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聖女の成り下がり  作者: 森宮寺ゆう
第一章 『希代の革命者』
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第4話 追跡者

(けど、逃げ出す予定の私には関係ないよね)

 ベティは踵を返し、クードゥの進む方とは真逆の方向へと歩き出そうとする。

「あらあら。追うのが仕事だろ」

 ベティの背後から何者かがやってきて、手をベティの肩に乗せてきた。

「ビリーだったよね」

 投獄された時に向かいの牢にいた男、ビリーがサングラスの男を指さす。

「よう、ベティ。てめぇがさっきつぶやいたように、あいつはクードゥだ。オレらのような捨て駒が生き残るには成果をあげないといけねぇんだぞ。そして、今滅多にないようなチャンスが来てるんだぞ」

「なら、あなたがそのチャンスを掴めばいいじゃない。それに私はさっき上官を殺しちゃったのよ」

 ベティは肩にのっけるビリーの手をどけて、この場を去ろうとする。

「だとしてもだ。死人に口はねぇよ。知らんぷりして、手柄だけ貰えばいいだろ」

「だとしてもよ。そもそもあなたが私を引き留めて、なんのメリットになるの?戦力が増えたとしても報酬が半減したら意味ないでしょ」

 ベティの質問にビリーは少し困ったように考える。

「…戦力の増強はだいぶでかいだろ…それにオレはぶっちゃけ報酬や戦力なんか気にしちゃいねぇよ。ただただ、てめぇを気に入ったってだけだ。一目惚れ?かな。とにかく、てめぇを見た瞬間、こいつはヤベェってなんたんだよ。今後、絶対なんかをやらかしてくれる。根拠は無いけどな」

 笑いながら熱弁する。想像以上に期待されたベティは少々むず痒い気持ちになりながら、困ったような顔を見せる。

「なんでそんな変な期待を持たれてるのよ…まぁ、いいや。少し気が変わったわ。そのクードゥを殺してやろうよ」

 ベティはビリーの言葉の何かに動かされたようで、振り返って走り出す。

「はぁ、変に話をしてたせいで見失ったんじゃない?」

「いや、一応まだ見えてるぞ」

 ビリーが指さす方向を見てみると、人混みの中にクードゥらしき人物が遠くにいた。

「なら、追いかけるわよ」

 ベティは人混みの中を縫うように駆け、クードゥの背中を追いかける。

「というか、ベティ。てめぇは上官を殺したって言ったけどよ、誰のことなんだ?」

「確か…クウコ…リグレッツ?だっけ。を殺したわ」

 ベティの言葉にビリーは心底驚き、困った様子で頭をかく。

「クウコ?マジかよ。あいつが…」

「何に困ってるのよ。元友人?」

「んーや。別にそういった訳じゃないんだが…まぁ、なんとかなるだろ。よし、追うぞ」

 勝手に話を自己完結させるビリーに不満を持ちながら、ベティは目標であるクードゥの追跡に集中する。

「人気のない路地に向かっていったわね」

 ベティはクードゥの入っていった路地裏をそっと覗く。

「隠れ家はこのあたりだろうな」

 狭い路地裏をどんどん進んでいくクードゥは、開けた場所にある一つの石造りの建物の前で足を止める。

「到着したか」

 クードゥが扉に手をあてると、自動で扉が開く。

「あぁ、指紋タイプか。それに扉も堅そうだ。窓は…あるけど高いな」

 ビリーは侵入口を探すがパッと見で入れそうなのは、三階くらいの高さにある窓くらいだった。

「じゃあ、そこから入ればいいじゃない」

「どういうことだ?ベティの足は垂直駆動装置でもついてるのか?」

 ベティは窓のある場所のもとまでビリーの手を引っ張って歩く。

「私にはそんなものないよ。ただ、もっと別のものなら持ってるわ。アイスウォール」

「え、うぉ!?」

 ベティたちの足元から氷の壁がせりあがってくる。ビリーは急に地面が動き出したことに驚き、片足を滑らせる。

「っと、落ちないで」

 片足がアイスウォールの外に出ていっているビリーの手首を掴み、引っ張り上げる。

「な、なんだよ。これ」

 ベティは、驚きで口を開けるビリーを一瞥すると、窓の中を見始める。

「人気はないわね、アイスランス」

 ベティは窓に向かって魔法を放つ。

「エグいな。どうなってんだ?それ」

「魔法…って、私こっちに来てこの説明何度しなきゃいけないの。ほら、さっさと入って」

「いや、オレ初めてしたんだが…」

 困惑するビリーをよそに、ベティはフレームごと壊した窓を飛び越えようとする。

「おい!何してんだぁ?」

 ベティがビリーを中に押し込もうとしていると、背後から呼び止められる。

「…誰?」

 ベティは面倒そうに振り返り、話しかけてきた大柄の男に拳銃を向ける。

「俺はマール・スーズリヤだ。それと、そこは俺の家だぞ。勝手に窓を壊すな」

 マールの言葉にベティは首を傾げる。

「あなたの家?同居者は居るの?」

「だから俺の家だと言っただろ。それに俺は一人暮らしだ。はぁ、窓壊したことは水に流すからとっとと帰れ」

 マールは強い口調でそう言いながら、帰らせようとする。

「…クードゥがここに入った気がしたけど…いや、あいつは絶対ここに居る。さぁ、入るよ」

 ベティはマールの言葉を無視してビリーの背中を押して中に入れる。

「おい、待て!お前、入っていくな!」

 マールは焦った様子で拳銃をベティに向かって撃つ。ベティは弾丸を避けながらアイスウォールの上から降りる。

「ありゃ、好戦的ね。死にたいの?」

 ベティは戦闘態勢に入り、ジリジリとマールに近づく。

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