に、ベティはマールの額に銃弾を放つ。

「終了。あーあ、体が痛い」

 ベティは左半身をさすりながら、クードゥがいるであろう隠れ家へと向かう。

(魔法を同時に使うと、魔力消費がハンパじゃないわ。後…何回使えるかな)

 口から少量の血をポタリと流れ出す。

 隠れ家にたどり着いたベティは、壁をよじ登って再度窓の中を覗く。

「ビリーが…いないわね」

 中は薄暗く目を凝らすと、争った形跡があることが分かる。

「家具が所々倒れてるわね。血もついてるわ」

 ベティは窓を飛び越えて、中へと入る。

「おーい、ビリー。どこにいるの?てか、生きてる?」

 誰もいない部屋に向かって叫ぶ。もちろんだが返事はこない。

(私が戦ってからそんなに時間は経ってないはず…)

 中を散策していると、開けっぱなしの扉が目に入る。扉には乾ききっていない血がついている。

「こっちかな」

 扉の先を行くと、すぐに階段があり、そこを慎重に下っていく。

(二階には…誰もいなさそう。ビリーが一階まで連れて行ったのかな)

 二階には誰もいないことを確認したベティはそのまま一階へと向かう。耳を澄ませてみると一階から微かに話し声がする。

 ベティは持っている拳銃の残弾数を確認しながら階段を下りる。

(ん。いるわね。ビリーのほかに…三人、クードゥ以外は知らない女性だけど…)

 開いた扉から顔を覗かせ、ビリーたちの状況を確認する。

 ビリーが縛られて、地面に捨てられている。少し離れたところでクードゥたちが会話をしている。

(ビリーが捕まってる。一応、助けに入ろうかしら)

 ベティは敵の注目をこちらに集めるために、拳銃を真上に向けて発砲する。

「助けに来たよ」

 ベティはビリーの目を見ながら静かに言う。

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